「そんな……」
と、太鼓さんに人質にされてた小台と呼ばれていた刑事さんが言葉を洩らす。
「……この街が最初に狙われる根拠は?」
顔を顰めたまま問う代田刑事に、「情報をただで渡すのは癪ですが、まあ、良いでしょう。」と蛇さんは肩を竦めて見せた。
「根拠はこの街に日本で最も大きな暴力団があったことです。」
「あった……猪鹿組のことか。」
「ええ、猪鹿組から、紅葉、牡丹と別れても依然勢力は変わらず存在していました。」
(……なんかどこかで聞いたことある名前だな……?)
猪鹿組は知らないが、牡丹はこの前僕を拉致ったところで紅葉は蛇さん達に潰された暴力団では?
あの2つ、そんなに規模の大きい暴力団だったんだ、なんて今更なことを思いながら、進んでいく話に置いていかれないように耳をそばだてる。
まあ、もう既によくわかんないんだけど。
「……なるほど、新参者の『弓の射手』からすれば、日本の裏社会を荒らすに邪魔な存在ですね。」
「確かにな。」
と、代田刑事達は普通に同意を示す。
「だが新参者だからこそ、紅葉組を潰すじゃなく手中に収められりゃ、『弓の射手』だって動きやすく……」
そこまで言葉を続けたところで、代田刑事の動きが止まった。
かと思えば何かに気がついたらしく、徐にその目が見開かれる。
「まさか、『弓の射手』は、紅葉組そのものを乗っ取るつもりで……」
「恐らくは。紅葉組ごと乗っ取るつもりだったのか、紅葉組の頭を潰して、裏社会のトップに入れ替わるつもりだったのか、今となってはわかりませんが。」
と、再び肩を竦めて見せる蛇さん。
(え、待ってどういうこと??紅葉組って蛇さん達が潰したとこでしょ……?)
全て分かってますと言わんばかりに皆真剣な顔で話を進めていくが僕の頭の中は『?』でいっぱいだ。
だが、流石に「え、こいつボスなのに何も分かってないの?」となると困るので、あたかも分かっています感を出してその場に立ち続ける。
「ま、確実に言えるのは、『弓の射手』はその売買ルートを乗っ取って、資金源と人手を一気に増やし操ってやるっつー算段だったんだろ。」
三叉槍さんの言葉に隣にいた松野君も「まあ、日本で勢力拡大を図るなら1番手っ取り早い話ですよね。」とあっさり同意を示した。
どうやら後輩の松野君ですら現状を完全に把握しているらしい。
むしろ何で僕の知らない話が進んでるの今??
「俺は、今回の紅葉組と牡丹組がぶつかったことに、疑問を持っていた……『弓の射手』に先手を打つため、お前らが先に潰したのを牡丹組がやったことにしたのか?」
そう代田刑事が意を決したように口を開いて聞いてくるが、正直そんなのただの偶然に過ぎず、先手も何もない。
(むしろ紅葉組を潰したことが国際テロ組織への先手になっているというのを今初めて理解したんだが??)
「あ、いえ、僕らもそこまでは知らなくて……」
と、松野君が仮面越しに頬を掻く素振りをする。それに同意するように三叉槍さんも「そうなんだよなぁー。」と軽い口調で言葉を続けた。
「シヴァ様がいきなり明後日潰すって言い出すからめっちゃ怒ってんなーとは思ってたけどなぁ。」
(え、僕怒ってたと思われてたの!?)
ただチェスが出来ないのが耐えられなくて、日を前倒ししてもらっただけなのに、どうしてそうなった!?と仮面の下で白目をむきそうになる。
代田刑事達も目を見開いて驚き、こちらを凝視してくるが、ただの勘違いなんです!
「あんたらベラベラ喋りすぎ。というか単に牡丹組は同盟相手なのよ。」
と、川さんが呆れたように補足するが、牡丹組も暴力団だから同盟相手となると余計に警戒されるだけのような気がする。
「……何故、『弓の射手』の事を幹部に伝えなかったのですか?貴方は『弓の射手』に対して先手を打つために事を急いだのでしょう?」
不意にもう1人の刑事さんがこちらを真っ直ぐ見てそう問うた。
(いや、先手とか本当にただの偶然です……)
「まさか。」
と、なんとかその一言をひねり出す。
そもそも紅葉組の事は蛇さん達とチェスが5日も出来ないことの耐えきれないから、2日後に変更してもらっただけに過ぎない。
だが「チェスがしたかったんですよ~」と言ったところで、納得してもらえるかは別だし、何より当時幹部の面々にも「僕のワガママだ。」で押し通している。
ここは口下手なりに上手く濁しながら、伝えるしかない!と
「僕は僕のために、みんなに動いてもらった……それだけですよ。」
そうなんとか言葉を紡ぐ。
今回は中々上手く伝えられた気がする。
ちゃんとチェスがしたかった所をぼかしつつ、自分本位な理由で、その『弓の射手』がどうのだの先手がどうのは全く考えていなかったことが、これで刑事さん達もわかったはず。
「『弓の射手』に関しては、そうですね……タイミングが悪かったんでしょうね。」
震えそうになる声を抑えながらダメ押しで更に言葉を繋げる。
多分、その『弓の射手』が動こうとしたタイミングがたまたまチャトランガが動いてしまったので、こんな勘違いが起きてしまっているのだろう。
珍しく頑張って話して、勘違いの訂正を試みているにも関わらず、それすらも違う解釈で受け取られ勘違いがさらに酷くなっているなんて、勿論僕は気づいていなかった。
と、太鼓さんに人質にされてた小台と呼ばれていた刑事さんが言葉を洩らす。
「……この街が最初に狙われる根拠は?」
顔を顰めたまま問う代田刑事に、「情報をただで渡すのは癪ですが、まあ、良いでしょう。」と蛇さんは肩を竦めて見せた。
「根拠はこの街に日本で最も大きな暴力団があったことです。」
「あった……猪鹿組のことか。」
「ええ、猪鹿組から、紅葉、牡丹と別れても依然勢力は変わらず存在していました。」
(……なんかどこかで聞いたことある名前だな……?)
猪鹿組は知らないが、牡丹はこの前僕を拉致ったところで紅葉は蛇さん達に潰された暴力団では?
あの2つ、そんなに規模の大きい暴力団だったんだ、なんて今更なことを思いながら、進んでいく話に置いていかれないように耳をそばだてる。
まあ、もう既によくわかんないんだけど。
「……なるほど、新参者の『弓の射手』からすれば、日本の裏社会を荒らすに邪魔な存在ですね。」
「確かにな。」
と、代田刑事達は普通に同意を示す。
「だが新参者だからこそ、紅葉組を潰すじゃなく手中に収められりゃ、『弓の射手』だって動きやすく……」
そこまで言葉を続けたところで、代田刑事の動きが止まった。
かと思えば何かに気がついたらしく、徐にその目が見開かれる。
「まさか、『弓の射手』は、紅葉組そのものを乗っ取るつもりで……」
「恐らくは。紅葉組ごと乗っ取るつもりだったのか、紅葉組の頭を潰して、裏社会のトップに入れ替わるつもりだったのか、今となってはわかりませんが。」
と、再び肩を竦めて見せる蛇さん。
(え、待ってどういうこと??紅葉組って蛇さん達が潰したとこでしょ……?)
全て分かってますと言わんばかりに皆真剣な顔で話を進めていくが僕の頭の中は『?』でいっぱいだ。
だが、流石に「え、こいつボスなのに何も分かってないの?」となると困るので、あたかも分かっています感を出してその場に立ち続ける。
「ま、確実に言えるのは、『弓の射手』はその売買ルートを乗っ取って、資金源と人手を一気に増やし操ってやるっつー算段だったんだろ。」
三叉槍さんの言葉に隣にいた松野君も「まあ、日本で勢力拡大を図るなら1番手っ取り早い話ですよね。」とあっさり同意を示した。
どうやら後輩の松野君ですら現状を完全に把握しているらしい。
むしろ何で僕の知らない話が進んでるの今??
「俺は、今回の紅葉組と牡丹組がぶつかったことに、疑問を持っていた……『弓の射手』に先手を打つため、お前らが先に潰したのを牡丹組がやったことにしたのか?」
そう代田刑事が意を決したように口を開いて聞いてくるが、正直そんなのただの偶然に過ぎず、先手も何もない。
(むしろ紅葉組を潰したことが国際テロ組織への先手になっているというのを今初めて理解したんだが??)
「あ、いえ、僕らもそこまでは知らなくて……」
と、松野君が仮面越しに頬を掻く素振りをする。それに同意するように三叉槍さんも「そうなんだよなぁー。」と軽い口調で言葉を続けた。
「シヴァ様がいきなり明後日潰すって言い出すからめっちゃ怒ってんなーとは思ってたけどなぁ。」
(え、僕怒ってたと思われてたの!?)
ただチェスが出来ないのが耐えられなくて、日を前倒ししてもらっただけなのに、どうしてそうなった!?と仮面の下で白目をむきそうになる。
代田刑事達も目を見開いて驚き、こちらを凝視してくるが、ただの勘違いなんです!
「あんたらベラベラ喋りすぎ。というか単に牡丹組は同盟相手なのよ。」
と、川さんが呆れたように補足するが、牡丹組も暴力団だから同盟相手となると余計に警戒されるだけのような気がする。
「……何故、『弓の射手』の事を幹部に伝えなかったのですか?貴方は『弓の射手』に対して先手を打つために事を急いだのでしょう?」
不意にもう1人の刑事さんがこちらを真っ直ぐ見てそう問うた。
(いや、先手とか本当にただの偶然です……)
「まさか。」
と、なんとかその一言をひねり出す。
そもそも紅葉組の事は蛇さん達とチェスが5日も出来ないことの耐えきれないから、2日後に変更してもらっただけに過ぎない。
だが「チェスがしたかったんですよ~」と言ったところで、納得してもらえるかは別だし、何より当時幹部の面々にも「僕のワガママだ。」で押し通している。
ここは口下手なりに上手く濁しながら、伝えるしかない!と
「僕は僕のために、みんなに動いてもらった……それだけですよ。」
そうなんとか言葉を紡ぐ。
今回は中々上手く伝えられた気がする。
ちゃんとチェスがしたかった所をぼかしつつ、自分本位な理由で、その『弓の射手』がどうのだの先手がどうのは全く考えていなかったことが、これで刑事さん達もわかったはず。
「『弓の射手』に関しては、そうですね……タイミングが悪かったんでしょうね。」
震えそうになる声を抑えながらダメ押しで更に言葉を繋げる。
多分、その『弓の射手』が動こうとしたタイミングがたまたまチャトランガが動いてしまったので、こんな勘違いが起きてしまっているのだろう。
珍しく頑張って話して、勘違いの訂正を試みているにも関わらず、それすらも違う解釈で受け取られ勘違いがさらに酷くなっているなんて、勿論僕は気づいていなかった。