瞬のお父さんは、仕事内容に夜勤が含まれているらしく、休みの日は不定期だったが、12月31日と1月1日だけは連続して休みが取れたらしい。
年越しは瞬もうちに来て一緒にする予定だったが、父ちゃんも母ちゃんも「瞬くんのお父さんも呼んで!」と言うもんだから、どうだろうと言いつつ誘ってみたところ、瞬のお父さんもうちに来てくれることになった。
瞬のお父さんは眼鏡をかけた見るからに温和そうなおじさんで、「いつもいつも瞬が夕飯をごちそうになっていてすみません」と言いながら、二人でお酒やらカニやらウニやらアワビやらA5ランクの牛肉やらの高級食材をたくさん持ってうちに来てくれた。
父ちゃんと母ちゃんは瞬のお父さんと一緒にお酒を飲めて大喜びだった。
そして、六人で年越しのカウントダウンをした後、瞬のお父さんがオレとユカリにお年玉をくれた。
なんと二万円入っていた!
一回のお年玉では過去最高金額!
ちなみに親と瞬には金額を言っていない(後で聞いたらユカリも全く同じ行動を取っていた。兄妹おそるべし)。
他人と話して笑っているお父さんを見て、瞬がすごく幸せそうな顔をしていた。
瞬はうちに泊まることになっていたので、夜中3時ころに一足早く瞬のお父さんだけ帰宅する。
さすがにそのころには眠くなり、二人でベッドに潜り込んだ。
いつものようにハグをしながら、瞬が安心したように言う。
「今日、久しぶりに父さんがニコニコしながら他人と話をしている姿が見れてうれしかった」
「そうか。よかったな」
ふわふわした黒髪を撫で、その繊細な触り心地に酔いしれる。
「なんでか分かんないけど、今日はあんまり寂しくないや」
その言葉を聞いてある種の確信を持ちつつ、お父さんを見ていた瞬の表情を思い出しながら、自分の思ったことを素直に伝えてみる。
「お前の寂しさって、親に自分の気持ちを伝えられていないところから来ている気がするんだよな」
「……そう、なのかな」
「うん、だからさ、寂しいってことだけでも伝えてみたらいいと思うんだけど、難しいか?」
少しの間、瞬が押し黙る。
「……父さんに負担かけちゃったり、心配させるのは気が引けて」
「でもさ、オレたちまだ子どもだよ?
親に負担かけたり心配かけたりはしてもよくね?
オレの父ちゃんと母ちゃんって、小さいときから事あるごとにオレとユカリに言うんだよ。
『親の立場からは、勝手にひとりで抱え込んであんたたちだけで苦しむのはやめてほしい』って。
『嫌なこととか苦しいことがあったら一緒に解決できるように考えるから、絶対に教えてね』って。
もちろん、ひとりだけでやれって言わないよ。
オレもそばにいて、フォローするからさ。
それとも、瞬のお父さんって、子どもの言うことを聞いてくれないタイプの大人?」
瞬が首を横に振る。
「ううん、それはない。
父さんは俺の話を聞いてくれると思う。
でも、そうかもしれない。
いつの間にか、父子家庭の生活をしていく中で、いつも忙しくて疲れている父さんに何かを伝えようとすることを諦めてしまっていたかもしれない」
オレはさらに、明日は必ず瞬のお父さんが休みなんだから、明日言うべきだと強く勧めた。
瞬がうなずいたので、全力でフォローすることを決意する。
その日はそんな話をして二人とも気が高ぶっていたせいか、クリスマスのときのように後ろからではなく、前からハグをしたまま寝てしまっていたけど、もうどこからハグされようがどんな形でハグしたまま寝ようがまったく気にならなくなっている自分がいた。
瞬とゼロ距離でいられることが心地よくて。
瞬に触れていることで、特別な何かを自分だけに許されているような気がして。
身体中がじわじわむずむずしてきて、それは不快なものではなく、こそばゆさに近かった。
年越しは瞬もうちに来て一緒にする予定だったが、父ちゃんも母ちゃんも「瞬くんのお父さんも呼んで!」と言うもんだから、どうだろうと言いつつ誘ってみたところ、瞬のお父さんもうちに来てくれることになった。
瞬のお父さんは眼鏡をかけた見るからに温和そうなおじさんで、「いつもいつも瞬が夕飯をごちそうになっていてすみません」と言いながら、二人でお酒やらカニやらウニやらアワビやらA5ランクの牛肉やらの高級食材をたくさん持ってうちに来てくれた。
父ちゃんと母ちゃんは瞬のお父さんと一緒にお酒を飲めて大喜びだった。
そして、六人で年越しのカウントダウンをした後、瞬のお父さんがオレとユカリにお年玉をくれた。
なんと二万円入っていた!
一回のお年玉では過去最高金額!
ちなみに親と瞬には金額を言っていない(後で聞いたらユカリも全く同じ行動を取っていた。兄妹おそるべし)。
他人と話して笑っているお父さんを見て、瞬がすごく幸せそうな顔をしていた。
瞬はうちに泊まることになっていたので、夜中3時ころに一足早く瞬のお父さんだけ帰宅する。
さすがにそのころには眠くなり、二人でベッドに潜り込んだ。
いつものようにハグをしながら、瞬が安心したように言う。
「今日、久しぶりに父さんがニコニコしながら他人と話をしている姿が見れてうれしかった」
「そうか。よかったな」
ふわふわした黒髪を撫で、その繊細な触り心地に酔いしれる。
「なんでか分かんないけど、今日はあんまり寂しくないや」
その言葉を聞いてある種の確信を持ちつつ、お父さんを見ていた瞬の表情を思い出しながら、自分の思ったことを素直に伝えてみる。
「お前の寂しさって、親に自分の気持ちを伝えられていないところから来ている気がするんだよな」
「……そう、なのかな」
「うん、だからさ、寂しいってことだけでも伝えてみたらいいと思うんだけど、難しいか?」
少しの間、瞬が押し黙る。
「……父さんに負担かけちゃったり、心配させるのは気が引けて」
「でもさ、オレたちまだ子どもだよ?
親に負担かけたり心配かけたりはしてもよくね?
オレの父ちゃんと母ちゃんって、小さいときから事あるごとにオレとユカリに言うんだよ。
『親の立場からは、勝手にひとりで抱え込んであんたたちだけで苦しむのはやめてほしい』って。
『嫌なこととか苦しいことがあったら一緒に解決できるように考えるから、絶対に教えてね』って。
もちろん、ひとりだけでやれって言わないよ。
オレもそばにいて、フォローするからさ。
それとも、瞬のお父さんって、子どもの言うことを聞いてくれないタイプの大人?」
瞬が首を横に振る。
「ううん、それはない。
父さんは俺の話を聞いてくれると思う。
でも、そうかもしれない。
いつの間にか、父子家庭の生活をしていく中で、いつも忙しくて疲れている父さんに何かを伝えようとすることを諦めてしまっていたかもしれない」
オレはさらに、明日は必ず瞬のお父さんが休みなんだから、明日言うべきだと強く勧めた。
瞬がうなずいたので、全力でフォローすることを決意する。
その日はそんな話をして二人とも気が高ぶっていたせいか、クリスマスのときのように後ろからではなく、前からハグをしたまま寝てしまっていたけど、もうどこからハグされようがどんな形でハグしたまま寝ようがまったく気にならなくなっている自分がいた。
瞬とゼロ距離でいられることが心地よくて。
瞬に触れていることで、特別な何かを自分だけに許されているような気がして。
身体中がじわじわむずむずしてきて、それは不快なものではなく、こそばゆさに近かった。