今日は北斗の方が早く出たみたいで追い越されはしなかった。
 一昨日、別に行こうと言ってから、まだ三日目。こんなにも北斗が居ない日々がつらい。なんかもう何日も何日も経ってる気分。

 オレは、授業に身も入らず、ずっと何がいけなかったのかを、考えてしまう。

 学校で会ってもしゃべってくれない。というか、そもそもクラスが違うから会えない。隣のクラスなのに、ちょっと見かけるのも稀なくらい。まだ授業もいろいろ慣れてなくて、慌ただしい。こんなつもりは無かったのに。朝と帰りが一緒じゃなくても、挨拶なんか当然で、家でも連絡とって、一緒に勉強とかしたかった。

 手に持った、新入生の部活勧誘のチラシを、じっと見つめてから握りしめる。
 北斗が居ないと、これも無駄になっちゃうし……。

 どうしよう。――なんかオレの世界全部。北斗と居るために、回ってたのに。
 どうしよう、会いたい。耐えられずに、ドキドキしながらこっそり、隣のクラスをのぞきに行く。よそのクラスを覗くとか。正直、オレには、ものすごい、ハードルが高いことで。めちゃくちゃ恐る恐るのぞいたけど、北斗は居なかった。

 しょんぼり帰ろうとしていたら、女子達がクラスの廊下の端っこで話してるのが聞こえてきた。ついつい足をゆっくりにしてしまう。

「北斗くん、どこ行っちゃったのかなあ? 屋上かな?」
「なんか今週、ふらっとどっか行っちゃうよねぇ? 先週は廊下に居たからいっぱい話せてたのにー」
「えっどうしよう、まさか、彼女とかできちゃってたら!」
「今頃デートしてるってこと? あーでもそっかー、あり得るよねー、皆狙ってるもんね」
「そうだよー、入学式の挨拶、めちゃくちゃカッコよかったもんねーなんか、あれを見た先輩達も狙ってるらしいよー」
「えーやだもう! じゃあ、今頃、先輩にくわれちゃってるとかー!?」
「えーーーやだーー!」
 最後の方、ギャアギャア騒ぎ出した女子達に、オレは早足で廊下に出た。

 わぁぁぁ。なに、その会話ー! 女子、怖い……!!
 くわ……くわれって……どこまでのことをいうの……ていうか学校だし、そんなことないよね……?!

 屋上……??
 行ってみようかと思った時。チャイムが鳴ってしまった。あああ……。
 仕方なく教室に戻った。