「イヤなことがあったらすぐ辞めるあたしと違って、希世子は中学生のころからずっとダンス続けてたじゃない? どんなことがあってもくじけずにがんばって取り組んでる希世子のこと、あのころ、ひそかに応援してたの」
「伴さん……」
 伴さんは、胸のつかえが取れたようにすっきりした顔つきになって、
「希世子にとっては災難だったかもしれないけど、あたしはしばらくの間いっしょに暮らすことができて楽しかったわ。じゃあ、元気でね」
 と、アパートから出て行こうとした。
「伴さん、待って!」
「どうしたの?」
「あたし……あたし、まだ伴さんにちゃんと恩返しできてない。ナプキンの件はともかく、文化祭のとき助けてもらったときのお礼してない!」
「もういいわよ、そんなの」
 首を横に振る伴さんに対し、あたしはキッと顔を上げた。
「遠慮しないで。今、あたしが伴さんにできること全力でやってみせるから!」

「ちょっと派手じゃない?」
『Repartir』の店内。試着室から出てきた伴さんは、少しとまどったような表情を浮かべてる。
「そんなことない! いつもよりとっても華やかになったよ。 さすが華サマ」
 伴さんに着てもらったのは黒のインナーとジャケットに、くすんだピンクのロングスカートの組み合わせ。
「いっしょに暮らしはじめたときから、ずーっと気になってたの。伴さん、明るい色ひとつも着ないんだもん。モノトーンだけだと確かに無難だけど、印象が重苦しくなっちゃうでしょ? こうやってちょっとだけ落ち着いた色合いのピンクと合わせると、ぐっと雰囲気が明るくなるから」
 不思議だよねー。ピンクとダークカラーって、いっけん合わなさそうなのに、組み合わせると、おたがいを引き立てる効果が出て来るんだもん。
 やっぱりファッションに携わるのって楽しいな。