やっと仕事が終わったのは午後九時。
 給料少ないのに、正社員と同じだけ働かせるなんてありえなくない!?
 だけど、残業代もらえないと生活苦しくなるし……。
 家が近いのだけがホンット救い!
 あぁ、いとしのわが家に帰るとホッと――。
「おかえり」
 ドアを開けた瞬間、安堵どころか強烈なプレッシャーが荒波のように押しよせてきた。
 そうだった! 伴さんがいるんだった!
 っていうか……なんだか家の様子がおかしい。
「え……?」
 部屋のコーディネートはベージュピンク&クリーム色が中心。
 そうやってあたしがコツコツと数年かけて、いろんなサイト見て作りあげてきた『外国のお姫さま』的インテリアが、モノトーンに侵食されてる?
「あぁ、今日あたし有休取ったから。あんたがいないあいだ、ホームセンターとかまわって、少し模様替えさせてもらったわ」
 なんですと!?
 ベランダに続く窓を見て驚愕。あたしのお気に入り、フリル付きのリネンのカーテンがグレーのシンプルなカーテンに取って代わられてる。
「なんで? どうして?」
 これってどういうイヤガラセ?
「だって希世子んちのカーテン、薄っぺらくて目隠し効果がイマイチだし。ひとり暮らしなんだから、もっと防犯には気を配りなさいよ。玄関のドアにはドアスコープカバーつけたほうがいいし、これも外に置くのよくないわ」
 観葉植物の鉢が室内に移動されてる。それに、アンティーク調のクリーム色のダイニングテーブルのとなりには、味もそっけもない黒い折りたたみデスクとイスが置かれてる。
「在宅勤務のとき、専用の机とイスがないと落ち着かないの」
 うちはコワーキングスペースか!
 せっかくわが家でリラックスできると思ったのに……。
 ううう、一気に疲れが押しよせてきた~っ。
 力なく床にへたりこんでいると。