「優」
「あ、北斗」
昼休みとか、ちょっとした空き時間に、たまに北斗がオレのクラスにやってくる。
なんかいつの間にか、オレのクラスメートとも仲良くなってて、挨拶しながら入ってくるのは、さすがすぎる。
北斗が来ると、女子もだけど、特に佐々木くんがなんだかとてもウキウキ見える気がする。北斗が萌えキャラだからなのかな? 佐々木くんも、普通にしてたら結構なイケメンなはずなのに、ちょっと面白い。
「どしたの?」
「今日部活、雨が降ったら早上がりだって。もう今から降りそうだからきっと早く終わるからさ、待ってて。一緒帰ろ」
「ん、分かった」
笑顔で頷いて、用事が終わったからそのまま帰るかなと思って北斗を見守っていたのだけど、北斗は帰らずに、オレの前の席に当たり前のように、座った。
「良い曲見つけた」
ほれ、と、耳にかけるイヤホンを渡される。スマホを机に置いて、「これ」とオレに見せる。
「歌詞も良いから、見て」
「うん。ふふ」
帰らずに、近くに座ってくれただけで、幸せ。
一緒にスマホを覗き込んでいると、すごく、北斗が近い。ドキドキしながら、ちょうど聞き終えたところで、チャイムが鳴った。
「早や。じゃあまた後でな」
とびきりの笑顔で言って、北斗が教室を出ていく。
なんだかいつもそうなのだけど、北斗が出ていくところまで、クラスの多くの人達が見守ってるような気がする。
「めっちゃ尊い……」
「あの笑顔やばい」
「可愛い」
なんだか女子達のそんな声が聞こえてくる。
……可愛いっていう言葉が最近入るんだよね。今まではカッコいい一択だったのに。
ちょっと不思議に思いながら、次の時間の教科書を出していると。
北斗が来るとなんとなく遠ざかって楽しそうにしてる佐々木くんが戻って来て、「何か不思議なことある?」と聞いてくる。
「なんか女子の声に、北斗が可愛いっていう声が入るから」
小声で佐々木くんにそう言うと。
「優を大好きって感じのあの笑顔は、どんなにイケメンでも、可愛いってなるでしょ」
こそこそ、と囁き返されて。
オレを大好きって……え、皆そう見て言ってるの??
うわわ、はずかし……。
かぁっと赤くなってしまう。
「あ、優~、どこで待ってる?」
また戻ってきて、ドアのところでそう言った北斗。ぱっと振り返ったオレを見ると、ちょっと眉を顰めた。かと思ったら、足早に戻ってきて、佐々木くんをチラ見する。
「?」
オレの目の前に来た北斗は、見上げたオレの頭を両手でわしっと持って、よしよし、と髪を撫でた後、頬に、ぴちぴちと優しく触れてくる。
「――……っ??」
ますます赤くなったオレを見て、何だか満足そうに笑うと。
乱れた髪をよしよし、と整えて、「どこで待ってる?」ともう一度、聞いた。
「え……あ。あの……見えるとこ、にいる。邪魔になんないとこ」
「どこで待っても邪魔にはなんねーから。ってことでじゃあ、見えるとこに居て」
「う、ん」
「じゃな」
そう言って、北斗は離れていった。
「赤面させるのは自分だけ、とか?」
クスクス笑う佐々木くん。「え?」と見上げると。こそこそっとまた囁かれる。
「オレが言ったのも、どっちにしても北斗くんのことだしね。優が赤くなるのなんて、それしかないのにね。可愛いよな、あの感じで、妬かれると」
「――」
「そういえば、なんか女子の間では、オレが当て馬くんになってるらしいよ」
「当て馬くん……?」
「んー。優は、ちょっと勉強した方がいいかもな。良い本、貸してやろうか、青春物とか」
「ええ、いいよう……よくわかんないし……」
「キスまでしかしない、甘々キュン本もあるから、いつでも言って」
答えに詰まった時、先生が入ってきたので、佐々木くんは笑いながら離れていった。
うぅ。何なんだもう……。
顔の熱が収まらないまま、午後の授業を受けることになってしまった。
とまあ。
なんだか、日々、嬉しかったりドキドキしたり焦ったりしながら過ごしてる。
北斗とオレは。学校から帰った後。どっちかの部屋で、今まで通り過ごしながら。
……ちょっと今まで通りじゃない距離でも、過ごしながら。
甘さ控えめのお菓子を、二人きりで食べる日もある。
十年目にして 咲いた恋を。
毎日毎日毎日、とても、たいせつに、育てている。
Fin
ここまで読んで頂きありがとうございました。
後書きです。
読んでもいいよとおもってくださる方、お読みください✨
◇ ◇ ◇ ◇
青春BL小説コンテストに応募しています。
青春BL、募集が出た時から、その淡いイラストに、書きたいヾ(*´∀`*)ノと思ってて。
なんとか書き上げられて嬉しいです。
少しでも、きゅんてして頂けてたら、もっと嬉しいです。
アカウントが無くてもいいねと一言感想は押せるそうなので、
もしも北斗&優を気に入って頂けたら…(*'ω'*)🩷
とくに一言感想、文字を書かずに感想を送れる画期的なシステムな気が。
ノベマさん初投稿で色々迷いましたが、この機能がすごくいいなーと好き。(´∀`*)ウフフ💖
そう思っていただけたんだ、と楽しいので、最後に押して頂けると嬉しいです。
アカウントおもちでしたら、
いいね、ブクマ、レビュー、感想、ひとこと感想(なんだかすごく応援ツールの種類がたくさん…(*'▽'))
いろいろと、次へのモチベになります🩵
ここまでお付き合いいただき、
ありがとうございました✨
別の話をのせる予定です。そちらもお読みいただけたら嬉しいです🩷
※この後書きはコンテスト締め切り前に消す予定です(忘れなければ💦)
星井 悠里