自分に都合が良すぎる夢のような気がしてきた。頭が働かない。なんかすごくぼうっとする。
「ずっと一緒にって、約束しただろ」
「うん。そう、だね……ずっと一緒に、学校行こうねって」
そんな可愛い約束を、小学一年の時に。
すると、少し離されて、じっと見下ろされる。
「それも言ったけど、ずっと一緒に居ようって、オレ、言った」
「――ん?」
じっと見つめ返すと。
「オレが、ずっと一緒に居ようって言ったら、どういう意味って優に聞かれたから。学校一緒に行こうって言ったんだよ」
「何それ……」
「ずっと一緒に居ようっていうのが、本命の言葉」
「そんなの、覚えてるの?」
「覚えてるし、母さんもずっと言ってる。出会ったすぐに、プロポーズみたいなことしてたって」
「――――」
全然。覚えてなかった。
「オレあの頃から――お前が可愛くてしょうがないんだよ」
なんだか、すごく照れたみたいな顔で、北斗が言う。胸の奥が、なんだか、きゅううう、と締めつけられる。
「なのにお前。離れても仕方ないとか。離れて平気なのかよって……オレ、すっげー落ち込んだし」
「ち、ちがう。あの……北斗が大人気で、北斗と話したい人が居るのは仕方ないし、一緒に居て話せないのは、なんか、ちょっと寂しいし、だからオレは、別のところで、北斗と居られたらいいなって言いたくて……」
むう、と口をとがらせてる、そんな北斗の表情も、珍しくて、なんか可愛く見えて、ドキドキする。
「つか、確認なんだけど」
「……?」
「お前の好きは――なんの好き?」
「……」
「親友として好きなだけ? それとも――」
オレは、北斗の腕に手をかけて、ぎゅ、と掴んだ。
「――……ずっと、ずっと、恋、してた、よ」
言った途端。嬉しそうに笑った北斗。
とびきりの笑顔に――あぁ、ほんとに、北斗はオレのこと、好きで居てくれてるんだって、思えた瞬間だった。
ちゅっ、と、頬にキスされた。
ぷしゅう、と、ゆでだこみたいになって、ふらふらして、支えられた瞬間。
「つか、お前、気になってたんだけど――熱すぎねえ?」
額に手を置く北斗は、ものすごく顔をしかめた。
「熱あるだろ!」
「熱? 朝は微熱だったけど……」
言った瞬間、ふらふら、とめまい。
支えられて、ああもう、と抱き上げられてしまった。
これは、お、おひめさまだっこというやつでは……! ひええー、恥ずかしい……!
と思うのだけれど。
「じっとしてろ。保健室行くぞ」
めちゃくちゃ心配そうな顔と、声で。
きゅん、として。腕の中でじっとしてしまう。
まだ昼休み。
廊下には、たくさんの生徒達。きゃーきゃー言われてるのが分かる。
もうオレは、その腕の中にすっぽりと収まって、顔を見られないように、北斗の胸の方に顔を向けていた。