【注意】流血表現があります。
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もちろん芝崎はそんな警戒なんてしていないし、何なら規模の確認とか資金源とか確認するつもりなんて全くなかった。
ただチャトランガが行っている慈善活動や人助けに関して主にどう活動をしているかを聞きたかっただけである。
むしろ、資金源に関してはパトロンの存在やチャトランガの構成員が就職している表企業があるなど芝崎にとっては寝耳に水だったので、通話の後芝崎はひっそり泣いた。思っていたより黒寄りの組織だったチャトランガ。
ただ勘違いの神に愛される芝崎なので、水面下でちゃっかり事は進み始めていた。
「紅葉組が潰され、計画が大いに狂いましたねぇ。」
薄暗い部屋で、椅子に座る一人の男がワイングラスを揺らす。
赤い水面が揺れ、その揺れに呼応するように、近くに控えていた人物の震えが大きくなっていく。
「ボクは言ったはずですよ。計画を決して口外するな、と。」
「い、言ってません!そ、そもそもこの計画は限られた人物しか知らないはずです……!」
「では偶然だと?紅葉組の資金源、売買ルートを乗っ取ろうとしていた前日に紅葉組が潰されたのも、各ルートが警察によって抑え込まれたのも、全て。」
コトリとワイングラスがサイドテーブルに置かれる。先程まで揺さぶられていた水面はすぐには落ち着かず、僅かに揺らぎ続けていた。
そして、程よく装飾の着いた椅子から立ち上がった人物はわざと足音を響かせながら、震える男に近づいていく。
カツ、カツと響く革靴の音が死へのカウントダウンのように聞こえ、男は「ほ、本当に口外していません!信じてください!」と床に膝を着いて命乞いをする。
「ボクも君を信じていたんですけどねぇ。残念です。」
なんてわざとらしく肩を竦め、「でも、事実ボクらの事前準備計画が潰されたんですよ。責任はこの計画のリーダーだった君にあると思いませんか?」と、いつの間にか左手に持っていた銃口を男の額に押し付けた。
「おね、お願いします……!も、もういちど、だけ……チャンスを……!」
全身をガタガタと揺らし、上手く回らない口で乞う。それに1つため息をつき、銃口を額から離した。
離された脅威に安堵したように力を抜いたその瞬間、パァンと火薬の爆ぜる音が響いた。
「ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙!!!」
撃ち抜かれた太ももの痛みに男は身を縮め転げ回る。
そんな男を踏みつけて「知ってました?」なんて軽い口調で話しかける。
「使い回した所で使えない駒はいつまで経っても使えない駒なんですよ。 」
再度火薬の爆ぜる音が響き、そして次の瞬間にはどちゃりっと粘着質な音をたてて男の体が血溜まりに沈んだ。
「あぁあ、汚い。この服はもう使えませんね。」
なんて返り血に不満そうに唇を尖らせる男は、スマートフォンを取り出し、通話ボタンをタップした。
「チャトランガという組織の情報を集めなさい。実在するのか、それとも本当にただの都市伝説なのか。次は彼らの事を考慮して計画しなければいけません。」
それだけ告げて通話を切った男は、ドアを開け、控えていた構成員に「そこのゴミ片しておいて下さい。」とだけ伝えて部屋を後にした。
(紅葉組が潰されてからチャトランガの存在感は確かに増している。でもそれなら何故もっと自分たちの存在をアピールしない?)
拠点の長い廊下に革靴の音が響く。
拠点といえど、限られた人間しか立ち入れない場所のため、廊下に他の人影は見当たらない。
(裏の秩序を守りたいのなら絶対的な王者の存在は有用。本当にいるかどうかわからない存在なんて、気にしないやつは気にしないでしょうに。)
現に自分たちも眉唾なものだと、気にしていなかった。
だが、偶然と言うにはあまりにもタイミングが出来すぎている。だからこそ、ようやくその実態を調べようと動き出したのだ。
(……何か事情が?表にも顔が存在する人間だとしたら……そこを狙わない手はないですね。)
持ち上がる口角を隠すことなく、男は廊下の奥へと消えていった。
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明確に章分けしているわけではないのですが、そろそろ最終章です。
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もちろん芝崎はそんな警戒なんてしていないし、何なら規模の確認とか資金源とか確認するつもりなんて全くなかった。
ただチャトランガが行っている慈善活動や人助けに関して主にどう活動をしているかを聞きたかっただけである。
むしろ、資金源に関してはパトロンの存在やチャトランガの構成員が就職している表企業があるなど芝崎にとっては寝耳に水だったので、通話の後芝崎はひっそり泣いた。思っていたより黒寄りの組織だったチャトランガ。
ただ勘違いの神に愛される芝崎なので、水面下でちゃっかり事は進み始めていた。
「紅葉組が潰され、計画が大いに狂いましたねぇ。」
薄暗い部屋で、椅子に座る一人の男がワイングラスを揺らす。
赤い水面が揺れ、その揺れに呼応するように、近くに控えていた人物の震えが大きくなっていく。
「ボクは言ったはずですよ。計画を決して口外するな、と。」
「い、言ってません!そ、そもそもこの計画は限られた人物しか知らないはずです……!」
「では偶然だと?紅葉組の資金源、売買ルートを乗っ取ろうとしていた前日に紅葉組が潰されたのも、各ルートが警察によって抑え込まれたのも、全て。」
コトリとワイングラスがサイドテーブルに置かれる。先程まで揺さぶられていた水面はすぐには落ち着かず、僅かに揺らぎ続けていた。
そして、程よく装飾の着いた椅子から立ち上がった人物はわざと足音を響かせながら、震える男に近づいていく。
カツ、カツと響く革靴の音が死へのカウントダウンのように聞こえ、男は「ほ、本当に口外していません!信じてください!」と床に膝を着いて命乞いをする。
「ボクも君を信じていたんですけどねぇ。残念です。」
なんてわざとらしく肩を竦め、「でも、事実ボクらの事前準備計画が潰されたんですよ。責任はこの計画のリーダーだった君にあると思いませんか?」と、いつの間にか左手に持っていた銃口を男の額に押し付けた。
「おね、お願いします……!も、もういちど、だけ……チャンスを……!」
全身をガタガタと揺らし、上手く回らない口で乞う。それに1つため息をつき、銃口を額から離した。
離された脅威に安堵したように力を抜いたその瞬間、パァンと火薬の爆ぜる音が響いた。
「ア゙ア゙ア゙ァ゙ア゙!!!」
撃ち抜かれた太ももの痛みに男は身を縮め転げ回る。
そんな男を踏みつけて「知ってました?」なんて軽い口調で話しかける。
「使い回した所で使えない駒はいつまで経っても使えない駒なんですよ。 」
再度火薬の爆ぜる音が響き、そして次の瞬間にはどちゃりっと粘着質な音をたてて男の体が血溜まりに沈んだ。
「あぁあ、汚い。この服はもう使えませんね。」
なんて返り血に不満そうに唇を尖らせる男は、スマートフォンを取り出し、通話ボタンをタップした。
「チャトランガという組織の情報を集めなさい。実在するのか、それとも本当にただの都市伝説なのか。次は彼らの事を考慮して計画しなければいけません。」
それだけ告げて通話を切った男は、ドアを開け、控えていた構成員に「そこのゴミ片しておいて下さい。」とだけ伝えて部屋を後にした。
(紅葉組が潰されてからチャトランガの存在感は確かに増している。でもそれなら何故もっと自分たちの存在をアピールしない?)
拠点の長い廊下に革靴の音が響く。
拠点といえど、限られた人間しか立ち入れない場所のため、廊下に他の人影は見当たらない。
(裏の秩序を守りたいのなら絶対的な王者の存在は有用。本当にいるかどうかわからない存在なんて、気にしないやつは気にしないでしょうに。)
現に自分たちも眉唾なものだと、気にしていなかった。
だが、偶然と言うにはあまりにもタイミングが出来すぎている。だからこそ、ようやくその実態を調べようと動き出したのだ。
(……何か事情が?表にも顔が存在する人間だとしたら……そこを狙わない手はないですね。)
持ち上がる口角を隠すことなく、男は廊下の奥へと消えていった。
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明確に章分けしているわけではないのですが、そろそろ最終章です。