何度も言うようだが、全て勘違いである。
「すぐさま秘密裏に内部調査を行います。貴方が居ると断言するということは、確実に居るのでしょう。」
と言われて、
「……1人で動くのは良くないですよ。例えば信頼出来る部下と一緒に動くとかどうでしょう?チャトランガを調べさせた部下とか。」
こう答えた時。シヴァこと芝崎と、公安の朝日の認識にはかなりの差がある。
前提として芝崎は何の話かわかっていなかった。なんせ、考えていた事の一部がポロッと口をついて出ただけであり、芝崎本人には自覚は無い。
しかし、芝崎の持ち前のサスペンスオタク知識から「アッ、これ死亡フラグや……」と内なるエセ関西人がこんにちはしてしまった。
1人で内部の調査をし、癒着や裏切り者を見つけ、悩んだ挙句に1人で話をしに行って後に死体で発見されるサスペンスの死亡フラグだ。ちなみに主人公と仲のいい人がこのフラグを立てがちである。
それにより、芝崎は「1人での捜査は死亡フラグですよ!辞めましょうね!誰かと一緒に捜査して!」と伝えると共に、代田刑事や小台刑事をまとめて「チャトランガを調べて廃工場に来た時にいた部下(多分)の人とか!」と伝えようとした結果、あの言い回しになっただけである。
ちなみに、代田も小台も朝日よりも階級は低いが部下では無い。
「わかりました。部下達と連携を取り、必ず内通者を炙りだします。」
そう、朝日が答えたことによって、芝崎は「よかったー!ちゃんと伝わったー!」と感動していたが、酷いすれ違いと勘違いである。
***
その後、第三の目こと松野君と、蛇さん、朝日さんの3人がメインとなって、情報戦の詳細を詰めていく。
炙り出した内通者をあえて泳がせ、公安上層部しか知らないチャトランガと朝日さんの協力者関係を匂わせる。
そして、1部幹部の情報を提示し、信ぴょう性を持たせたところで、チャトランガが『弓の射手』のアジトを突き止めた、と嘘の情報を渡す。
『弓の射手』はまだ、水面下で計画を進めたい時期だ。そんな中、アジトが割れたと分かれば急いで拠点を変えるだろう。
実際、三日月さんと川さんの力である程度の候補場所は絞れているらしい。
なので、そこにそれぞれ監視をつけ、今のアジトを捨て、移動する所を確認し、尾行。その際、交渉人であるヴァジュラと共に行動するであろうボス及びその他幹部と思しき人物を確認する。
情報戦の主な流れとしてはそういう風に決まった。
あとの問題は『弓の射手』がどれだけチャトランガの情報を得ているか、だ。
「いいですか、シヴァ様。1人で動いちゃダメですからね!」
「そうですよ!シヴァ様の事だから大丈夫だとは思いますけれど、それでも心配はするんですから!」
(1人で動くつもりなんて全くありませんが??)
何故か話が一段落着いたところで三日月さんと川さんの女子2人から詰め寄られる。
男としてはドキドキ展開なのに、僕みたいなコミュ障陰キャの口下手MAXスキルな人間からするとドキドキというよりもドッドッドッと心臓が過労死しそうな勢いで騒いでいる。
何故か未だに足元にいる三叉槍さんが「そうですよシヴァ様!」と2人に賛同するが「あんたは何時までシヴァ様の御御足に縋り付いてんのよ!!!」と川さんに蹴り飛ばされた。
先程までの真剣な空気が霧散し、気の緩んだ空間へと変わる。
それに、朝日さんも肩に入れていた力が抜けたのがわかった。
(公安って大変だよな……あんまり詳しい業務内容はしらないけど、社畜なイメージある……)
治安維持には必要な仕事だ。
ただ、機密事項も多ければ、危険性も高い仕事であることも事実。
僕が知っているのはあくまで創作上のイメージでしかないが、実際はもっとハードだと思う。
とはいえ、僕はお飾りのボス。できることなんて大してないとは思うけど、それでも、年相応に騒ぐ川さん達を見てホッとするような顔をする朝日さんを放ってはおけなかった。
「何か出来ることがあれば言ってくださいね!これからも協力者としてよろしくお願いします!」と言って握手を交わそうと前へ足を踏み込んだ瞬間、勢いよく躓いた。
(嘘でしょぉぉおおお!!?)
握手をするため、前に出そうとした手は、転倒を防ごうと、咄嗟に朝日さんの肩を掴んでしまった。
ドッドッドッと嫌な音を心臓が鳴らしている。
「あの……?」
と、困惑した様子の朝日さんに、誤魔化すように口を開いた。
「出来ることがあれば、何時でも。僕たちは、ずっと協力者です。」
なんとかそう口を動かし、僕は躓いた事を無かったことにすべく、そのまま歩き出す。
だって、こんなタイミングで躓くなんて恥ずかしいじゃん!
誰かが「え?シヴァ様今躓いた?」って声に出す前に僕はこの場から去ることを決めた。
情報戦に関する内容は決まったし、僕が居なくても問題は無いだろう。多分。
そんな風に考えている僕は背後から聞こえてくる「シヴァ様信者が生まれたぞ!!囲め囲めーー!! 」なんていう蛇さんの叫び声も耳に入らないまま、早足に廃工場から立ち去った。
「すぐさま秘密裏に内部調査を行います。貴方が居ると断言するということは、確実に居るのでしょう。」
と言われて、
「……1人で動くのは良くないですよ。例えば信頼出来る部下と一緒に動くとかどうでしょう?チャトランガを調べさせた部下とか。」
こう答えた時。シヴァこと芝崎と、公安の朝日の認識にはかなりの差がある。
前提として芝崎は何の話かわかっていなかった。なんせ、考えていた事の一部がポロッと口をついて出ただけであり、芝崎本人には自覚は無い。
しかし、芝崎の持ち前のサスペンスオタク知識から「アッ、これ死亡フラグや……」と内なるエセ関西人がこんにちはしてしまった。
1人で内部の調査をし、癒着や裏切り者を見つけ、悩んだ挙句に1人で話をしに行って後に死体で発見されるサスペンスの死亡フラグだ。ちなみに主人公と仲のいい人がこのフラグを立てがちである。
それにより、芝崎は「1人での捜査は死亡フラグですよ!辞めましょうね!誰かと一緒に捜査して!」と伝えると共に、代田刑事や小台刑事をまとめて「チャトランガを調べて廃工場に来た時にいた部下(多分)の人とか!」と伝えようとした結果、あの言い回しになっただけである。
ちなみに、代田も小台も朝日よりも階級は低いが部下では無い。
「わかりました。部下達と連携を取り、必ず内通者を炙りだします。」
そう、朝日が答えたことによって、芝崎は「よかったー!ちゃんと伝わったー!」と感動していたが、酷いすれ違いと勘違いである。
***
その後、第三の目こと松野君と、蛇さん、朝日さんの3人がメインとなって、情報戦の詳細を詰めていく。
炙り出した内通者をあえて泳がせ、公安上層部しか知らないチャトランガと朝日さんの協力者関係を匂わせる。
そして、1部幹部の情報を提示し、信ぴょう性を持たせたところで、チャトランガが『弓の射手』のアジトを突き止めた、と嘘の情報を渡す。
『弓の射手』はまだ、水面下で計画を進めたい時期だ。そんな中、アジトが割れたと分かれば急いで拠点を変えるだろう。
実際、三日月さんと川さんの力である程度の候補場所は絞れているらしい。
なので、そこにそれぞれ監視をつけ、今のアジトを捨て、移動する所を確認し、尾行。その際、交渉人であるヴァジュラと共に行動するであろうボス及びその他幹部と思しき人物を確認する。
情報戦の主な流れとしてはそういう風に決まった。
あとの問題は『弓の射手』がどれだけチャトランガの情報を得ているか、だ。
「いいですか、シヴァ様。1人で動いちゃダメですからね!」
「そうですよ!シヴァ様の事だから大丈夫だとは思いますけれど、それでも心配はするんですから!」
(1人で動くつもりなんて全くありませんが??)
何故か話が一段落着いたところで三日月さんと川さんの女子2人から詰め寄られる。
男としてはドキドキ展開なのに、僕みたいなコミュ障陰キャの口下手MAXスキルな人間からするとドキドキというよりもドッドッドッと心臓が過労死しそうな勢いで騒いでいる。
何故か未だに足元にいる三叉槍さんが「そうですよシヴァ様!」と2人に賛同するが「あんたは何時までシヴァ様の御御足に縋り付いてんのよ!!!」と川さんに蹴り飛ばされた。
先程までの真剣な空気が霧散し、気の緩んだ空間へと変わる。
それに、朝日さんも肩に入れていた力が抜けたのがわかった。
(公安って大変だよな……あんまり詳しい業務内容はしらないけど、社畜なイメージある……)
治安維持には必要な仕事だ。
ただ、機密事項も多ければ、危険性も高い仕事であることも事実。
僕が知っているのはあくまで創作上のイメージでしかないが、実際はもっとハードだと思う。
とはいえ、僕はお飾りのボス。できることなんて大してないとは思うけど、それでも、年相応に騒ぐ川さん達を見てホッとするような顔をする朝日さんを放ってはおけなかった。
「何か出来ることがあれば言ってくださいね!これからも協力者としてよろしくお願いします!」と言って握手を交わそうと前へ足を踏み込んだ瞬間、勢いよく躓いた。
(嘘でしょぉぉおおお!!?)
握手をするため、前に出そうとした手は、転倒を防ごうと、咄嗟に朝日さんの肩を掴んでしまった。
ドッドッドッと嫌な音を心臓が鳴らしている。
「あの……?」
と、困惑した様子の朝日さんに、誤魔化すように口を開いた。
「出来ることがあれば、何時でも。僕たちは、ずっと協力者です。」
なんとかそう口を動かし、僕は躓いた事を無かったことにすべく、そのまま歩き出す。
だって、こんなタイミングで躓くなんて恥ずかしいじゃん!
誰かが「え?シヴァ様今躓いた?」って声に出す前に僕はこの場から去ることを決めた。
情報戦に関する内容は決まったし、僕が居なくても問題は無いだろう。多分。
そんな風に考えている僕は背後から聞こえてくる「シヴァ様信者が生まれたぞ!!囲め囲めーー!! 」なんていう蛇さんの叫び声も耳に入らないまま、早足に廃工場から立ち去った。

