あたしは、カフェオレをまたひとくち口に含ませて、それをゆっくり飲み込んでから、
「最近忙しいみたいだけど、うまくやってるよ」
と言った。
頭に思い浮かぶのは、昨日の藍の姿。色っぽく乱れる藍の姿と、帰り際のキスの感触を思い出して、ああ、藍に会いたいな、と思った。
3人はひとしきり黄色い声をあげた後、誰かがあたしの物言いに何か引っかかったところがあったのか、
「忙しいって?」
と質問を重ねてくる。
その台詞にあたしが反応する前に、横から真昼が入ってきて、あたしの代わりに答えた。
「藍くん、体育祭実行委員じゃん? しかも委員長」
その言葉で、その場にいる全員がなるほど、と顔を見合わせた。
体育祭実行委員、とか、文化祭実行委員、だとかいうものは、たいていはスクールカーストとかいう人間関係のトップにいるひとたちで独占される。
あたしは面倒なことが嫌いなので、そういうのには入らない。でも、自分の彼氏がそういう立場の、さらに全体の統括をするような役割にある、というのは誇らしさを感じる要素となっていたりして。
けれど、そのせいで最近は中々、一緒に帰ったりすることが難しくて、それが悩みの種になっていないこともない。
仕方のないことだろうけど、何だか心に穴が空いたような気分にもなる。
「てかさあ、それで思い出したんだけど」
あたしたちの視線は、突然そう切り出した陽世の方を向いた。
「C組の森田、藍くんのこと狙ってるっぽくない?」