「そうなりますね。正解!」
「知ってたの!?」
「見てれば分かる。
 何年あんたの妹やってると思ってんだ」
 小馬鹿にしたような顔で見てくる。
「オレ自身が知らねえオレのことを、ユカリが知ってるっていう状況が理解できねえ」
「あのねえ、客観的な立場にいる他人の方が逆に分かるってこと、結構世の中には多いんだよ?
 自分が無意識に何をしてるかなんて、分かりようがないじゃん」
「ええ!? オレ、何かしてた!?」
「してたしてた、いーっぱいしてた」
「教えろよ!」
「いっぱいありすぎて全部覚えてないし!」
 そう言うと満足したのか、ユカリは部屋を出て行った。


 ユカリには言わなかったが、実はあのとき自分の中に見つけた瞬への想いは、他にもまだあった。

 それは、俺だけがハグしたり瞬に触れられる存在でいたい、他のやつには触らせたくない、瞬が他の誰かを想って笑う姿は絶対に見たくない、だ。

 恥ずかしすぎてユカリには知られたくなかったから、あえて言わなかったけど。

 自分の本心が内側からあれよあれよと湧いてきて、今までどこに隠れていたんだよ、と聞きたくなる。
 気づかないうちに、相当瞬に惚れていたみたいだ。

 好きという気持ちのグラデーションって、どこからが友情でどこからが恋愛感情なのか、今でも境目があんまりよく分かっていない。
 ユカリに気持ちを整理してもらえたことで、実は密かに助かっていた。

 瞬からもらった紙袋の中身を開けてみる。
 箱の中で、正方形のチョコレートが綺麗に整頓されて並んでいた。
 ひとつを取り出してかじる。
 パリッとしたミルクチョコレートが砕けると、とろけるような口どけの生チョコが舌の上にサーッと広がった。

 好きって気持ちは、甘いチョコレートみたいだ。
 もっとたくさん欲しくなる。
 自覚したら、自分の中から気持ちがあふれだして止まらない。