修学旅行二日目は、午前中はグラスボートに乗って海の中を観察した後、宿泊しているホテルのプライベートビーチに戻り、午後はシュノーケリングかダイビングを選択して、数クラスごとに交代で体験した。
一度潜ったらしばらくは水中に居続けなければいけない状況が恐ろしかったので、消去法でシュノーケリングを選択する。
シュノーケリングで遠くから魚を見ているくらいがビビリにはちょうどいい。
ちなみに瞬はダイビングを選択していた。
アグレッシブだなと感心する。
待ち時間は、クラスごとにビーチフラッグ大会が開かれ、優勝者には特別にバナナボートに乗せてもらって海上散歩を楽しめる権利が付与されることになっていたが、バナナボートに乗りたくないがためにわざと負けた。
「ワタル、わざと負けたでしょ」
ビーチフラッグで負けた人は、シュノーケリングとダイビングの番が回ってくるまで自由時間になっていたので砂浜に座っていると、同じく負けた瞬が隣に座ってきて見透かしたように言ってきた。
「バナナボートには乗りたくない。
あれは結構揺れるから」
他のクラスの優勝者がバナナボートに乗っている姿を見てぞっとした。
勘弁してほしい。
ホテルのプライベートビーチでは、スピーカーからヒットソングが途切れなく流れていた。
このビーチの砂浜の砂は小さい頃に公園で遊んだ砂よりも細かく柔らかくて、思わず砂遊びをしたくなり、幼児の気分になって遊んでしまう。
周りを見渡すとそれは同級生みんな同じで、砂の中に男友達の顔以外を埋め、胸部分に大きな山を二つ作っているやつらもいた。
「あ……」
瞬が暗い顔になる。
「どした?」
「この曲、恋人が好きな曲でよく聞いてたから、恋人のこと思い出しちゃって」
「そうか」
砂で遊ぶ手を止めて、瞬の隣に黙って座り直す。
「じゃあ、この曲の思い出をちょっとだけ増やそうぜ。
オレと一緒に沖縄の海で聴いたっていう」
瞬の顔をのぞき込む。
「うん、ありがとう。
ワタルは優しいね」
「や、やめろよ!
そんなことないし!」
「なんで優しいねって言われて怒るの?」
瞬がふっと笑う。
反して、オレの頭にはカッと血が上る。
「恥ずかしいからに決まってんだろ!」
「あはは、ワタル可愛い」
「はあ!?
もう、マジ怒った!
瞬、来い!
相撲で勝負だ!」
「えー、勝負つける必要ないのに相撲するのヤダ」
「ヤダじゃない!」
瞬を身体ごと無理やりずるずると引っ張って行き、同じ班の友達に行司役を頼む。
この友達は柔道部に入っていて、小学生のころにちびっこ相撲で優勝したことがあると言っていたのを思い出したのだ。
「はっけよーい、のこった!」
行司役の掛け声を合図に、瞬に向かってがっぷり組みに行った。
はずだった。
それなのに、気づいたら投げられて土(ここは砂浜だから砂?)がついていた。
「はい、ただいまの勝負、上手投げで瞬の勝ちー!」
おかしい。
ヤダって言ってたやつに負けた。
なんで。
納得いかない。
昨日と同じように風呂と夕飯の時間が過ぎ、それぞれの班の部屋にこもる。
瞬からスマホにメッセージが届くけど、どうしても昼間のことが頭をよぎり、拗ねた内容を返信してしまう。
『ワタル、そっちの班は今何してる?』
『相撲で勝った力士に何も言うことはない』
『相撲で負けたこと、まだ根に持ってる?』
『持ってませんけどー』
『もう、しょうがないでしょ?
実力の差なんだから』
『何の実力だよ!
元相撲部かよ!
相撲ヤダって言ってたやつがなんで勝つんだよ!
納得いかねえ』
『思いっきり根に持ってるじゃん』
『いや、オレは納得がいってないだけだ。
ちゃんとした理由がないのが問題なんだ』
『はいはい、じゃあ理由ね。
俺、負けず嫌いなんだよね。
だから、売られた勝負は買って勝つ主義なの。
これでいい?』
『いいわけねーだろ!
やっぱ納得いかねー!!』
オレはスマホを布団の海に放り投げた。
一度潜ったらしばらくは水中に居続けなければいけない状況が恐ろしかったので、消去法でシュノーケリングを選択する。
シュノーケリングで遠くから魚を見ているくらいがビビリにはちょうどいい。
ちなみに瞬はダイビングを選択していた。
アグレッシブだなと感心する。
待ち時間は、クラスごとにビーチフラッグ大会が開かれ、優勝者には特別にバナナボートに乗せてもらって海上散歩を楽しめる権利が付与されることになっていたが、バナナボートに乗りたくないがためにわざと負けた。
「ワタル、わざと負けたでしょ」
ビーチフラッグで負けた人は、シュノーケリングとダイビングの番が回ってくるまで自由時間になっていたので砂浜に座っていると、同じく負けた瞬が隣に座ってきて見透かしたように言ってきた。
「バナナボートには乗りたくない。
あれは結構揺れるから」
他のクラスの優勝者がバナナボートに乗っている姿を見てぞっとした。
勘弁してほしい。
ホテルのプライベートビーチでは、スピーカーからヒットソングが途切れなく流れていた。
このビーチの砂浜の砂は小さい頃に公園で遊んだ砂よりも細かく柔らかくて、思わず砂遊びをしたくなり、幼児の気分になって遊んでしまう。
周りを見渡すとそれは同級生みんな同じで、砂の中に男友達の顔以外を埋め、胸部分に大きな山を二つ作っているやつらもいた。
「あ……」
瞬が暗い顔になる。
「どした?」
「この曲、恋人が好きな曲でよく聞いてたから、恋人のこと思い出しちゃって」
「そうか」
砂で遊ぶ手を止めて、瞬の隣に黙って座り直す。
「じゃあ、この曲の思い出をちょっとだけ増やそうぜ。
オレと一緒に沖縄の海で聴いたっていう」
瞬の顔をのぞき込む。
「うん、ありがとう。
ワタルは優しいね」
「や、やめろよ!
そんなことないし!」
「なんで優しいねって言われて怒るの?」
瞬がふっと笑う。
反して、オレの頭にはカッと血が上る。
「恥ずかしいからに決まってんだろ!」
「あはは、ワタル可愛い」
「はあ!?
もう、マジ怒った!
瞬、来い!
相撲で勝負だ!」
「えー、勝負つける必要ないのに相撲するのヤダ」
「ヤダじゃない!」
瞬を身体ごと無理やりずるずると引っ張って行き、同じ班の友達に行司役を頼む。
この友達は柔道部に入っていて、小学生のころにちびっこ相撲で優勝したことがあると言っていたのを思い出したのだ。
「はっけよーい、のこった!」
行司役の掛け声を合図に、瞬に向かってがっぷり組みに行った。
はずだった。
それなのに、気づいたら投げられて土(ここは砂浜だから砂?)がついていた。
「はい、ただいまの勝負、上手投げで瞬の勝ちー!」
おかしい。
ヤダって言ってたやつに負けた。
なんで。
納得いかない。
昨日と同じように風呂と夕飯の時間が過ぎ、それぞれの班の部屋にこもる。
瞬からスマホにメッセージが届くけど、どうしても昼間のことが頭をよぎり、拗ねた内容を返信してしまう。
『ワタル、そっちの班は今何してる?』
『相撲で勝った力士に何も言うことはない』
『相撲で負けたこと、まだ根に持ってる?』
『持ってませんけどー』
『もう、しょうがないでしょ?
実力の差なんだから』
『何の実力だよ!
元相撲部かよ!
相撲ヤダって言ってたやつがなんで勝つんだよ!
納得いかねえ』
『思いっきり根に持ってるじゃん』
『いや、オレは納得がいってないだけだ。
ちゃんとした理由がないのが問題なんだ』
『はいはい、じゃあ理由ね。
俺、負けず嫌いなんだよね。
だから、売られた勝負は買って勝つ主義なの。
これでいい?』
『いいわけねーだろ!
やっぱ納得いかねー!!』
オレはスマホを布団の海に放り投げた。