ぎゅっ…。

誰かが後ろから上げている腕の手首を掴んだ。


「湊!」

振り向こうとした瞬間、名前を呼ばれて勢いよく抱き寄せられた。


聞き慣れた声の方へ顔を向けると、浴衣を着たすらっと背の高い男が立っている。

「誰!!?」

「僕だよ」

必死に過去を振り返ってみても、知り合いにこんな高身長のイケメンはいない。

「え、誰!誰!人違いじゃないですか」

間違いだと言ってるのに握った手を離してくれない。

「僕だって!憂太だって!」

自分の手を握り、抱き寄せている状態のイケメンをよく見るとたしかに憂太の面影がある。

「……んえぇ?憂太あ??俺の知ってる憂太はもっとモサモサなやつなんだけど」

「せっかくだから気合い入れてみたんだけど…どう…かな?」

元々、顔は整っている方だと思っていたが、ここまでかっこいいなんて思いもしなかった。

「いや、あの…タクシー乗り場辺りで女の子の視線集めてるイケメンいるなーと思ったけどさ。あれは絶対憂太じゃないって思って完全にスルーしてた」

「なんで」

「いやいや、これは誰も気づかないでしょ!どうしたらそんなにかっこよく化けるわけ!」

「化けてない!今日はコンタクトにして、眉毛も整えて、髪の毛をちゃんとセットしただけじゃん」

「はああああああ」

憂太のかっこよさに思わず長いため息が出る。

「しかも何だよ、そのいきなりギュッてしてきたの!」

「だって後ろから何回も読んだのに湊気づかなかったんだもん」

「だもんじゃねーわ、イケメンに抱き寄せられて心臓飛び出るかと思ったわ」

「確かにあの瞬間、湊の反応乙女だったね」

「うっさい!!もう、早く行くぞ」

「はーい」

花火大会の会場に向かって歩くが、すでに速くなった心臓の鼓動がなかなか収まらない。