『……シヴァ様がチャトランガの規模を確認した?』
「ああ、紅葉組も潰えた今、この街にチャトランガの驚異になるような規模の組織はいないはず。それなのに、だ。」
『シヴァ様は『何か』を警戒している、ということですね。』
電話の向こう側で太鼓がうーんと唸る。
ちなみに今回の真相は芝崎が調子にのって蛇こと神島に電話した際、「チャトランガって今って主に何してるの??」と言おうとし、「チャトランガの現状は?」と無事口下手が発揮された結果である。
これを蛇はチャトランガの現在の規模や資産状況の確認と解釈し、事は更にややこしくなっていた。
『今現在、警察にはそれと言った情報は上がってきていません。未だ紅葉組の潰えた余波に混乱している状態ですし……』
「太鼓の方もわからないか……だが、シヴァ様が直接指示を出さないところを考えれば、シヴァ様もまだ確信に至っていない可能性がある。」
確信してはいないが、警戒はしている。シヴァ様の現状はそんな所だ。
シヴァ様ほどの人が情報を掴みきれていないなら、警察が把握出来ていないのも無理は無いか、と蛇は小さく息を吐く。
『……警察組織も、チャトランガについて核心に迫っている訳ではありません。恐らく対立するのは警察組織では無いでしょう。』
「ああ。となれば、他の地域からの組織の移入か新興組織が出てくる可能性か。」
『今や最大規模となったチャトランガの状況をシヴァ様がわざわざ確認するくらいです。他所の組織であれ、新興であれ、恐らく相当の規模のはずです。』
いくつかピックアップしてリストを送ります。と電話の向こうからカタカタとタイピングの音が聞こえてくる。
「……お前まさかまだ警察署にいるのか?」
思わず自室の時計を仰ぎ見れば既に日が変わろうとしている。
そんな時刻だと言うのに「はい、そうですよ。」と#太鼓__ダマル__#はあっさりと肯定した。
「いや、お前……さすがに署内で俺の電話とるなよ……」
太鼓の立場は特殊だ。
チャトランガに入る前には既に警察学校に所属していたが、スパイであることに変わりは無い。
『周りに人がいないことくらい確認してますよ。それに、言ったでしょう。未だ紅葉組が潰えた余波に混乱していると。生活安全課も組織対策課も皆缶詰ですよ。ハハッエナドリ最高。』
「完全にキマっちまってんじゃねぇか。」
ハハハー!なんて狂ったテンションで笑う太鼓に、思わず口角が引き攣る。
やばい、早くシヴァ様の写真を送らねば。
通話しながらシヴァ様の写真を送れば、電話口の向こうから「アッ、シヴァ様の御尊顔……!尊さが徹夜の目に染みる……!」という台詞と崩れ落ちる物音が聞こえた。
(……それにしても、)
シヴァ様が、自らの総力を確認するほどの警戒する相手。
恐らく対敵することになれば、紅葉組よりも時間も労力も必要となるだろう。
(それほどの相手が、まだ潜んでいると……? )
シヴァ様の先読みは絶対だ。あの人が情報を得てそう推測しているのなら、その潜んだ相手は必ず現れる。
(資金源の確保……表の企業を増やすか?あと場合によっては何人かのパトロンに資金援助を頼むしかないな。)
逆に人員は無理に増やす必要は無い。下手に規模の拡大を優先すれば潜んでいる相手に気づかれる可能性もあるし、新参者が一気に増えればその分敵対組織の間者や良からぬ企みをする者が紛れ込んでもおかしくは無い。
『……おっと、そろそろ私は仕事に戻ります。』
「ああ、まあ体に気をつけろよ。」
『いざと言う時に疲労で動けませんってなったら困りますしねぇ……』
「いや、その前に俺らも心配するからな……?」
完全に社畜精神が染み込んでいる。太鼓は『ふふ、何だかくすぐったい気持ちになります。分かっていますよ、仲間ですから、ね。』と少し笑ってから通話を切った。
「ひとまず、日向にも連絡しておくか。」
いざと言う時に情報が無ければ洒落にならない。
情報戦の要である三日月の日向への連絡ボタンをタップし、俺は再び画面を耳へと近づけた。
「ああ、紅葉組も潰えた今、この街にチャトランガの驚異になるような規模の組織はいないはず。それなのに、だ。」
『シヴァ様は『何か』を警戒している、ということですね。』
電話の向こう側で太鼓がうーんと唸る。
ちなみに今回の真相は芝崎が調子にのって蛇こと神島に電話した際、「チャトランガって今って主に何してるの??」と言おうとし、「チャトランガの現状は?」と無事口下手が発揮された結果である。
これを蛇はチャトランガの現在の規模や資産状況の確認と解釈し、事は更にややこしくなっていた。
『今現在、警察にはそれと言った情報は上がってきていません。未だ紅葉組の潰えた余波に混乱している状態ですし……』
「太鼓の方もわからないか……だが、シヴァ様が直接指示を出さないところを考えれば、シヴァ様もまだ確信に至っていない可能性がある。」
確信してはいないが、警戒はしている。シヴァ様の現状はそんな所だ。
シヴァ様ほどの人が情報を掴みきれていないなら、警察が把握出来ていないのも無理は無いか、と蛇は小さく息を吐く。
『……警察組織も、チャトランガについて核心に迫っている訳ではありません。恐らく対立するのは警察組織では無いでしょう。』
「ああ。となれば、他の地域からの組織の移入か新興組織が出てくる可能性か。」
『今や最大規模となったチャトランガの状況をシヴァ様がわざわざ確認するくらいです。他所の組織であれ、新興であれ、恐らく相当の規模のはずです。』
いくつかピックアップしてリストを送ります。と電話の向こうからカタカタとタイピングの音が聞こえてくる。
「……お前まさかまだ警察署にいるのか?」
思わず自室の時計を仰ぎ見れば既に日が変わろうとしている。
そんな時刻だと言うのに「はい、そうですよ。」と#太鼓__ダマル__#はあっさりと肯定した。
「いや、お前……さすがに署内で俺の電話とるなよ……」
太鼓の立場は特殊だ。
チャトランガに入る前には既に警察学校に所属していたが、スパイであることに変わりは無い。
『周りに人がいないことくらい確認してますよ。それに、言ったでしょう。未だ紅葉組が潰えた余波に混乱していると。生活安全課も組織対策課も皆缶詰ですよ。ハハッエナドリ最高。』
「完全にキマっちまってんじゃねぇか。」
ハハハー!なんて狂ったテンションで笑う太鼓に、思わず口角が引き攣る。
やばい、早くシヴァ様の写真を送らねば。
通話しながらシヴァ様の写真を送れば、電話口の向こうから「アッ、シヴァ様の御尊顔……!尊さが徹夜の目に染みる……!」という台詞と崩れ落ちる物音が聞こえた。
(……それにしても、)
シヴァ様が、自らの総力を確認するほどの警戒する相手。
恐らく対敵することになれば、紅葉組よりも時間も労力も必要となるだろう。
(それほどの相手が、まだ潜んでいると……? )
シヴァ様の先読みは絶対だ。あの人が情報を得てそう推測しているのなら、その潜んだ相手は必ず現れる。
(資金源の確保……表の企業を増やすか?あと場合によっては何人かのパトロンに資金援助を頼むしかないな。)
逆に人員は無理に増やす必要は無い。下手に規模の拡大を優先すれば潜んでいる相手に気づかれる可能性もあるし、新参者が一気に増えればその分敵対組織の間者や良からぬ企みをする者が紛れ込んでもおかしくは無い。
『……おっと、そろそろ私は仕事に戻ります。』
「ああ、まあ体に気をつけろよ。」
『いざと言う時に疲労で動けませんってなったら困りますしねぇ……』
「いや、その前に俺らも心配するからな……?」
完全に社畜精神が染み込んでいる。太鼓は『ふふ、何だかくすぐったい気持ちになります。分かっていますよ、仲間ですから、ね。』と少し笑ってから通話を切った。
「ひとまず、日向にも連絡しておくか。」
いざと言う時に情報が無ければ洒落にならない。
情報戦の要である三日月の日向への連絡ボタンをタップし、俺は再び画面を耳へと近づけた。