「うそ……」
 大切なお知らせといえば悲しい報告といつから決まってしまったんだろう。
『有福百貨店、来春倒産。地元に愛された七十七年の歴史に幕』
 確かにここ数年コロナ禍や物価高なんかでお客さんは以前よりも減ってたけど、まさか、百貨店そのものが倒産なんて。
 さらに悪いことは続いて。
「ほんとうに心苦しいんだけど、来春以降、近隣の店舗に移って引き続き勤務可能なのは正社員にかぎるって本社から連絡があって。力になれなくてごめんなさい」
 店長から伝えられたのは、いわゆる「戦力外通知」。
 なにそれ……。
 五年間も働いてきたのにそれだけ? 
 それで終わっちゃうの?
『輝きは失われない。わたしたちは永遠のガールズ』
 店内に貼られた広告。前から見るたびにモヤッとしていたけど、今はいっそうイライラが募ってくる。
 なにが輝きは失われない、よ。
 またたく間にお先真っ暗になっちゃったじゃない。
 百貨店を彩るクリスマスイルミネーションは、終わりなんてまるで感じさせずにこうこうときらめいている。
 クリスマスイヴはもうすぐなのに、誰もが幸せになる季節なのに、寒空の下、裸足で家から放り出されたような気分……。
 あたしが今までがんばってきたのってなんだったんだろう?
 
 とぼとぼと家に帰ると、伴さんはすっかりルームウェアでくつろいでいた。
 今日は一日在宅勤務だったらしい。
「おかえり、遅かったのね」
 部屋に入ったとたん、ぶわっと涙がこみあげてきた。
「どうしたの?」
「こんな仕打ちってない……!」
 あたしは、わあわあと涙ながらに今日あったことを打ち明けた。
「残念だとは思うけど、これも一種の転機よ」
 熱いコーヒーを飲みながら伴さんはつぶやいた。
「テンキ?」
「停滞していた環境から離れられるいい機会ってこと。マイナスにとらえるんじゃなくて、プラスに考えなくちゃ」
 プラスに?
「ネガティヴな思考に縛られてると、どんどんそっちの方向に引っ張られちゃうわ」