大学3年生になる湊にはコンプレックスがある。

それはこれまでの学生生活で、“友達としては最高なんだけど、彼氏としては見れない“と言われ続けてきたことだ。

大学生に流行りのファッションや服装に合わせて染めた明るい髪色…パッと見ただけでは童貞には見えないはずだと自分に言い聞かせ、周りの友人には彼女ができたことがないとバレないように経験人数を偽っている。

高校卒業後に大学デビューしょうと頑張った甲斐もあって、入学してからここ2年は何とか疑われずに過ごせている。


大学3年生になり、卒業させてくれそうだと適当に選んだ研究室のメンバーの中に憂太がいた。

憂太は目元を隠すくらい伸びた真っ黒な髪と目が小さく歪むほど度数の強い眼鏡をかけている。

それに学内で何度か見かけたことがあるが、女性とまともに話しているところを見たことがない。

こいつは告白されたことは無いだろうと安心感を覚えてしまう。

ゼミで週に数回会う憂太への印象は“なんかモサモサしてて彼女いたことなさそうな奴“くらいだった。