ああ、ユウウツ。みやびからも念押しされて断れなくなっちゃった。
 久しぶりに会った、それもたいして親しくないクラスメイトと同居なんて。
 いっしょに住むなら陽樹(はるき)とって思ってたのに。
 大学生の頃から付き合ってるから、そろそろいっしょに暮らそうよって何度か誘ってみたものの。
「そんなに焦らなくてもいいだろ? もし希世子がオレのせいできゅうくつな思いしてもイヤだし。ほら、女の子って男にしばられたくないっていうか、自分の好きにしたいって子多いじゃん。希世子だって自由でいたほうがよくね? いっしょに暮らすのなんていつでもできるんだから」
 って、いっつもやんわり断られちゃうんだよね。
 陽樹って優しいから、あたしのことを思いやって言ってくれてるんだろうけど……。
「すみませーん、これ試着したいんですけど」
「かしこまりました~! 試着室ご案内します。どうぞ」
 いけない、いけない。沈んでるヒマなんてなかった。
 今は絶賛勤務中。駅前の百貨店の一角にある店『Repartir』。
20代女性向けのフェミニンな雰囲気のファッションブランド。
 ここがあたしの仕事場。
 かわいいだけじゃなく、少し落ち着いた感じのデザインが学生のころから気に入ってて、
バイトを経て大学卒業後には本格的にショップ店員として勤めることになった。
 髪型もネイルもアクセも自由。大好きなブランドの服を着て働けるなんてとっても幸せ!
 そんな気持ちで入社したはずなのに。
『輝きは失われない。わたしたちは永遠のガールズ』
 最近、店に貼ってある広告のコピーを見るたびに気が重くなる。
『Repartir』の服は好き。もちろんそれは変わらない。
 バイト時代からこのショップに勤めて早五年。だけどあたしはまだ契約社員扱い。
 のちに正社員への登用があるとは言われてるけど、いったいいつになることやら。
 もうあたしも25だし、いつまで『Repartir』の服が似合うかどうかちょっと不安でもある。ずっと大好きなブランドだったのに、そのうち
「いい年してあんな服着て……」
 って、指さされるようになったりして。
「永遠のガールズ」のままで、ほんとうにいられるものなの?