「……なんで、千歳くんじゃないって言えるの?」



 顔を顰めながらそう問いただすと、彼は、まあ落ち着いて、と笑いながらあたしを宥めた。



「実際に見せてあげようか。成田は、非通知からの着信を拒否したんだよね?」

「した」

「それって、スマホの設定? それとも、携帯会社の方?」



 数日前の記憶を思い起こす。


 スマホの設定アプリから、非通知からの着信を消音にする設定をした気がするので、スマホの設定からかも、と言うと、彼は続けて言葉を重ねていく。



「それさ、着信があっても音は鳴らないけど、着信されたっていう履歴は端末に残るんだよ。電話アプリ開いて、最新の着信がいつか、成田に確認とれる?」



 あたしは言われるがまま、藍に着信を入れた。


 着信に対して恐怖心があるのだろうか。藍があたしからの電話を出るまでに、5コールもかかって、もう出てくれないのかも、と心配したところで、突然コールが止み、藍の声が聞こえた。



『……紬乃?』

「藍、今平気?」

『まあ、大丈夫』



 よかった、と胸を撫で下ろしながら、千歳色に言われた通りのことを藍に尋ねる。



「すこし、確認したいことがあって。今、電話アプリ見れる?」

『……うん』

「最新の非通知からの着信って、いつ来てる?」



 藍が少し黙った。スピーカーの向こうから、画面を触る音が聞こえる。



『……7分前』



 その言葉を聞いて、千歳色のほうを見る。彼は、ほら、とでも言いたいような表情をして見せた。



『1時間前から、ちょうど、10分おきに来てる』



 藍から追加で提示された情報に眩暈がした。



「……わかった。しんどいときに見てくれてありがと。もう大丈夫。後でプリント届けにそっち行くね」

『うん。……紬乃、好きだよ。だから、心配してくれるのは嬉しいけど、あんまり危険なことはしないで』



 千歳色にこの通話を聞かれてるなんて思ってもいない藍は、あたしにそんな言葉を放った。

 千歳色はつまらなそうな顔をしていて、あたしはすこし気まずかった。


 あたしも好き。大丈夫。また後でね。


 そういって、あたしは通話を切った。