最初はそうだ、指先が綺麗だって、そう思ったことがぜんぶのはじまりで。

あとはもう、ずるずる、眠気が襲う昼イチの数学の授業みたいに。微睡のなか、抵抗も虚しく、どっぷりと落ちていった。こういうの、不可抗力っていうんだ、おれは知ってる。

何にも知らないおまえは、当たり前みたいにおれに触れて笑うけれど、そういうの全部、ほんとうはずっと苦しかったよ。だっておれはもう、あたりまえみたいにお前に触れることができなかったから。鳴り止まない心臓の音を、どうか聞こえませんようにと、願うことしかできなかったから。


これを恋と呼んでいいのなら、本当は、もうずっと前から、おまえのことがすきだったよ。ただそれだけだった。


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