藍が無駄に注目を集めてしまうということに関しては複雑な気持ちになるけれど、体育祭みたいな学校行事にはめっぽう気合いが入るタイプではある。

 クラスTシャツのデザインはどうするか、とか、何の競技に出るか、だけじゃない。


 化粧も、髪型も、イベントごとに相応しいものを選ばなくてはいけなくて、そういうことをわざわざ面倒臭いと一蹴するような人はあたしのグループにはいないし、そういう人はむしろ逆に笑ってやりたくなる。


 そういう熱のこもった気合は、体育祭が近づくにつれてますます高まっていく。

 あたしたちのグループの4人は、赤いデザインのクラスTシャツに決まったから、じゃあお揃いの赤リボンを髪の毛に付けてみよう、だとか、お揃いのショートパンツを買ってみよう、だとか、目の下に入れるキラキラしたスパンコールの色はどうしようか、とか、そういう話にばかり華を咲かせる。


 SNSで可愛い体育祭のヘアアレンジを見つければ共有して、あれが良いとかこれが良いとか吟味しあう時間は楽しい。

 どんな写真を撮りたいか、とか、そんな話にばかり時間を費やすのはくだらないかもしれないけれど、まあ、言ってしまえばそんな環境に身を置いていたいのだ。

 今日も例によってあたしは、放課後、真昼と一緒にだらだらとSNSを見ては、あーでもない、こーでもない、と議論を続けている。



「やっぱり、髪の長さ考えたら、三つ編みにリボン編み込むやつが良さそうだよねえ」



 陽世って髪の毛ボブだし、私もロブだからポニテは無理だし、といって真昼が気だるげにスマホを弄っている。

 可愛いしそれで良いんじゃない? と言うと真昼が、だよねえ、と言葉を重ねてくる。