「なあ、憂太…」

焼きそばを食べ終わって話しかける。

「なに?」

「お前、めっちゃ女の子たちから意識されてんじゃん」

「どこの?」

「どこのって、花火大会にきてる子たちだよ」

「ふーん」

どうでも良さそうな返事が返ってくる。

「今日はお前が彼氏役で俺が彼女役なんだよな?」

「え、うん、そうだけど」

「じゃあさ、彼氏が他の女にチラチラ色目使われてるところ見るのって嫌なもんじゃないの」

「え?なんで?やきもち妬いちゃった?」

「は?違うし。一般的に、彼女ならってことだよ」

「やきもち妬いてるのか」

「だから、違うって!」

「湊が嫌っていうなら髪型とかも戻すけど、嫌じゃないなら別に良くない?デートの練習なんだし?」

「…うぅ」

正論だなと思うと言葉が詰まってしまう。

「それにさ、ちょっとでもかっこよくして、湊の隣を歩く人物として釣り合うように頑張ったのに」

「釣り合う?」

「だって、湊ってさ、大学の中だと交友関係も広いし目立つじゃん」

「そ、そうかな」

「そう。だから、花火大会なんか誰に見られて、誰と会うかわかんないからさ。湊が変なやつ連れて歩いてるって思われるの嫌じゃん」

憂太は手に持つ焼きそばが入っていたプラスチックの容れ物を眺めながら話している。

まさかそんな理由があったとは思わなかった。

「別に友達だって言えば良くない?」

デートの練習なんてことを言わなければ男2人で花火大会を楽しんでるように見えるだろう。

「友達だったとしても!普段の湊のイメージを損なわせたくないんだよ」

憂太の口調がさっきよりも少し強くなった。