他人にまるで死神みたいだと揶揄されたからといって、まさか本当に死神になるなんて愚行を犯したのは僕くらいだろう。
 もっとも、自分の意思で死神になったわけではなく、そもそもただの人間にそんな離れ業をやってのけることができるはずもなく、ならばどうして僕が死神になったのかというと、僕が死神に魅入られてしまったからである。僕の身体が死神の住処となってしまったのは、僕の心に隙ができてしまっていたからに他ならず、自分の心の脆さにはほとほと辟易する。
 死神になったからには、生きていくための栄養源として人間の命を頂く必要がある。必要なエネルギーが人間とはまるで違うのだから、今まで当たり前のように享受してきた人間だった頃の食事はもはや受け付けなくなってしまった。
 死神として生きていくにあたって、僕は生贄となってもらう人選において決定的なミスを犯してしまった。それがミスだといえる根拠は、捕食者である僕と、捕食対象に選ばれた君の双方が同じ後悔の念を抱かざるを得ない状況になったからだ。けれど、僕に限っては後悔と同時に、君をターゲットとして選ぶことができたことでこの上ない幸運を享受できたという幸福感も抱いている。

君は言った。人は、死んだら星になると。
もし君がこの夜空に浮かぶ星々のいずれかであるならば。
君を探すことは容易だろう。
一番綺麗な星を探せばいい。
僕は夜空に輝く星の一つを指さした。
「君だよね」
僕は君の姿を星に重ねながら、自分の身体が灰になっていくのを他人事のように眺めた。