ど・う・し・て!?
 真っ先に頭に浮かんだのはこの四文字。
 こういう心境、なんて言うんだっけ。
 晴天の霹靂? 十年に一度の最強台風直撃? いやいや、そんなの比にならない。
 どうして、どうして、どうして?
 吐く息も白くなった十二月上旬。クリスマスの足音も近づいてきて、目の回るような忙しさのなか、ようやく取れた久々のお休み。アラームをかけずに思う存分眠れる幸せ。
 そんなひとときを突如ぶちこわしたチャイム音。
 無視しても無視してもしつこくピンポンピンポンピンポンと。
「あーっ、もうっ!」
 クイズ番組か!
 いやいやベッドから起き上がり、玄関のドアスコープから外をのぞいた瞬間。
 あたしのイライラはオセロをひっくり返したみたいに一瞬で驚きに変わった。
 ドアの前には、両手にスーツケースを持った熊が。
 ううん、正確には熊みたいなオーラを放つ女性がいた。
 ズウンと圧倒してくるような高身長。キッとつり上がった太い眉、鋭い目、狩った獲物であつらえたかのようなファージャケット。軍隊のえらい人が履いているみたいないかついレザーブーツ。どっしりとボリュームのある長い髪。
 どうして、どうして、どうして?
 なぜ彼女がここに?
 今思えばやめておけばよかったのに、彼女の迫力におされてついドアを開けてしまった。
「ば……(ばん)さん!?」
 細くて頼りないドアチェーンごしに声をかけると、返ってきたのはドスの利いた声でひとこと。
「――当たり」
 うれしくない! 正解しても全然うれしくないんですけど!?
「久しぶり。さっそくだけど今日からあたし、いっしょにここに住むから」
 え……?
「今なんて?」
「言ったでしょ、ここに、住むの、いっしょに」
 はあ!?