そうだよ。仕事のことはショックだけど、晴れて元のひとり暮らしに戻ったし。
 いつまでも悪いことなんて続かない。それに、あたしには陽樹がいるし。
 おたがい年末のバタバタでなかなか会えなかったけど、イヴは久々にデートだから気を取り直さなくっちゃ!

 そして迎えた十二月二十四日。待ち合わせ場所のイタリアンレストランは多くのカップルでにぎわっている。お店の内装もシックでおしゃれな雰囲気。
「希世子!」
 久々に顔を合わせた陽樹は名前どおり、太陽みたいな笑顔を浮かべてる。
「陽樹! 会いたかったよー。LINEばっかりでここ最近全然顔見られなかったし」
「なんかいろいろあったんだって?」
「そーなの! もう聞いてもらいたいことばっかりあってさー」
 すると、陽樹は
「オレも、希世子に伝えたいことがあって」
 と、あらたまったように言った。
「なに?」
「実はオレ、来年異動が決まったんだ。本社のほうに」
「本社って、東京の?」
「そう。だから――」
「ねぇ! あたしもついて行っちゃダメかな?」
「えっ!?」
 陽樹は驚いたように目を見開いた。
「あたし、来年クビが決まって。不景気で有福百貨店なくなっちゃうんだって。だから東京のほうで仕事探そうかなって思って。そのほうが陽樹ともいっしょにいられるし」
 ちょうどいいタイミングだし、陽樹も賛成してくれると思った。
 だけど、
「希世子。オレたち、それぞれ別の道を歩まないか?」
 返ってきたのはそんな返事だった。
 突然ガツン! と殴られたようなショックが襲いかかる。
「どうして?」
 別の道を歩むって……それって、別れようってこと?
「だって、都会はこっちと全然違うだろ。町の雰囲気もひとの数も。遊びに行くならまだしも、いっしょに住むとなると希世子もつらくなるんじゃないかと思って。この町とちがって知り合いもいないし、治安もそんなによくないし。オレのせいで希世子を不幸にしたくない」