それから私も作業を再開させ、耕し終えた土にいくつかの種類の種をまいた。

小松菜、チンゲンサイ、ソラマメ……それらの種を中腰でかがんでまき、ついに膝と手と腰に限界を感じ始めた頃……。



「おわったー!」



全ての工程を終え、私と彗は声をあげながら倒れ込むように縁側に横になった。
見上げると、空にはすでに夕陽が真っ赤に染まっている。

動き続けたことで、全身汗だくだ。
髪も背中も汗で慣れ、靴も制服も土だらけ。クワを握り続けた手はむくんだように腫れている。



「はぁ……これ、明日絶対筋肉痛だよ」

「私明日学校行けないかも……」



ふたりともすでに体力は限界で、しばらく無言で冬の風にあたり続けた。



「けど気持ちいいでしょ、汗かくの」

「うん……私、普段運動しないから新鮮」

「体動かして汗かくのは大事だよ。余計なことも、憂鬱なことも吹き飛んでいくし」



その言葉に横になったまま隣を見ると、同じく横になったままの彗が小さな笑みとともにこちらを見ていた。

もしかして……今朝の私の様子から、気にしてくれていたのかな。
私の鬱々とした気持ちを紛らわせるためにここに連れてきてくれたのだと思うと、その通りになった自分がちょっと悔しい。

だけど、そういう彗にだからこそ本音を話せてしまうんだ。



「……どうして彗は、私を選んでくれたの?」

「えっ、なにいきなり」

「だって彗のまわりには、かわいい子も素敵な人もたくさんいるでしょ。その中でどうして、なにもない私なのかなって」



今朝のことから胸に浮かんだままだったものを彗へ投げかける。
突然の問いかけに彗は少し困った顔をしてから笑った。



「1年の頃から、もともと気になってたよ」

「そうなの?」

「ひな、入学式で新入生代表の挨拶したでしょ。そのときになんかかっこいいなって思って、それから」



確かに挨拶はしたけど……そんなに前から自分の存在に気づいてくれていたなんて。予想だにしなかった。