最初に足袋をはいた。くすんだピンクのベロアのお気に入りだ。あたたかい下着を着てからピンクの袖のついた襦袢を着て、着物を羽織った。紗都は補正をせずに着物を着る。補正がないから着崩れしやすいのかもしれないが、手間だからやっていない。

 鏡を見ながら裾の位置を決めて着物を体に巻き付け、裾の位置がずれないように気を付けて腰ひもを結ぶ。
 おはしょりを整えてから胸の下に腰ひもを結び、背中心を合わせてから両脇にひっぱって皺を伸ばし、伊達締めを締める。

 いよいよ帯だ。
 紗都は緑の帯を手に気合を入れる。今回はみやこ結びにすると決めていた。左右が非対称の結び方なので、好きなようにバランスをとれるところがいい。

 手先の長さを決め、体のほうを回転させて腰に帯を巻く。ちょうちょ結びをしたらタレを広げ、どの位置までタレを作るか決める。それから腰ひもを包んだ帯揚げをかけてタレがリボンの上から垂れ下がるようにして仮結びをする。

 タレを整えてから帯を右回りにぐるっと回し、適度な位置に持っていく。
 帯上げの中の仮紐だけを先に結んで帯の中に隠したあと、帯揚げを見栄えよく結んで整える。
 帯板をぐいっと帯の間に差し込み、鏡を見て最終チェックをする。

 深緋(こきあけ)の地の着物に菊の古典柄がかわいい。帯はボタニカルな柄の緑色。帯締めは黄緑にして、帯留めは雪の結晶を象ったブローチで代用。帯揚げはクリーム色だ。半襟はクリスマスツリーの絵柄のついた端切れを買ってきて手作りしたものをつけていた。かんざしは最初に決めたとおりに氷の結晶だ。

 いつになくうまく着こなせた気がする。
 よし、と声をだして自分に合格をあげて黒いケープを羽織った。