「じゃ、行きますか。憂太待たせてごめんな」

「いいよ。湊こそ何も食べてないけど大丈夫?」

「んー買い出しついでになんか食べよっかな」

公園の日陰を出て、強い日差しの中ショッピングモールを目指してダラダラ歩く。


「ていうかさ、さっきの子、湊にすごいくっついてなかった?元々すごいパーソナルスペース狭い人なの?」

「んー確かにいつもよりは近くにいたな。まあ、本人が言うようにやけになってたのはあるだろうけど」

「恋愛相談をして、その相談した彼氏の男友達に乗り換えるってよく聞く話だよね」

「んーまあ、そんなやつもいるだろうな」

「それで彼氏と男友達との人間関係まで壊れるってこともよくあるじゃん」

「うわ、なになに、こわ。憂太くんはそんなひどい経験でもしたことあるわけですか〜?」

「な、ない…ないけど。友達が言ってたから」

「へえ、その憂太の友達も大変だったんだな。でもさ、俺は相手が苦しい時につけ込んで恋愛関係になっても嬉しくないけどなー」

「ふーん。でも向こうがぐいぐい相談して来て、ちゃんと仲を取り持とうとしてたのに勘違いされて、結局、お前が彼女を誑かしたんだろって」

「なんでそんな事友達に言えるんだよ、そいつ」

「で、一方的に絶縁されたって」

「そんなん憂太の友達めっちゃかわいそうじゃん。……俺はその女の子とも絶縁した友達とも関わらなくていいと思うけど」

「なんで?それでひとりぼっちになっても?」

「なんで憂太がムキになってんの?」

「なってないけど…」

「憂太の友達は誰かのことを心配して、どうにかしてあげたいって思って行動したんだろ?」

「そう…」

「じゃあ、その友達は間違ってないし、悲しむ必要も何も無いんだから堂々と胸張ってたらいいんだよ」

「友達がいなくなっても?」

「当たり前!俺がその場にいたら絶対に何があっても味方でいるけどなー」


「…ありがとう」


「なんで憂太がお礼?」

「…その友達に代わって言っただけ」


ありがとうなんて変なことを言うんだなと自分よりほんの少し背の高い憂太へ視線を上げると、長い前髪の隙間から今にも溢れそうな涙を堪えている憂太がいた。

そんな憂太を見て、友達思いなんだなと感心してしまった。


「湊はそんな紳士ぶってるといつまでも彼女出来ないよ」

「良いんだよ!大体、俺は恋より友情派なんだよ。それに最近、憂太といるの結構楽しんでるからいいんだよ」

「…なんだよそれ」

「つまり俺に彼女が出来ないのは憂太のせいということだな」

「人のせいにするな」


冗談抜きで最近は憂太といるのが楽しくて、前ほど彼女が欲しいと思わなくなってきてるのは事実なんだよなと思った。

隣を歩いてる憂太が「汗かいたから何か拭くもの貸して」と言うから結衣の涙を拭いたばかりのタオルを渡してあげた。