――小中学校は十五分早く出ると、ほとんど誰も居なかったんだけど、電車登校だと、結構早めに登校する人達が多いみたい。

 登校一日目でクラスに友達が出来た北斗。二日目に電車でその子達に会った。座れるほどは空いてなくて、でも立つ場所はわりと空いてる電車なので、なんとなく北斗の周りに人が集まってきた。女の子も男の子も、自分から北斗に絡む子達は、すごくキラキラしてて派手でぽんぽん明るく話す「キラキラさん」たちが多い。

 オレはクラスも違うし、そんな顔も知らないキラキラさんたちに、入学して緊張してる時に、絡める訳がない。北斗の隣というか、もうほぼ後ろで、窓から二駅分の景色を眺めて過ごすことになった。時たま北斗がオレを気にして振り返ってくれるのだけど……すぐキラキラさんたちに話しかけられて、またそっちに返事をすることになる。


 登校三日目、水曜日。北斗とキラキラさんたちの横で、ぼー、と景色を見ていたオレの隣に、クラスメートがやってきてくれた。席が前後ろなので、話すようになった佐々木くん。

「優も、この電車なんだね」
 佐々木くんは眼鏡の似合う知的な感じのイケメンで、会ってすぐ呼び捨てにしてくるようなパッと見は陽キャくん。でも、話してると、中学の部活はパソコン部、インドア派だし目立つことも嫌い、趣味は読書・漫画と映画、とか言ってる人。観る映画を聞いたら、結構同じのを観ていて、気が合うねぇ、なんて話した。

「佐々木くんもこの電車なんだ」
敦也(あつや)でいいのに」

 そう笑われて、その内ね、と返した。
 オレは、話しやすいと認識した人とだけは普通に話せる。ほっとして、いろいろ話し始めた。やっぱり気が合う感じ。よかったぁ、高校でも、気が合う友達ができそうで。

 木曜と金曜は、北斗とキラキラさんたち、オレと佐々木くん、というグループで、完全に会話は別れた。ただ、なんとなく北斗とオレだけは近くに立ってるけど話さない、という変な感じ。電車を降りて学校まで歩く間も、オレの隣は佐々木くんだった。

 まあ北斗との間に誰かが入ってくることなんて、今に始まったことじゃない。
 今までも、帰り道に誰かが一緒の時は、オレは横には居るけどほとんど話さず。オレが直接話しかけられちゃうとなんとか答えるけど、でもオレは、北斗と仲良しのキラキラさんたちと談笑出来るタイプではない。頑張ってそれをすると、とても疲れちゃう。だから、仲間に入れてくれなくていいよ、聞いてるだけで楽しいから、と北斗には伝えてある。それは本気でそうだし。朝のふたりきりの時間があったから、平気だったのだけど。

 高校はそうはいかないのかなぁと感じた一週間だった。
 いつまでも子供じゃないんだよね。いつまでも今までみたいに一緒に居られるわけもない。それに、彼女が出来たら、そっちが優先になるよね。始まって一週間だけど、北斗をカッコいいって騒いでる女子を、すでに何人も知ってる。