凪は若干、いや、だいぶ引いているけれど。



「俺日向!好きに呼んで!」



そう言いながら握手を求める日向は、誰にでも優しくて人タラシのお手本みたいなやつ。



少しチャラいのが玉に瑕だが、空気はよく読める奴だし、あまり交友関係を広げたがらない凪ともきっとうまくやっていけると思う。



「日向、ね。よろしく」



差し出された握手には応じずさらりと流して、用意されていた窓際の席に着いた凪を見て、変わらないな、と思わず笑みがこぼれた。



「転校生くんのいけずー!」



口を尖らせた日向の叫び声は、まだまだ凪の話題で持ちきりのガヤガヤとした教室の中に溶けて行った。