「改めましてーー」
「自己紹介は省略してください!」
「ですが......」
「大丈夫です!新聞で見たことあって、知っているので」
嘘である。でも私は彼、ザカリー・セオドアのこと知っている。なぜなら、2度目の人生であったことがあるからだ。
別に関わりが深かった訳ではない。が、この国には少ない金髪、それに加えて整った顔立ち、それもあってかなり印象に残っていた。
だから自己紹介など必要ない。その時間があるなら、早く魔法学を教えてほしい。というのが私の思いだ。
正直魔術師といわれたときは、老魔術師かと思ったがまさかの美青年、若き時のくらいのザカリー・セオドアだったことに驚きを隠せない。
それにしても、推定15歳くらいだろうか。私が会ったことあるのは5年後くらいだが、ほとんど変化は見られない。
まあ、そんなことどうでもいいか!
「それでは、モーガン様....いえ、ミカエル様」
「様なんて呼びにくいし、他人行儀ですので、お気軽にミカエルとでも呼んでください」
「わかった、ミカエル。それでは勉強を始めよう」
そうして、私に手を差し出してきた。
とりあえず、私は2度目の人生と同じくザカリー・セオドアのことは勝手に先生と呼ぶことにしよう。
「本格的に始める前に、ある程度の能力値を知っておいた方が良いだろう」
なるほど。まあ、才能があったといえどまだ幼い為、数値に期待はできないだろう。でも、きっと練習を重ねていく内に才能開花と言わんばかりに数値も大きく跳ね上がる。
そう考えると俄然やる気が出てきた。
先ほど差し出された手に、自分の手を重ねる。すると、小声で何か唱え始めた。鑑定魔法だ。
「っ、!?」
「どうかしましたか?」
まさか数値最悪!?そんな考えをよぎったがそれはあり得ない。
私には才能がある。うんうん。そうだ。そう自分で自分をを納得させる。
「すまない、弾かれてしまった。一般の鑑定魔法は相手が拒むと鑑定できないんだ」
「なるほど!」
今、私拒んだかな。と考えつつもまた手を重ねる。
「っ......!?」
「私拒んでないです!!」
またもや弾かれてしまったのか、先生は顔をしかめた。だから、先に拒んでないと否定した。
そして、それも否定された。
「いいや、今度は鑑定できたんだが、数値が異常だ」
「ええ!!そんなに悪いんですか!?」
先ほどあり得ないと自分を納得させたばかりだったのに!そんな...
それにしても、練習あるのみかー。
「違う。その反対だ」
反対?頭に浮かぶのは、はてなマークばかり。
そんな私を気遣ってか、先生が口を開いた。
「ミカエルの数値は高すぎる。下手したら私より高いかもしれないな」
「だから先ほども弾かれたのか...」と先生は何か真剣な表情をして、ブツブツと呟いている。
それにしても、容姿が良いからなのか、何をしてても絵になりそうだ。
って、そんなことを考えている場合ではない!!
「どういうことですか!?」
もちろん、これを聞かずにはいられない。
「言葉の通りだ。その年にしては異常なまでに高い」
「なる...ほど?」
なんとなくわかった。私は天才、ということだろう!
例え違くても、そういうことにしておこう!!
「きっとこのままいけば、将来は余裕で魔法学園に入学できる。勿論首席でな」
はい、首席合格したことあります。
なんて口が裂けても言えるわけがなく____
「有難うございます!先生のおかげで自信が、ツキマシタ.....」
後半はカタコトになり過ぎたと自分でも自覚できた。
その反面、先生は豆鉄砲を食らった鳩のような表情になった。
疑問ならともかく、今の会話に驚くところなんてあっただろうか。
「先生、か。なんだか気恥ずかしいな」
そう言って少し頬を染め、目を細めて笑った。
今、絶対先生の背後に薔薇の花見えた。