……ぐいっ。

寄りかかってきた結衣の肩を持ってゆっくり離れる。

「結衣。これ以上、彼氏でもない男にくっついたらダメだ」

「え…」

「寂しいから、相手が浮気してるかもしれないからって言ってこんなことすると後で虚しくなるよ」

結衣はタオルで目元を押さえてさらに泣いていたが、くっつけていた脚の向きをそっと元に戻した。


「俺は将人が浮気するような奴じゃないと思ってるし、ちゃんと落ち着いて話した方が良いと思う」

「どうせはぐらかされて話せないもん」

「じゃあ俺がその話し合いに立ち会う!」

「え?…そんなん湊に迷惑かかるじゃん」

「それぐらい余裕!」

「大事な大事な友達たちの困りごとなんだから、乗り越えられるように助け舟でも何にでもなりますよ」

2人のことは高校の時からよく知っているからこそ、すれ違って修復できないような関係にはならないでほしいと思う。

「うわー俺めっちゃ良いやつじゃん」

「ふふっ自分で言うの、それ。もう…笑わさないでよ」

涙をいっぱい浮かべながら結衣は笑った。

「だから自分を大切にしないとダメだからな。わかった?」

「…わかった」

「本当に?」

「ほんとだってば、もううるさい!ちゃんと将人と話すってば」

泣き止んで悪態をつきながら結衣はスマートフォンを取り出している。

チラッと見えた待受画面には、お互いの方を向いて幸せそうに笑っている2人がいた。

自暴自棄になってるだけで、本当はめちゃくちゃ将人のことが好きで将人以外のことは見てないくせに…と頭をぐしゃぐしゃにしてやった。