【な・・またエアリバース・・!? 汐見央選手に続き、夏樹選手もエアーを決めました・・! ただ高さなどの完成度については先程の央選手に軍配か・・?】
華のある大技の連続に会場中から歓声が巻き起こる中、私はただ二人のいる海を夢中で見つめていた。
すごい。すごいすごいすごい。凄すぎるって二人とも・・
賭けをしてるだとかなんだとか言っていたけど、きっと今の二人には、私の事なんか綺麗さっぱり忘れられているだろう。結局彼らの間には、私なんかが割り込めないほど強い絆で結ばれていて。
【スコアが出るまでに時間がかかっていますが、高得点が期待されます。トライアル合格ラインの7点以上の高スコアもみられるかもしれません。
そして二人はまたも海上でハイタッチを交わし合う姿が浜からも確認できました。情報によると二人は兄弟なんですね】
その二人の姿を────。
芽留ちゃんはぴょんぴょん飛び上がって喜び。
渚さんはホッとしたように母のような優しい笑顔で見守り。
お店で動画配信を見ていた亮司さんは涙を溢した。
そして会場でそれを見ていた草加部吾一氏は、秘書の三井さんにこんな声を漏らしていたという。
「まるでかつてのケリー・スレーターとロブ・マチャドだね」
「ケリー・・誰ですか?」
「世界最高峰のトップサーファーだよ。今から20年以上も前の事だけど・・パイプマスターズのタイトル争いをしていた二人は、当時世界の人気を二分するほどのスーパースター同士でライバル同士だった。しかしロブの決めた見事なチューブライディングを見てケリーは手を挙げて喜び、二人は競技中にも関わらずハイタッチを交わし合った。二人の友情が垣間見られた、サーフィン界では今でも語り継がれるほどの名シーンだよ」
草加部さんは嬉しそうに笑った後、三井さんにこう指示をした。
「契約書は二人分用意しておいて。また改めて、お父さんにご挨拶に伺わないとね」
【ここでスコアが出ました。汐見夏樹選手の一本目は4.66。そして見事なエアリアルを決めた汐見央選手の一本目は、7.25のハイスコア。夏樹選手の二本目は6.87。惜しくも7点は越えませんでしたが、夏樹選手はベスト2ウェイブでの合計スコアが11.54となりましたので、共にスコアでのトライアル合格基準を満たしたことになります】
そのアナウンスが流れると、会場がまたワッと湧いた。周りからは拍手がチラホラと巻き起こる。完全に会場の空気を掴んでいた汐見兄弟は、間違いなく今日の主役となっていた。
そしてヒート終了のブザー音が鳴り────感動の一幕もこれで終わりかと思っていた。だけどその後私の元には、更に大きな幸福が舞い降りてくるのだ。
「春日陽葵さん」
私の恋する彼は、海から上がるとまっすぐに、サーフボードを抱えたまま私の方へと歩いてきた。
央君の姿が近づくにつれ、私の鼓動はどんどん音を増していく。最終的に彼は、私の目の前で歩みを止め、そう私の名前を呼んだ。
久しぶりに彼の口から紡がれた自分の名が、どこか甘美な響きを持って私の胸を震わせる。こんなに近くで彼の声を聞くのも、彼の目を見るのも・・別れを告げられたあの日以来のことだ。
「陽葵のことが好きです。もう一度俺と、付き合って下さい」
その言葉を聞いた途端、涙が溢れて・・
私は本能の赴くまま、彼の胸に飛び込んだ。
「わっ、ひ、陽葵っ・・服濡れちゃうよ!?」
「いいの」
そんなのはどうでもいいの────。
濡れたってなんだって、貴方に抱きつきたい。夢じゃないかと思うくらい、嬉しいから・・
すると彼は、空いていた左手で、私の身体をぎゅっと抱きしめた。
「ごめん。もう絶対間違わないから」
央君────・・
「うん・・」
抱きしめ合う私達の周りでは、冷やかすような拍手の音が聞こえてきて、きっと注目を浴びているのだろう事を悟ったのだけれど。
そんなものは雑音だ。
この波の音のように────敢えて意識しなければ、心地良く耳にそよぐだけ。
華のある大技の連続に会場中から歓声が巻き起こる中、私はただ二人のいる海を夢中で見つめていた。
すごい。すごいすごいすごい。凄すぎるって二人とも・・
賭けをしてるだとかなんだとか言っていたけど、きっと今の二人には、私の事なんか綺麗さっぱり忘れられているだろう。結局彼らの間には、私なんかが割り込めないほど強い絆で結ばれていて。
【スコアが出るまでに時間がかかっていますが、高得点が期待されます。トライアル合格ラインの7点以上の高スコアもみられるかもしれません。
そして二人はまたも海上でハイタッチを交わし合う姿が浜からも確認できました。情報によると二人は兄弟なんですね】
その二人の姿を────。
芽留ちゃんはぴょんぴょん飛び上がって喜び。
渚さんはホッとしたように母のような優しい笑顔で見守り。
お店で動画配信を見ていた亮司さんは涙を溢した。
そして会場でそれを見ていた草加部吾一氏は、秘書の三井さんにこんな声を漏らしていたという。
「まるでかつてのケリー・スレーターとロブ・マチャドだね」
「ケリー・・誰ですか?」
「世界最高峰のトップサーファーだよ。今から20年以上も前の事だけど・・パイプマスターズのタイトル争いをしていた二人は、当時世界の人気を二分するほどのスーパースター同士でライバル同士だった。しかしロブの決めた見事なチューブライディングを見てケリーは手を挙げて喜び、二人は競技中にも関わらずハイタッチを交わし合った。二人の友情が垣間見られた、サーフィン界では今でも語り継がれるほどの名シーンだよ」
草加部さんは嬉しそうに笑った後、三井さんにこう指示をした。
「契約書は二人分用意しておいて。また改めて、お父さんにご挨拶に伺わないとね」
【ここでスコアが出ました。汐見夏樹選手の一本目は4.66。そして見事なエアリアルを決めた汐見央選手の一本目は、7.25のハイスコア。夏樹選手の二本目は6.87。惜しくも7点は越えませんでしたが、夏樹選手はベスト2ウェイブでの合計スコアが11.54となりましたので、共にスコアでのトライアル合格基準を満たしたことになります】
そのアナウンスが流れると、会場がまたワッと湧いた。周りからは拍手がチラホラと巻き起こる。完全に会場の空気を掴んでいた汐見兄弟は、間違いなく今日の主役となっていた。
そしてヒート終了のブザー音が鳴り────感動の一幕もこれで終わりかと思っていた。だけどその後私の元には、更に大きな幸福が舞い降りてくるのだ。
「春日陽葵さん」
私の恋する彼は、海から上がるとまっすぐに、サーフボードを抱えたまま私の方へと歩いてきた。
央君の姿が近づくにつれ、私の鼓動はどんどん音を増していく。最終的に彼は、私の目の前で歩みを止め、そう私の名前を呼んだ。
久しぶりに彼の口から紡がれた自分の名が、どこか甘美な響きを持って私の胸を震わせる。こんなに近くで彼の声を聞くのも、彼の目を見るのも・・別れを告げられたあの日以来のことだ。
「陽葵のことが好きです。もう一度俺と、付き合って下さい」
その言葉を聞いた途端、涙が溢れて・・
私は本能の赴くまま、彼の胸に飛び込んだ。
「わっ、ひ、陽葵っ・・服濡れちゃうよ!?」
「いいの」
そんなのはどうでもいいの────。
濡れたってなんだって、貴方に抱きつきたい。夢じゃないかと思うくらい、嬉しいから・・
すると彼は、空いていた左手で、私の身体をぎゅっと抱きしめた。
「ごめん。もう絶対間違わないから」
央君────・・
「うん・・」
抱きしめ合う私達の周りでは、冷やかすような拍手の音が聞こえてきて、きっと注目を浴びているのだろう事を悟ったのだけれど。
そんなものは雑音だ。
この波の音のように────敢えて意識しなければ、心地良く耳にそよぐだけ。