央君と夏樹君の二人は第2ラウンドも勝利し、互いに第3ラウンドに駒を進めた。最初は50名以上いた参加者も10名程まで絞られている。そして第3ラウンドからは1対1での対戦へ切り替わるのだが・・
『第3ラウンド・第2ヒート:汐見央/汐見夏樹』
本部前に張り出されたヒート表を前に、私は愕然と立ち尽くしてしまった。
最終ラウンドを前にして1対1での対戦────・・
そんな・・。これではどちらかが必ず脱落する事に・・
「まぁ、しょうがないよね。組み合わせに家族構成なんか考慮されないし」
振り返るとそこには夏樹君の姿があって・・
「そ、それはそう・・ですけど・・」
「俺は負けるつもりないよ。さすがにあいつも本気でやってくると思うんだけどね。根回ししといたし」
「根回し、ですか?」
「そう。今俺達、ひまりサンのこと賭けてんの。勝った方がひまりサン貰うって」
・・・・・・・・・・・・は???
「ん? 今・・なんと??」
「そう言ったらさすがにわざと負けるなんて事しないかなって」
唖然としてあんぐりと口を開けた私に向けて、彼はやっぱり飄々とした表情を崩さなかった。
「ごめんね。あいつ凄い怒ってたし、結局まだひまりサンのこと好きなんだとは思うんだけどさ。母親が急に居なくなったのがちょっとトラウマみたいになってて、嘘つかれたりするのに敏感になってるだけなんだ。悪いんだけど戻ってきたら許してやって」
夏樹君・・
今まで険悪だったのは、もしかしてこういう事態になったときでも央君に本気を出させる為だった・・? 夏樹君はやっぱり、いつだって央君の事を第一に考えてる・・
「許すなんてとんでもない。そもそも悪いことをしたのは私なんですから」
許して貰うのは私の方。もしももう一度受け入れて貰えるならば、それは私にとって願ってもない幸運。私は今でも変わらず、央君の事が────・・
「でもそれでもあいつが煮え切らないようなら・・本当に俺が貰う」
────・・?
「え・・?」
驚いて私は彼の目を見た。
すると彼は相変わらず飄々とした美貌に、美しい微笑を浮かべた。
「そのときは本気で好きになってもいい?」
そして彼は、唖然とする私の手を取った。
そっと手の甲へ形の良い唇で口づけると、どこか妖しげな魅力のある笑みを残して、彼は私の手を解放した。
まるで王子様のような手の甲へのキス────。
あまりの事に私は言葉を失ったまま、去っていく彼の後ろ姿を呆然と見つめることしか出来なくて。やがて心臓がバクバクと早鐘を打っていることに気がついた。しばらくの後に私がやっと絞り出した言葉は、情けない呻めき声だった。
「えぇぇええぇぇ・・?」
ずるいよ、夏樹君・・
普段全然そんな感じじゃないのに、いきなりそんなの・・
女の子がギャップに弱いって分かっててやってるんですか? 自分の顔面破壊力がチート級って考慮済みなんですか?
本気でそんな感じで来られたら『央君の弟だから絶対無い』とは言い切れないかもしれないと・・ちょっと思ってしまった・・。
『第3ラウンド・第2ヒート:汐見央/汐見夏樹』
本部前に張り出されたヒート表を前に、私は愕然と立ち尽くしてしまった。
最終ラウンドを前にして1対1での対戦────・・
そんな・・。これではどちらかが必ず脱落する事に・・
「まぁ、しょうがないよね。組み合わせに家族構成なんか考慮されないし」
振り返るとそこには夏樹君の姿があって・・
「そ、それはそう・・ですけど・・」
「俺は負けるつもりないよ。さすがにあいつも本気でやってくると思うんだけどね。根回ししといたし」
「根回し、ですか?」
「そう。今俺達、ひまりサンのこと賭けてんの。勝った方がひまりサン貰うって」
・・・・・・・・・・・・は???
「ん? 今・・なんと??」
「そう言ったらさすがにわざと負けるなんて事しないかなって」
唖然としてあんぐりと口を開けた私に向けて、彼はやっぱり飄々とした表情を崩さなかった。
「ごめんね。あいつ凄い怒ってたし、結局まだひまりサンのこと好きなんだとは思うんだけどさ。母親が急に居なくなったのがちょっとトラウマみたいになってて、嘘つかれたりするのに敏感になってるだけなんだ。悪いんだけど戻ってきたら許してやって」
夏樹君・・
今まで険悪だったのは、もしかしてこういう事態になったときでも央君に本気を出させる為だった・・? 夏樹君はやっぱり、いつだって央君の事を第一に考えてる・・
「許すなんてとんでもない。そもそも悪いことをしたのは私なんですから」
許して貰うのは私の方。もしももう一度受け入れて貰えるならば、それは私にとって願ってもない幸運。私は今でも変わらず、央君の事が────・・
「でもそれでもあいつが煮え切らないようなら・・本当に俺が貰う」
────・・?
「え・・?」
驚いて私は彼の目を見た。
すると彼は相変わらず飄々とした美貌に、美しい微笑を浮かべた。
「そのときは本気で好きになってもいい?」
そして彼は、唖然とする私の手を取った。
そっと手の甲へ形の良い唇で口づけると、どこか妖しげな魅力のある笑みを残して、彼は私の手を解放した。
まるで王子様のような手の甲へのキス────。
あまりの事に私は言葉を失ったまま、去っていく彼の後ろ姿を呆然と見つめることしか出来なくて。やがて心臓がバクバクと早鐘を打っていることに気がついた。しばらくの後に私がやっと絞り出した言葉は、情けない呻めき声だった。
「えぇぇええぇぇ・・?」
ずるいよ、夏樹君・・
普段全然そんな感じじゃないのに、いきなりそんなの・・
女の子がギャップに弱いって分かっててやってるんですか? 自分の顔面破壊力がチート級って考慮済みなんですか?
本気でそんな感じで来られたら『央君の弟だから絶対無い』とは言い切れないかもしれないと・・ちょっと思ってしまった・・。