憂太は買ってきた備品の補充をテキパキとこなしながら話を続けてくる。

「それなら花火デートの練習させてよ」

「え?花火デート?」

「うん、花火大会」

「あぁ、花火大会な……任せろ」

花火大会なんて小さい頃家族で行った記憶しかない。

夜とはいえ人が多くて暑くて、人混みの中で息をするのが精一杯で、花火が上がる頃には疲れ切っていたことだけは覚えている。

それに、ここ数年は特に実家のマンションのベランダから見える米粒サイズの花火と、テレビで中継される映像で満足している。

もちろん、彼氏としてのエスコート術なんて全く教えられる気がしない。

彼氏彼女以前に花火大会に良い思い出がなくて行くのが億劫になる。

「(憂太が彼氏役なら、俺は彼女役として行くんだよな…彼女…浴衣とか着て行くべきなのか…?)」

「憂太、浴衣とか着る?着るなら俺も着るけど…」

「着る!」

「即答じゃん」

即答してくると思わなくて、笑ってしまう。

「え、だって湊着ようと思ってるんでしょ?」

「憂太が着るなら着てあげても良いかなって」

「じゃあ着る」

「ふふ、返事食い気味かよ」

さっきまでキスがどうとか話していたのに、気がつけばすっかり忘れて花火大会の計画を立てている。

さっきまで億劫だと感じていたのに、憂太と一緒に花火大会の計画を立てていると楽しくて、「恋人役として行く」なんてことは忘れていた。