昼休み、悟が屋上に行くのが見えたから後で俺も行こうと思って、売店でお昼を買ってから屋上に向かった。

すると聞こえてきたのは悟と凜の声。

話の内容的に完全に声をかけるタイミングを失ってしまうと、今度は俺の話をし始めたと思えば…俺に告白って…なに?

凜が!?俺の事…!?

買ってきたパンさえも食べるのを忘れたまま突っ立ってると、昼休みが終わる鐘が鳴り二人が動き出た。

慌てて隠れる場所を探せど、そんな所なんてなくて、物陰に身を潜めてはみたものの普通にバレた…


「え、悠…真…?」

「あ…えと…っ、二人が屋上行くの見えたから…」

「聞いてた…俺らの話…」

「あ…うん。けど…っ、えっ…?」


猛ダッシュで逃げ出した凜を例え引き止めたところで、何をどうしたらいいのか分からなくて、俺はただただ呆然とそれを見送った。

そして放課後、どうにか頭の中を整理したくて二人を呼び止め話を聞こうとしたが、凜は俺と目を合わせる事なく再び猛スピードで教室から出て行き、悟は俺に一言、ごめん!と言い残し凜の後を追って行ってしまった。

教室に残された俺はどうしていいか分からず項垂れた後ふと、尚人の事を話してたのを思い出し二年の教室へ急いだ。


「尚人…っ!ちょっといいか!?」

「ん?珍しいじゃん、どうしたんすか?」

「今日部活は?」

「ないけど…」

「助かったぁ…」

「なんか大変な事?」

「うん…さっき凜と悟の話立ち聞きしちゃってさ…」

「保住先輩と悟くんの事…?あぁ、悟くんが保住先輩に告って振られたって?」

「うん、それそれっ!それと凜が…俺に…?告白…とか…」

「えっ?マジ?」

「うん…しかも聞いてたのバレちゃって…」

「あぁ…まじかぁ…」


大きな体を小さく丸め頭を抱える尚人の姿に、俺は恐らく聞いちゃいけない事を聞いてしまったんだろうと確信した。


「なぁ…俺どうしたらいい?凜の好きってさぁ…その…あの好きって事だよな?」

「うん…そうだろうな…」

「俺…凜のことそんな風に思った事ねぇよ…」

「まぁ…そうだろうな…」

「尚人ぉっ!俺どぉしたらいいのぉ!?」


煮え切らない尚人の返事にモヤモヤして、尚人の両肩を掴みながら揺すると、少し迷惑そうな顔しながら今度は俺の肩に手を置いた。


「どうって、別にまだ本人から告られた訳じゃないんでしょ?」

「まぁ、それは…っ、そうなんだけど…でもあれはもう…」


はぁ…っと深いため息をついた尚人と俺の間に、少しの沈黙が流れる。


「気持ち悪いって思った?」

「…っ、んな事ねぇけどっ…でも俺はさぁ!?男と付き合うとかそんな…わかんねぇもんっ…」

「そりゃそうだよね…だからだろうけど、保住先輩はずっと隠し通すつもりだって言ってたらしいよ…」

「え?」

「ずっと普通の友達でいたかったんだと思う…」


なんでだろう…胸がズキって痛んだ。

凜が俺の事を好きっていう思いがどんなものか
、俺にはちょっとまだ理解できないけど、その純粋な思いを不意に俺が聞いてしまって、それが絶対に知られたくない事だったとしたら…

俺、凜の事めっちゃ傷つけたんじゃね?
俺…どうしたらいいんだろう。


「尚人さ…悟の事、好きなの?」

「えっ?あぁ…まぁ、うん…」

「なぁ、男が好きって…どんな感じ?」

「別に?普通の恋愛と一緒だよ?」

「え?」

「好きなもんは好き…それがたまたま悟くんで、悟くんが男だったってだけ」

「…そっか」


案外サラッと認めるんだな…

けど正直、その感覚は俺には理解し難いものがあったし、ただの男友達だと思ってた奴らが実はそれぞれ想い合ってた、なんてそんなの急には受け止められない。

でも、相手は凜だから…
ちゃんと考えなきゃって思った。

ちゃんと考えて、俺なりに答えを出さなきゃ…って。