真昼と一緒に教室を出て、昇降口でスリッパからローファーに履き替えると、朝よりもキツくなったローファーが足の浮腫を知らせてくるものだから、最悪な気分になった。

 隣で靴を履き替える真昼に向かって、雑に言葉を投げかけた。



「真昼、バイトなの?」

「いーや? 今日は休み」

「あそ。まあそんなもんだよね」



 ……さっき日菜たちにバイトあるって言ったの、嘘だったんじゃん、なんて。

 わざわざそんな突っ込みを入れるまでもなく、真昼の言わんとすることはわかってしまう。


 今日は休み、とあっけらかんと言ってみせる真昼が考えていることは多分あたしとお揃いで、あたしたちは翳りのある笑みを浮かべ合った。

 4人グループとはいえども、ことあるごとに2人組を作らせられる高校生活に擦られ続けたあたしたちにも、派閥というものはある。


 あたしと真昼。陽世と日菜。

 あたしは、とりわけ派手で、恋愛についても価値観の合う真昼と一緒で、噂好きで元運動部の陽世は、感情豊かで同じように元運動部の日菜と一緒。


 仲のいい相手に対しては、本音でぶつかれるくらいに心を許し合ってるけれど、そうでないふたりに対しては、やや他人行儀が残る。


 別に、陽世と日菜が嫌いというわけじゃない。むしろ好きなほうの部類だから普段は一緒にいる。

 ゆるく繋がっているような薄っぺらさが丁度いいのだ。あたしたちには。



「さすがに、何時間もアレやってるのは勘弁」



 真昼がため息をつきながら雑に言い放った。

 良いよ、あとは陽世に任せとこ、と、同じような雑味を含めて言い放ったのはあたし。


 真昼との会話は、頭を使わなくていいから楽だった。

 片手間にできる会話を重ねる意味を問われたら困るけれど、結局、居心地の良さの一形態だろうと思う。



 外に降り立って、ブレザーのポケットに入っていたスマホを取り出して通知を確認したとき、藍からひとつ、メッセージが届いているのが見えた。



〈もう帰った? まだ待ってて良い?〉



 ……あれ、先に帰ってるんじゃなかったっけ。

 何かが入れ違っている気がして、あたしは藍とのトークルームを開いた。