「へえ、ささらのグループのメンバーなんだ。初めまして! 桃です!」
「あ、どうも……ヒナ――あ、日向子です」
「リーシャ、改め、里沙です」
 私の高い声に気後れしたのか、二人のメンバーはびっくりしながら挨拶を返した。
「あー、すまん。桃ってグイグイ行くタイプだから」
 ささらがフォローしてくれる。無駄にテンション高くてごめんなさい。
 それにしても、二人はタイプが違うけど、とても可愛い子だ。さすがアイドル。
 どうやら、打ち合わせを不定期にやっているようで、今日はその日だったらしい。
 ラルムっていうのがグループ名で、ヒナが日向子さんで、リーシャが里沙さんで、そして、ささらがサラと。
「なんかごめんね。ささらの家に私たちが同居しちゃって」
 私がそう言うと、二人とも恐縮して首を振る。
 ということで、ささらに猫デザインの配置とか聞こうと思ったけど、明日にでもしよう。
「じゃあ、私、里央が作業してるけど、部屋に引っ込むね。あとはゆっくり会議を――」
「あ、待て。桃。せっかくだ、私たちの相談に乗ってくれないか?」
「え? 相談? 私が?」
 突然のことでびっくりした。どうやら日向子さんと里沙さんも驚いているので、本当に唐突なのだろう。
 そして、何故かささらに必死さを感じる。別に部屋を荒らされるわけでもないのに、そんな目力強くして訴えなくても……
「う、うん。私で良ければ……」
 あまりの眼光に、私は座り直した。
「実はな――」
 ささらが一通り話してくれた。
 売り上げと人気低迷かぁ。
「そもそも、売り上げってどこから出るの?」
「そうだな。ライブハウスでのライブ、特典会といったサイン会やチェキ会が微々たる収入源となる」
「テレビで見るアイドルとあんまり変わらないんだね」
「だけど、回数は多いかもしれない。大手アイドルほどの集客力はないから、機会を多くしたりしてる。あとは、より近い距離でのファンサだよな」
「へぇ……なるほど……と言っても、やっぱり私じゃ何も思い浮かばないよ?」
「まぁ、待て。あの猫の探究心は、ある意味通じるものがある」
 ささらは何を言っているのだろう? 猫とアイドルが通じる?
 まぁ、とりあえずささらの言う通りに、ラルムが売っているチェキや楽曲などを見ることになった。
「へぇ? クール系なんだ」
 テーブルに並んだ、チェキやプロマイドを見つめる。
 濃い化粧や、黒い系統の衣装は、とても格好良い。
「ああ。ファンには様付けて呼ばれるかな」
「……様……似合うね」
 ささらや日向子さんはとても似合うし、里沙さんもギャップが映えてとても新鮮に感じる。
「それに、歌も良いじゃん」
 YouTubeで配信してるという楽曲も雰囲気があり、テーマに沿っている。
「うんうん、雰囲気が出てるね……」
 でも、私は……あ、そうだ! とても良いことを思い付いた。
「ね、ささら。試しに……ちょっとやってみて良い? 昔から、ささらにはやってほしいことがあって」
「ん? やってほしいこと? ちょっと待て、嫌な予感がする……うん、やっぱり、いいや……悪い。さっきの話は気かなかったことに――」
 私は立ち上がると、里央を呼びに行く。
「あ、おい! 桃!」
 私は無視して里央を呼びに行き、ささらのアイドルメンバーが来ているのと、彼女の悩み、そして私がずっとやりたかったことを伝えた。
「分かるぅ! 私も、それ、やりたかったんだぉ!」
 ネット訛りで興奮した里央は立ち上がる。
「でしょ! 今がチャンス! やっちゃおう!」
 わいわいと私らが盛り上がっていると、部屋の外から「ヤバい、あの二人が結託するのは非常にヤバい」と声が聞こえるが、知ったことか。
「ね、里央の服で、そういうのある?」
「もち。ある。フリフリのスカートもある。十年前のだけど」
「マジ!? やば! 見たい!」
 よし、決まった!
 じゃあ、早速ささらを呼ぼう!
「ささら! こっちに来い! 早く!」
「嫌だ! お前らが興奮する時は、嫌なことしか――」
 怯えるささらの腕を掴み、里央の部屋に引きずり込んだ。
「日向子さんと里沙さんは、ちょっと待っててね!」
 そう伝えると、二人は何度も首を縦に振った。