全部、嘘だった。





 あたしはすべて知っていた。

 頭が冴えていた。



 これまでやってきた自分の行動を一つ一つ拾い集めれば、あたしは、最後に不安要素すら排除できる。


 あたし、藍のことを本当に愛してた。

 愛していたから、藍に近づく女は全員、消えてしまえばいいって思ってた。

 そう思うことに対して、何の抵抗もなかった。

 今だって、全身全霊でそう思っている。


 千歳色は、毒だ。

 上手に使えば薬になるかもしれないけれど、下手に使えば全身を蝕まれる。

 千歳色に口付けられて、全身にまわった毒はあたしを日に日に弱らせていったけれど、あたしは今、生きている。


 これからやるべきことを考える。一つ一つをイメージしながら、目の前の藍を抱きしめる。

 あなたは、あたしが守るよ。だからあなたは、無知なままでいて。