「何であなた達までいるの？！」
私は目をまん丸にして驚いた。まさか、メア家の第7王子まで揃うなんて…。そして、第3王子、ユウが私をスルーして話出す。
「なあなあ。サクふざけすぎじゃねえ？ていうか、俺が先に華恋に目つけたんだけど〜？」
ユウは16歳で、綺麗な茶髪の髪と垂れ目の横にあるほくろが特徴のとにかくチャラくてよくわかんないやつ。私がユウの事を好きになるのを待ってるとか言ってる本当に理解不能なやつ。
「サク兄さん、ユウ。うるさい。早く話、はじめて？」
今超冷たく言い放ったこの子は第2王子ツキ、17歳。まつ毛が長く、白い肌が中性的な印象をもたらす可愛い男の子。でも、誰に対しても冷たいから好んで近づく人はいない。
「まあ、ツキの言う通りね。早く始めてほしいわ。サクとユウの言い合いに付き合ってる暇はないし。」
面倒な空気になってきたから、とりあえずツキに同意することにする。
「ちょ！華恋姉さん、あんまりそういう事言わないほうがいいんじゃ…」
「大丈夫よ！」
羅華が私の心配をしているのは分かっていたが、きっと今サクが少し不機嫌になった。サクは今怒らせてはダメなのだ。サクとはこれでも長い付き合いなもんでそれくらい分かる。
「羅華。僕は君達を呼んだ覚えはないんだ。だから、羅華は少し黙ってくれるかな？」
微かに微笑むように口角が上がっている。しかし、サクの目は笑っていなくこの顔が1番恐ろしいと思ってしまった。
「サク兄！そんなに怒らないであげて！ほらほら時間ないんでしょ！」
止めに入ってくれたこの明るい男の子は第6王子、ユキ。ユキは13歳で、目がぱっちりしていて小顔のどこからどう見ても超美少年。正直性格的にメア家の中で、ユキが1番好き。
「…。そうだね。まあ始めるか。」
(やっとやる気になった。ほーんとサクも理解不能。)
呆れている私をサクがチラッと見てから落ちた声で話し始める。
「今回の任務項目は「調査」だよ。あっちを見張ってる人から、メア家とライト家の両家の血を受け継いだ男がいたって報告をもらった。」
あっちというのは表社会の事で、ライト家っていうのが誰もが知る超有名な探偵一家。けれど、今は「呪い」のせいで続々と死んでいき、1人しかいないという噂がある。まあ、あくまで噂だ。
「調査って事は特にターゲットはいないのね？」
「そうだよ。」
ターゲットとはまあ簡単に言ってしまえば殺る相手の事である。普段はこういう系は「潜入調査」って言われるけど、調査は誰も殺すなという意味も含まれてくる。
「今回行ってもらうのは、ツキ、ユウ、レン、華恋の4人。潜入先は…スカイ学園。」
「ちょ、ちょっと待ってよ！」
スカイ学園という言葉を聞いた瑠璃華が、慌てた様子で口をぱくぱくする。
「え、えと…何でそんなに危険な事をお姉ちゃんがしなきゃいけないの？！」
「僕が決めた。だから、従ってくれ。」
スカイ学園は探偵を育てる養成学校と言われている。
サクも分かっているはずだけれど、私を心配する瑠璃華に驚くほど冷たい視線を向ける。その視線に怖気付き、ビクッと瑠璃華の体が跳ねたのが分かる。
「瑠璃華。」
そんな瑠璃華に私は冷静に、落ち着いた声で名前を呼んだ。
「大丈夫よ。安心して。私がいなくなったら、瑠璃華と羅華が雨晴ファミリーを支えるのよ？そんな瑠璃華がびくびくしてちゃダメ！」
「で、でも…」
「瑠璃華〜？」
瑠璃華が私を心配してくれているのは誰が見ても分かる。けれどここで、引き下がるわけにはいかない。それに、メア家からの任務を断ることもできないし…。
私は下唇を一瞬ぐっと噛み、湧き上がってくる感情を抑える。
「ねっ！そんなに心配しないで？私はマフィア最強って言われてるのよ？ちょっとやそっとじゃ死にやしないし捕まったりしない！私は瑠璃華と羅華を信じてる。だから瑠璃華も私を信じて。」
瑠璃華は少し戸惑った表情をしてから、笑顔で頷いてくれた。それから羅華を見ると「大丈夫」とでも言っているように頷いていた。
(もう、大切な人をこれ以上失いたくない。鈴蘭(鈴蘭)やメランのような道は歩ませない！だから、ごめんね…。)
この時、私は知らなかった。この選択をした事にどれだけ自分を恨むことになるかを。