何やら教室が騒がしい。




いつものように扉を開くと、いつも以上にガヤガヤとうるさいこのクラス。



「なになに？なんかあったの？」



前の席に座るクラスメイトの日向の肩をたたく。



「あ！遥斗じゃん！おっはよー」



いつもと変わらない調子で緩く挨拶をした日向は、まるでひそひそ話をするときのように俺の耳元に唇を寄せた。



「……ライバルが現れたよ」



「ライバル……？」



おどろおどろしい雰囲気を漂わせながら耳打ちした日向は、俺に向き直るとへらっと笑った。



ライバル？なんの？



意味が分からず首をかしげると、そのタイミングで教室のドアが控えめに開く。



ガヤガヤとしていた教室内が一瞬シンと静まり返ると、わっと黄色い声が上がった。



「……イケメンすぎ……」



「やばあい。本物の王子様じゃん！」



「かっこいい～！」



無造作に整えられた黒髪。少し目にかかった前髪から覗く切れ長の瞳。高い背に、きっちりと着こなされた制服。



「……凪？」



零れ落ちるように漏れたその声に彼は足を止めた。



「え、遥斗？」



顔をあげた彼は俺の顔をじっと見つめると驚いたように目を丸くした。



「やっぱり！凪だ！」