見せられた映像に朝日さんが、目を見開き身を前に乗り出した。
「公安だけじゃない、各国の諜報機関が暴けなかったボスの正体に近づくなんて!」
と、驚きを口にするが、僕自身理解が追いついていない。
ルドさんが『弓の射手』のボス?え、あの人普通に熱中症で倒れたけど。
「シヴァ様!またひとりで危険な事を……!俺たちをもっと頼ってください!」
なんて、悲壮感をこれ以上なく込めた声色で三叉槍さんが足元に縋り付いて来たが、全部偶然でしかない。
「偶然ですよ。全て、ね。」
と、口から何とか言葉をひねり出すも、蛇さんが「やれやれ、これだからシヴァ様は。」みたいに肩を竦めている。
いや、本当に偶然なんです!!
「シヴァ様がボスと思しき人物と接触した数日後、交渉人『ヴァジュラ』も同じ場所でシヴァ様と接触しています。この近くの情報屋曰く、『チャトランガ』の情報を買いたがっていたとか。」
そう、淡々と三日月さんが説明していく。
まず、こんな公園近くの場所に情報屋がいることすら初耳なんだけど。
「そして交渉人『ヴァジュラ』がシヴァ様と接触後、足取りを追ったところ、この外国籍と思しき男との接触が確認されました。」
「この男、結構うろついてて、あたしも何回か尾行してみたけど、どうやらシヴァ様が狙いみたい。シヴァ様の写真ばっかり撮ってたわ。」
三日月の報告に続いて川さんが口を開く。
写真撮られてたことにも気がついて居なかったけれど、もし仮に、ルドさんが本当に『弓の射手』のボスだったとしたら、僕がチャトランガのボスであるとバレたのだろうか。写真を撮っているということは動向や周辺との人間関係も把握されているはず。
(……でも、そうなるとどのタイミングで……?最近はアジトにも集まっていなかったし、チェスしたくらいしか関わった時間もないのに……)
元々最初の方は顔を隠していなかったし、何処かでポロッと情報が出てもおかしくは無い。
ただ、僕の正体から芋蔓式にほかのメンバーの正体が暴かれたり、周りにいる関係の無い一般人が巻き込まれたりしたら、それこそ事だ。
「となると、やはりまずチャトランガを潰してからこの街を、と考えているのでしょうね……シヴァさん、君はなにか気づいたことは?」
朝日さんの言葉に、足元にいる三叉槍さんが「様をつけろよデコ〇野郎。」と、ボソリとつぶやく。やめなさい。それは別の出版社だ。
しかし気づくも何も、僕はただ、2人とチェスをしただけである。世間話どころか、話したのは自己紹介とチェスの内容についてくらいだ。
(自己紹介といえば、バフダーラさんが偽名なら、ルドさんも偽名なのかもしれないなぁ……)
一応、本当に『弓の射手』のボスかはわからないが、ボクの知っている情報は伝えておいた方がいいだろう。
ルド、と名乗っていたことと、それが偽名かもしれない、ということしかわからないが。
意を決して、その名前のことと、僕の正体についてはいつバレたのか、本当にチャトランガのボスとバレたのかは分からない、と伝えようと口を開く。
「交渉人は、偽名を名乗っていました。恐らく、この人の名乗ったルド、というのも偽名。僕の正体に関しては、まだわかっていません。」
まあ、口下手極めた僕にしては合格点だろう。
いつもよりはちゃんと伝えたいことを伝えられた気がする。
ちなみに、伝わったと思っているのは芝崎汪だけである。
他のメンバーからしてみれば「僕の正体に関しては、まだ(相手は)わかっていません。」という解釈になるが、芝崎本人は「僕の正体に関しては(相手が分かっているのかどうか僕自身)まだわかっていません。」という補足が入る。
なんてひどい。
「交渉人から、探りを入れてみますか?」
ふと、今まで無言だった野々本君が口を開いた。
それに、朝日さんが僅かに眉を寄せる。
「交渉人はそう易々と懐には入れてくれませんよ。いくらチャトランガの幹部とはいえそう簡単に……」
「俺の表の顔は交渉人『ヴァジュラ』に勧誘されている。」
朝日さんの言葉に野々本君が声を被せた。
野々本君も機械を通した声で、いつもと違う声だ。
だが、青龍が交渉人『ヴァジュラ』から声をかけられていたことは協力関係を結んだ日に動画で見せてしまっている。
これは身バレに繋がるんじゃ、と嫌な汗が背中を伝っていった。
「……なるほど、わざと味方になった振りをして、相手の懐に入りこむ、と。」
朝日さんは、身元に察しが付いているだろうが、少し間を持たせた後、身元については触れないと決めたらしくそのまま話が進んでいく。
「はい。……シヴァ様と第三の目さんの下以外につくなんて本当は……!すごく……嫌ですけど……!!!」
と、野々本君は機械越しの声でもわかるくらい物凄く苦渋を滲ませた声色で、そう言葉を絞り出す。それに、朝日さんは「……あー、あの、探ろうとしている訳ではないことを予めお伝えしておきます。純粋な疑問なのですが、」と前置きをした後、
「幹部にも階級が存在するのですか?我々が把握出来ている幹部は、蛇、三叉槍、川、三日月、太鼓、第三の目までの6人でして……シヴァ様と来られなかった太鼓を抜いてここには6人居ますよね?そして彼はシヴァ様だけではなく、第三の目の名前も出していました。上下関係が?」
そう疑問を投げかけた。
それにちらりと野々本君が僕に視線を向けてくる。
(……あ、そうか!僕がボスだから、言っていいか確認しているのか!)
野々本君が第三の目である松野君の直属の部下だと言うことは、チャトランガの内情を知らない人間からすれば予測しにくい。幹部内でも階級があると考えた方が自然だ。
そう考えると幹部に招集かけると必ず付いてくる野々本君相当松野君に忠誠心厚すぎでは?
(……ここは、野々本君に判断を任せるか……正直どういう経緯で野々本君が松野君の直属になったのかよくわからないし、言っていいことと言っちゃいけないことのラインがわからないや。)
そう考えた僕は野々本君に向かって「言っても大丈夫な事は言っていいんじゃない?」という意味を込めて小さく頷く。
それに、野々本君も頷き返し、被っていたフードを外し、その仮面に手をかけた。
(え!!?野々本君正体まで言っちゃって大丈夫なの!?)
朝日さんも予想外だったのか、僅かに目を見開き、その身を固くしていた。驚くこちら側を知ってかしらずが、野々本君は勢いよく、その仮面を剥ぎ取ってしまった。
「公安だけじゃない、各国の諜報機関が暴けなかったボスの正体に近づくなんて!」
と、驚きを口にするが、僕自身理解が追いついていない。
ルドさんが『弓の射手』のボス?え、あの人普通に熱中症で倒れたけど。
「シヴァ様!またひとりで危険な事を……!俺たちをもっと頼ってください!」
なんて、悲壮感をこれ以上なく込めた声色で三叉槍さんが足元に縋り付いて来たが、全部偶然でしかない。
「偶然ですよ。全て、ね。」
と、口から何とか言葉をひねり出すも、蛇さんが「やれやれ、これだからシヴァ様は。」みたいに肩を竦めている。
いや、本当に偶然なんです!!
「シヴァ様がボスと思しき人物と接触した数日後、交渉人『ヴァジュラ』も同じ場所でシヴァ様と接触しています。この近くの情報屋曰く、『チャトランガ』の情報を買いたがっていたとか。」
そう、淡々と三日月さんが説明していく。
まず、こんな公園近くの場所に情報屋がいることすら初耳なんだけど。
「そして交渉人『ヴァジュラ』がシヴァ様と接触後、足取りを追ったところ、この外国籍と思しき男との接触が確認されました。」
「この男、結構うろついてて、あたしも何回か尾行してみたけど、どうやらシヴァ様が狙いみたい。シヴァ様の写真ばっかり撮ってたわ。」
三日月の報告に続いて川さんが口を開く。
写真撮られてたことにも気がついて居なかったけれど、もし仮に、ルドさんが本当に『弓の射手』のボスだったとしたら、僕がチャトランガのボスであるとバレたのだろうか。写真を撮っているということは動向や周辺との人間関係も把握されているはず。
(……でも、そうなるとどのタイミングで……?最近はアジトにも集まっていなかったし、チェスしたくらいしか関わった時間もないのに……)
元々最初の方は顔を隠していなかったし、何処かでポロッと情報が出てもおかしくは無い。
ただ、僕の正体から芋蔓式にほかのメンバーの正体が暴かれたり、周りにいる関係の無い一般人が巻き込まれたりしたら、それこそ事だ。
「となると、やはりまずチャトランガを潰してからこの街を、と考えているのでしょうね……シヴァさん、君はなにか気づいたことは?」
朝日さんの言葉に、足元にいる三叉槍さんが「様をつけろよデコ〇野郎。」と、ボソリとつぶやく。やめなさい。それは別の出版社だ。
しかし気づくも何も、僕はただ、2人とチェスをしただけである。世間話どころか、話したのは自己紹介とチェスの内容についてくらいだ。
(自己紹介といえば、バフダーラさんが偽名なら、ルドさんも偽名なのかもしれないなぁ……)
一応、本当に『弓の射手』のボスかはわからないが、ボクの知っている情報は伝えておいた方がいいだろう。
ルド、と名乗っていたことと、それが偽名かもしれない、ということしかわからないが。
意を決して、その名前のことと、僕の正体についてはいつバレたのか、本当にチャトランガのボスとバレたのかは分からない、と伝えようと口を開く。
「交渉人は、偽名を名乗っていました。恐らく、この人の名乗ったルド、というのも偽名。僕の正体に関しては、まだわかっていません。」
まあ、口下手極めた僕にしては合格点だろう。
いつもよりはちゃんと伝えたいことを伝えられた気がする。
ちなみに、伝わったと思っているのは芝崎汪だけである。
他のメンバーからしてみれば「僕の正体に関しては、まだ(相手は)わかっていません。」という解釈になるが、芝崎本人は「僕の正体に関しては(相手が分かっているのかどうか僕自身)まだわかっていません。」という補足が入る。
なんてひどい。
「交渉人から、探りを入れてみますか?」
ふと、今まで無言だった野々本君が口を開いた。
それに、朝日さんが僅かに眉を寄せる。
「交渉人はそう易々と懐には入れてくれませんよ。いくらチャトランガの幹部とはいえそう簡単に……」
「俺の表の顔は交渉人『ヴァジュラ』に勧誘されている。」
朝日さんの言葉に野々本君が声を被せた。
野々本君も機械を通した声で、いつもと違う声だ。
だが、青龍が交渉人『ヴァジュラ』から声をかけられていたことは協力関係を結んだ日に動画で見せてしまっている。
これは身バレに繋がるんじゃ、と嫌な汗が背中を伝っていった。
「……なるほど、わざと味方になった振りをして、相手の懐に入りこむ、と。」
朝日さんは、身元に察しが付いているだろうが、少し間を持たせた後、身元については触れないと決めたらしくそのまま話が進んでいく。
「はい。……シヴァ様と第三の目さんの下以外につくなんて本当は……!すごく……嫌ですけど……!!!」
と、野々本君は機械越しの声でもわかるくらい物凄く苦渋を滲ませた声色で、そう言葉を絞り出す。それに、朝日さんは「……あー、あの、探ろうとしている訳ではないことを予めお伝えしておきます。純粋な疑問なのですが、」と前置きをした後、
「幹部にも階級が存在するのですか?我々が把握出来ている幹部は、蛇、三叉槍、川、三日月、太鼓、第三の目までの6人でして……シヴァ様と来られなかった太鼓を抜いてここには6人居ますよね?そして彼はシヴァ様だけではなく、第三の目の名前も出していました。上下関係が?」
そう疑問を投げかけた。
それにちらりと野々本君が僕に視線を向けてくる。
(……あ、そうか!僕がボスだから、言っていいか確認しているのか!)
野々本君が第三の目である松野君の直属の部下だと言うことは、チャトランガの内情を知らない人間からすれば予測しにくい。幹部内でも階級があると考えた方が自然だ。
そう考えると幹部に招集かけると必ず付いてくる野々本君相当松野君に忠誠心厚すぎでは?
(……ここは、野々本君に判断を任せるか……正直どういう経緯で野々本君が松野君の直属になったのかよくわからないし、言っていいことと言っちゃいけないことのラインがわからないや。)
そう考えた僕は野々本君に向かって「言っても大丈夫な事は言っていいんじゃない?」という意味を込めて小さく頷く。
それに、野々本君も頷き返し、被っていたフードを外し、その仮面に手をかけた。
(え!!?野々本君正体まで言っちゃって大丈夫なの!?)
朝日さんも予想外だったのか、僅かに目を見開き、その身を固くしていた。驚くこちら側を知ってかしらずが、野々本君は勢いよく、その仮面を剥ぎ取ってしまった。

