進化、だ。
「オッサン、好きなだけ暴れさせろ!」
「……わかった」
アシルがニッと笑い、命を出す。
「イデア、首を狙え! エナは皆の援護をしつつ足止めを!」
アシルの言葉を受け二体がドラゴンへと向かう。速い!
「ライモン、ブライとアルジムに加護を!」
「は、はいっ」
ライモンが目を閉じ、暗唱を始めた。
「神の名のもとに、ブライ・チェスとアルジム・テヴィに加護を授けたまえ」
「ディナミ」
重ねるようにシュリが呟く。
「うおおおおお! なんじゃこりゃぁぁ」
「力がっ、湧いてきたぁぁ!」
振り下ろされるメイスと長剣がドラゴンに容赦なく傷をつける。
グァァァァッ
しかしドラゴンとて大人しくやられているばかりではないのだ。すぐに体を大きく動かし、二人と二体を蹴散らそうと暴れ始める。
「ユーフィ、リリーナ、ドラゴンの動きを止めたい。足元を凍らせてくれないか」
「わかった」
「やってみます!」
二人が力を合わせ、杖を掲げた。
「フリーズ!」
「フリーズ!」
「アフクセィシ」
三人の声が重なる。ドラゴンの足元がみるみる凍りはじめ、その動きが封じられる。が、それは一瞬のこと。すぐに氷は溶かされてしまった。
「チッ、ダメか」
舌打ちをするシュリを前に、アシルが宝玉を取り出す。
「どれだけ持つかはわからんが……。出《い》でよレッドエント、サラン!」
呼び出したのは森の王者との異名を持つレッドエント。これもまた、一生に一度出会えるかどうかの大物である。それに……、
「ナイスだな、アシル! こいつなら熱耐性アリだ!」
「サラン、ドラゴンの足を押さえろ!」
「エクセリクシィ」
巨大な樹のお化けのようなその体から、幾本もの蔓が伸びドラゴンの足に絡みつく。ドラゴンは暴れて熱を出すも、レッドエントが燃えることはない。
「ドラゴンの熱に耐えている……?」
アシルがひとりごちる。いかに森の王者と評されようとも、相手はレッドドラゴンだ。正直、対抗できるとは思っていなかった。
(これが吟遊詩人の力だってのか?)
にわかには信じがたかった。
「次が来るぞっ。ユーフィ、リリーナ、シールドを!」
「はい!」
「オッケー!」
二人が杖を掲げ叫ぶと同時にシュリも呟く。ドラゴンが当てずっぽうに火球を吐く。半ば自棄を起こしているようだ。
「うわっ」
アルジムが爆風で飛んだ。
「アルジム!」
ブライがアルジムに気を取られ、一瞬ドラゴンから視線を外す、と、
ヒュンッ
ドラゴンの尾がブライを捕らえる。
当たる! と誰もが思ったその瞬間、ブライの体が宙に浮く。ゴールドゴーゴンがブライを咥え、飛んだのだ。そのままアルジムの元へ降ろす。ブライはすぐにアルジムの状態を確認し、シュリに向かって
「アルジムは離脱!」
と告げる。シュリは小さく頷くと、
「一気に決めるぞ」
とトビーを見た。
「えっと、俺……? は、はいっ!」
ただ見ているだけだった自分の名を呼ばれ、一気に緊張が走る。そんなトビーを見て、シュリは小さく『大丈夫だ』と背中を叩いた。
覚悟を決める。
「いいか、トビー。あのドラゴンは自らの意思で動いてはいない」
「え?」
「は?」
「なんだとっ?」
その場にいる全員が声を上げる。
「断言する。ほら、あいつの腕に小さな輪っかが嵌ってるの、見えるか?」
シュリに言われ、全員が目を凝らす。確かに、言われてみれば何かがあるように見える。
「ドラゴンを操ってるあれを、壊すんだ」
「壊すって……」
ドラゴンは大きい。人の背の五倍近くあるのだ。普通に手を伸ばしたとて、腕までは届かない。
「お前の身体能力はここにいるメンバー随一だし、おまけに身軽だ。俺がスキルアップするから、ドラゴンの動きをよく見て、隙を突いて腕輪を壊せ」
「……はい」
ゴクリ、と唾を飲み込む。
「それと、アシル!」
「な、なんだ」
「腕輪が壊れたらあいつをテイムしろ」
「はぁぁ?」
相手はドラゴンだ。そこら辺の魔獣とはわけが違う。
「オッサンなら問題ない。だろ?」
パチリと片目を瞑る。
「……簡単に言いやがって」
アシルが苦々しい顔で笑った。
「ユーフィとリリーナは火球に備えてシールドを! ライモンはブライとアルジムを救出だ! いいな?」
「くそっ、相変わらず上から目線で命令ばっかだな。ムカつくったらないぜ」
ブライが遠くでぼやく。
しかし、いいも悪いもない。今はやるしかないのだから。
「トビー、行け!」
「はい!」
シュリに言われ、トビーが駆け出した。
「オッサン、好きなだけ暴れさせろ!」
「……わかった」
アシルがニッと笑い、命を出す。
「イデア、首を狙え! エナは皆の援護をしつつ足止めを!」
アシルの言葉を受け二体がドラゴンへと向かう。速い!
「ライモン、ブライとアルジムに加護を!」
「は、はいっ」
ライモンが目を閉じ、暗唱を始めた。
「神の名のもとに、ブライ・チェスとアルジム・テヴィに加護を授けたまえ」
「ディナミ」
重ねるようにシュリが呟く。
「うおおおおお! なんじゃこりゃぁぁ」
「力がっ、湧いてきたぁぁ!」
振り下ろされるメイスと長剣がドラゴンに容赦なく傷をつける。
グァァァァッ
しかしドラゴンとて大人しくやられているばかりではないのだ。すぐに体を大きく動かし、二人と二体を蹴散らそうと暴れ始める。
「ユーフィ、リリーナ、ドラゴンの動きを止めたい。足元を凍らせてくれないか」
「わかった」
「やってみます!」
二人が力を合わせ、杖を掲げた。
「フリーズ!」
「フリーズ!」
「アフクセィシ」
三人の声が重なる。ドラゴンの足元がみるみる凍りはじめ、その動きが封じられる。が、それは一瞬のこと。すぐに氷は溶かされてしまった。
「チッ、ダメか」
舌打ちをするシュリを前に、アシルが宝玉を取り出す。
「どれだけ持つかはわからんが……。出《い》でよレッドエント、サラン!」
呼び出したのは森の王者との異名を持つレッドエント。これもまた、一生に一度出会えるかどうかの大物である。それに……、
「ナイスだな、アシル! こいつなら熱耐性アリだ!」
「サラン、ドラゴンの足を押さえろ!」
「エクセリクシィ」
巨大な樹のお化けのようなその体から、幾本もの蔓が伸びドラゴンの足に絡みつく。ドラゴンは暴れて熱を出すも、レッドエントが燃えることはない。
「ドラゴンの熱に耐えている……?」
アシルがひとりごちる。いかに森の王者と評されようとも、相手はレッドドラゴンだ。正直、対抗できるとは思っていなかった。
(これが吟遊詩人の力だってのか?)
にわかには信じがたかった。
「次が来るぞっ。ユーフィ、リリーナ、シールドを!」
「はい!」
「オッケー!」
二人が杖を掲げ叫ぶと同時にシュリも呟く。ドラゴンが当てずっぽうに火球を吐く。半ば自棄を起こしているようだ。
「うわっ」
アルジムが爆風で飛んだ。
「アルジム!」
ブライがアルジムに気を取られ、一瞬ドラゴンから視線を外す、と、
ヒュンッ
ドラゴンの尾がブライを捕らえる。
当たる! と誰もが思ったその瞬間、ブライの体が宙に浮く。ゴールドゴーゴンがブライを咥え、飛んだのだ。そのままアルジムの元へ降ろす。ブライはすぐにアルジムの状態を確認し、シュリに向かって
「アルジムは離脱!」
と告げる。シュリは小さく頷くと、
「一気に決めるぞ」
とトビーを見た。
「えっと、俺……? は、はいっ!」
ただ見ているだけだった自分の名を呼ばれ、一気に緊張が走る。そんなトビーを見て、シュリは小さく『大丈夫だ』と背中を叩いた。
覚悟を決める。
「いいか、トビー。あのドラゴンは自らの意思で動いてはいない」
「え?」
「は?」
「なんだとっ?」
その場にいる全員が声を上げる。
「断言する。ほら、あいつの腕に小さな輪っかが嵌ってるの、見えるか?」
シュリに言われ、全員が目を凝らす。確かに、言われてみれば何かがあるように見える。
「ドラゴンを操ってるあれを、壊すんだ」
「壊すって……」
ドラゴンは大きい。人の背の五倍近くあるのだ。普通に手を伸ばしたとて、腕までは届かない。
「お前の身体能力はここにいるメンバー随一だし、おまけに身軽だ。俺がスキルアップするから、ドラゴンの動きをよく見て、隙を突いて腕輪を壊せ」
「……はい」
ゴクリ、と唾を飲み込む。
「それと、アシル!」
「な、なんだ」
「腕輪が壊れたらあいつをテイムしろ」
「はぁぁ?」
相手はドラゴンだ。そこら辺の魔獣とはわけが違う。
「オッサンなら問題ない。だろ?」
パチリと片目を瞑る。
「……簡単に言いやがって」
アシルが苦々しい顔で笑った。
「ユーフィとリリーナは火球に備えてシールドを! ライモンはブライとアルジムを救出だ! いいな?」
「くそっ、相変わらず上から目線で命令ばっかだな。ムカつくったらないぜ」
ブライが遠くでぼやく。
しかし、いいも悪いもない。今はやるしかないのだから。
「トビー、行け!」
「はい!」
シュリに言われ、トビーが駆け出した。