**(前書きという名の補足)**
パッと見で分かりやすくするために、タイトル横に何時ものように里田大樹視点と書いてありますが、メインが三叉槍である里田大樹の話と言うだけで、語り手ではありません。
本来なら第三者視点と書くべきかもしれないのですが、分かりにくいかもしれないとこのような表記になっております。
ややこしくてすみません……
****
芝崎視点だとあっさりと終わるが、もちろん幹部からすればこんなにあっさりと終わりはしない。
真っ先に相手幹部と対戦したのは三叉槍だった。
相手はあの裏社会を束ねたストリートギャング、矢。
下っ端の数も、チャトランガ側の倍近くの人数だ。
「あ?マジでガキしかいねぇじゃん。」
ガムを噛みながらつまらなそうに言葉を吐き捨てた矢に、
「てめぇが矢とかいうやつか。何だ裏の有名人とか言うからもっと怖ーい顔想像してたんだけど、案外ガキみてぇな面してんのな。」
と、三叉槍も煽り返す。
それに矢はピキリと青筋を立てた。
「てんめぇ……ぶっ殺す!!」
「やれるもんならやってみな!同じ神の持ち物同士仲良くしようぜぇ!?」
そう叫ぶと同時に矢のナイフと三叉槍の鉄パイプが甲高い金属音を鳴らしてぶつかり合う。
それを皮切りに互いの部下達も雄叫びを上げて走り出した。
それぞれが拳をぶつけ合い、足蹴にし、刃が音を鳴らす。
弓の射手側は刃物を持っており、対するチャトランガ側は殺傷能力の低い、打撃メインのバットや鉄パイプばかりを持っていた。
一見すれば弓の射手側が有利のはずなのに、三叉槍と戦う矢はこの戦況に奇妙な違和感を感じていた。
(相手は未成年……こっちは大人にナイフ持ってんのになんだこの、この言いようもない気味の悪い違和感は……!)
三叉槍#は流石幹部と言うべきか、この平和ボケした日本の子供だと言うのに、裏社会にどっぷり浸かった自分と同等の動きをする。
ナイフは全てパイプで受け流し、蹴りや拳は決定打にならない。
だからこそ周りに目を向ける余裕が無い。
一瞬でも視界から外した瞬間、重い一撃を食らう事が安易に予想できる。
それを三叉槍も分かっているからこそ、攻撃の手を緩めなかった。
とにかく意識を自分に集中させる。そうすることで、ずば抜けた戦闘力を持つ、矢をこの場に釘付けにする。
三叉槍達チャトランガにあるハンデは、未成年ということでは無い。そもそも、弓の射手は相手を殺すことに躊躇がない。だが、チャトランガはあくまで守るための組織。
誰も殺さず、死なさず、この場を制圧する。その目標こそが、彼らにとってのハンデだった。
(だからこそ、こいつを他のやつに対応させる訳にはいかねぇ!)
釘付けにし、その間に部下が弓の射手の下っ端を倒す。
それが、三叉槍である里田に出来る誰も死なせないための戦い方だった。
正直今まで戦ってきたチンピラやその辺の小物とは訳が違う。
気を抜けばやられるのは三叉槍も同じだ。
決して軽くはない傷がお互いの体に刻まれていく。
そうして行くうちに、矢の中に蠢いていた不気味な違和感が、その頭をもたげた。
(……待て、やけに静かじゃないか?)
自分と、そして今目の前で対峙している三叉槍の荒い息しか聞こえない。
そこでよくやく矢は自分の部下が軒並み制圧された事に気がついたのだ。
もう三叉槍相手に目をそらすだなんだ所の話ではない。僅かによろめいたまま、矢は呆然と周りを見渡した。
「……そ、そんな馬鹿な……!俺たちはアメリカの裏社会……ストリートギャングだったんだぞ……!?それなのに、こんな、銃の撃ち方ひとつも知らないような平和ボケした国のガキなんかに……!」
「銃の撃ち方ひとつ知らない?馬鹿言うなよ、俺らはアトリビュート三叉槍。あのシヴァ様の槍、あの方が振るう武器なんだぜ? 」
カチリ、と額に黒く光るそれが当てられた。
それは今しがた矢が口にした銃だ。セーフティは外され、何時でもその実弾は矢の頭を貫くだろう。
気づけば周りのチャトランガの構成員も軒並みこちらに銃口を向けている。
(……見たことの無い形の拳銃……恐らくチャトランガの特注品!構え方も素人のそれじゃねぇ……!)
「おめーらの敗因はただ1つ。」
三叉槍の人差し指が、その引き金をゆっくりと沈めた。
乾いた破裂音の代わりにパシュッと空気が抜けるような音が響き、矢の体はぐらりと傾いた。
「シヴァ様を敵に回した事だ。」
チャトランガの目標は誰も殺さず死なさずの制圧。白目をむいて気絶した矢は倒れる際に顔面を打ったものの、その呼吸は確かに残っている。
以前、シヴァこと芝崎が牡丹組に拉致された時に三叉槍が持っていた麻酔銃。
それを今回三叉槍は部下全員に持たせていた。
最初から出さなかったのはこの銃が普通の実弾銃では無いということを知られないためだ。
仮に弓の射手を1人でも逃がした場合、銃が実弾では無いことを報告される可能性がある。
そうなると、真っ先に対敵した三叉槍達は良くとも、その後に対敵することになる他の幹部や構成員達が苦戦することになる。
そのため、必ず仕留められる状況、もしくは命が危険な場合のみ麻酔銃を発砲することを許可していた。
そして今回、この麻酔銃だからこそ、矢は異変に気づく事が出来なかった。普通の火薬銃と違い、この銃はチャトランガのフロント企業が開発した固形麻酔を針状にし、それをガス噴射で発射するため、大きな破裂音は響かない。
だからこそ、銃声に慣れている矢は喧騒の音でその武器の存在に気がつけなかったのだ。
(ま、日本じゃガス噴射タイプの銃も銃刀法違反になるんだけどな。)
なんて思いながら、トリガーに指をひっかけクルクル回す三叉槍はインカムで全員に「こっちに居たのは幹部矢。無事に制圧かんりょー。」と報告を上げたのだった。
パッと見で分かりやすくするために、タイトル横に何時ものように里田大樹視点と書いてありますが、メインが三叉槍である里田大樹の話と言うだけで、語り手ではありません。
本来なら第三者視点と書くべきかもしれないのですが、分かりにくいかもしれないとこのような表記になっております。
ややこしくてすみません……
****
芝崎視点だとあっさりと終わるが、もちろん幹部からすればこんなにあっさりと終わりはしない。
真っ先に相手幹部と対戦したのは三叉槍だった。
相手はあの裏社会を束ねたストリートギャング、矢。
下っ端の数も、チャトランガ側の倍近くの人数だ。
「あ?マジでガキしかいねぇじゃん。」
ガムを噛みながらつまらなそうに言葉を吐き捨てた矢に、
「てめぇが矢とかいうやつか。何だ裏の有名人とか言うからもっと怖ーい顔想像してたんだけど、案外ガキみてぇな面してんのな。」
と、三叉槍も煽り返す。
それに矢はピキリと青筋を立てた。
「てんめぇ……ぶっ殺す!!」
「やれるもんならやってみな!同じ神の持ち物同士仲良くしようぜぇ!?」
そう叫ぶと同時に矢のナイフと三叉槍の鉄パイプが甲高い金属音を鳴らしてぶつかり合う。
それを皮切りに互いの部下達も雄叫びを上げて走り出した。
それぞれが拳をぶつけ合い、足蹴にし、刃が音を鳴らす。
弓の射手側は刃物を持っており、対するチャトランガ側は殺傷能力の低い、打撃メインのバットや鉄パイプばかりを持っていた。
一見すれば弓の射手側が有利のはずなのに、三叉槍と戦う矢はこの戦況に奇妙な違和感を感じていた。
(相手は未成年……こっちは大人にナイフ持ってんのになんだこの、この言いようもない気味の悪い違和感は……!)
三叉槍#は流石幹部と言うべきか、この平和ボケした日本の子供だと言うのに、裏社会にどっぷり浸かった自分と同等の動きをする。
ナイフは全てパイプで受け流し、蹴りや拳は決定打にならない。
だからこそ周りに目を向ける余裕が無い。
一瞬でも視界から外した瞬間、重い一撃を食らう事が安易に予想できる。
それを三叉槍も分かっているからこそ、攻撃の手を緩めなかった。
とにかく意識を自分に集中させる。そうすることで、ずば抜けた戦闘力を持つ、矢をこの場に釘付けにする。
三叉槍達チャトランガにあるハンデは、未成年ということでは無い。そもそも、弓の射手は相手を殺すことに躊躇がない。だが、チャトランガはあくまで守るための組織。
誰も殺さず、死なさず、この場を制圧する。その目標こそが、彼らにとってのハンデだった。
(だからこそ、こいつを他のやつに対応させる訳にはいかねぇ!)
釘付けにし、その間に部下が弓の射手の下っ端を倒す。
それが、三叉槍である里田に出来る誰も死なせないための戦い方だった。
正直今まで戦ってきたチンピラやその辺の小物とは訳が違う。
気を抜けばやられるのは三叉槍も同じだ。
決して軽くはない傷がお互いの体に刻まれていく。
そうして行くうちに、矢の中に蠢いていた不気味な違和感が、その頭をもたげた。
(……待て、やけに静かじゃないか?)
自分と、そして今目の前で対峙している三叉槍の荒い息しか聞こえない。
そこでよくやく矢は自分の部下が軒並み制圧された事に気がついたのだ。
もう三叉槍相手に目をそらすだなんだ所の話ではない。僅かによろめいたまま、矢は呆然と周りを見渡した。
「……そ、そんな馬鹿な……!俺たちはアメリカの裏社会……ストリートギャングだったんだぞ……!?それなのに、こんな、銃の撃ち方ひとつも知らないような平和ボケした国のガキなんかに……!」
「銃の撃ち方ひとつ知らない?馬鹿言うなよ、俺らはアトリビュート三叉槍。あのシヴァ様の槍、あの方が振るう武器なんだぜ? 」
カチリ、と額に黒く光るそれが当てられた。
それは今しがた矢が口にした銃だ。セーフティは外され、何時でもその実弾は矢の頭を貫くだろう。
気づけば周りのチャトランガの構成員も軒並みこちらに銃口を向けている。
(……見たことの無い形の拳銃……恐らくチャトランガの特注品!構え方も素人のそれじゃねぇ……!)
「おめーらの敗因はただ1つ。」
三叉槍の人差し指が、その引き金をゆっくりと沈めた。
乾いた破裂音の代わりにパシュッと空気が抜けるような音が響き、矢の体はぐらりと傾いた。
「シヴァ様を敵に回した事だ。」
チャトランガの目標は誰も殺さず死なさずの制圧。白目をむいて気絶した矢は倒れる際に顔面を打ったものの、その呼吸は確かに残っている。
以前、シヴァこと芝崎が牡丹組に拉致された時に三叉槍が持っていた麻酔銃。
それを今回三叉槍は部下全員に持たせていた。
最初から出さなかったのはこの銃が普通の実弾銃では無いということを知られないためだ。
仮に弓の射手を1人でも逃がした場合、銃が実弾では無いことを報告される可能性がある。
そうなると、真っ先に対敵した三叉槍達は良くとも、その後に対敵することになる他の幹部や構成員達が苦戦することになる。
そのため、必ず仕留められる状況、もしくは命が危険な場合のみ麻酔銃を発砲することを許可していた。
そして今回、この麻酔銃だからこそ、矢は異変に気づく事が出来なかった。普通の火薬銃と違い、この銃はチャトランガのフロント企業が開発した固形麻酔を針状にし、それをガス噴射で発射するため、大きな破裂音は響かない。
だからこそ、銃声に慣れている矢は喧騒の音でその武器の存在に気がつけなかったのだ。
(ま、日本じゃガス噴射タイプの銃も銃刀法違反になるんだけどな。)
なんて思いながら、トリガーに指をひっかけクルクル回す三叉槍はインカムで全員に「こっちに居たのは幹部矢。無事に制圧かんりょー。」と報告を上げたのだった。

