伴さんが食べかけていたうどんをガハッ! とはき出した。
「なにそのリアクション。分かった、あたしの勝手な妄想だと思ってるでしょ」
 伴さんはゴホゴホせきこみながら、
「そういうわけじゃないけど……そんなひと、本当にいたの?」
 あたしは強くうなずいて。
「結局名前もクラスも分からなかったんだけど、とにかくクールなイケメンだったの! スラッとしたスタイルで、切れ長の瞳に、大人びた感じの服装で。ひょっとしたら、先輩か他校から観に来てた子だったのかも。なつかしいなー。今の彼も、実はそのひとにちょっと雰囲気が似てるんだよね。あんまベタベタしてくるようなタイプじゃないんだけど、思いやりがあって。今度のクリスマスにいっしょに最近できたイタリアンレストラン行こうって話してるんだ」
 うっとりと語るあたしとは対照的に、伴さんはあきれ顔。
 まずい! そーいえば、伴さん、彼氏の浮気が原因で家出して来たんだっけ。
「ごめん、よけいな話して」
 伴さんはムスッとしてるのか、平然としてるのかよく分からない表情のまま、
「別にいいけど……それより、今はやってないの?」
「なにを?」
「だから、ダンス。がんばってたんでしょ?」
 うん、学生時代はとにかく部活に燃えてた。あのときホントに青春だったな。
 がんばって取り組んで、完全燃焼したら、今度は新しい夢が見えてきた。
「自分がステージで注目されるのもいいけど、誰かを輝かせるお手伝いもいいなって」
「それで販売員に?」
「そうなの。もともとあたしの好きだったアイドルが、今あたしの働いている『Repartir』のイメージキャラクターやってて。その子のコーデとかマネしてるうちに、だんだんファッションやスタイリングの仕事にも興味持つようになったの。忙しいし、キツいこともあるけど自分が考えたコーデをお客さんに喜んでもらえたときとか、めっちゃ幸せ! ってなるし~!」