そんな風にようやく自称シバと他称シヴァの認識の違いに気づきつつある芝崎だが、彼がチェスしよー!という気持ちで松野と野々本を誘ったことが原因で松野の幹部入りが確定したことなど、全然気付いていなかった。
なんなら、名前のことも違和感を持ちつつも、シバがヒンドゥー教のシヴァ神と結びつかず、結局は首を傾げて終わっている辺り、勘違いの現状は変わりようがなかった。そういうところだぞ芝崎汪。
そんなこんなで会議は蛇さんが提示した議題、『紅葉組』をどうするか、で話が進んでいく。僕にはよく分からないので、配られた資料を手慰みにパラパラ捲ったりしていた。
主に分かれている意見は2つ。
1つ目は蛇さんや三日月さんが提唱する牡丹組を表の立役者として、紅葉組を潰す方針。
そして、2つ目は三叉槍さんが提唱する、『チャトランガ』を表舞台に出して、紅葉組を潰す方針だ。
(……というか、どっちにしても潰すのは確定なんだ……)
意見2つに分かれてるのに最終目標が物騒すぎて悲しい。そう言えばここ一応反社会的組織だった。
もっと皆穏便に生きよう?
チェスして穏やかな日々を過ごそうよ。
蛇さん達はチャトランガが表舞台に立つことによってそれぞれの素性が特定され、家族や周りの人間が巻き込ま得ることを懸念しての意見だ。
三叉槍さんは、紅葉組のような大きい暴力団が潰れれば裏社会への余波は計り知れない。
フリーになった売人や逃げ切った下っ端が統率を失って暴れる可能性がある以上、噂でしか存在しないチャトランガが存在を主張することで、裏社会に巻き込まれた子供たちの保護や、犯罪への抑止力となるべきだ、という意見だ。
松野君達はどちらの言い分もわかると、双方の意見に対してどちらかと言えば中立。川さんは意外にも三叉槍さんに賛成気味だ。裏社会の混沌は避けるべきだ、という意見故らしい。
太鼓さんは「今警察の目を集中させるべきではないと思いますよ。せっかく逸らした所なんですから、下手に存在をアピールする必要は無いかと。」と、蛇さんの意見に賛同した。
両者それぞれ引かないので、話し合いは結局平行線のまま、時間が過ぎていく。
もう正直僕いらなくない?
方針とかよくわからないし、最初の狙い通り松野君とチェスしようかな、と思って、
「……松野君はどう思う?」
と声をかけた。
定番の補足を入れるとするなら「どう思う?」の部分に「(もう蛇さん達の話がまとまるまで放っておいてもいい気がするんだけど)どう思う?」となる。なぜ伝わると思った。
もちろん、普通に議論としての意見を求められたと解釈した松野君は「えっ!?僕ですか!?」と突然の名指しに驚きながらも「えーとですね……」と言葉を続ける。
「表舞台に立ってもらうのは牡丹組でいいと思います。ただ、抑止力の面も確かに不安なので、噂を更に流す形にすれば、チャトランガが表に出なくても大丈夫かと……噂なら元々ありましたし、警察もそこまで食いつかないと思います。」
(……あっ、なんか普通に議論が続いてる……)
「でも、それで抑止力になるかぁ?」
と、三叉槍さんが怪訝そうに眉を寄せる。
それに対し、松野君はしっかりとした口調で「なると思います。」と言い切った。
「『牡丹組』が『チャトランガ』と繋がっているかもしれない、という新しい噂が広がれば、紅葉組が潰れたのも、チャトランガの義賊面を見れば理由は自ずと見えてきます。チャトランガの存在も以前よりは確たるものになりつつも、あくまで噂、都市伝説の状態を維持できます。」
どうでしょうか……?と恐る恐る周りを見る松野君。
ちょっと待って欲しい。
思っていたよりしっかりと幹部っぽいことしてた。僕の頭の理解が追いつかない。
「……確かに、それなら抑止力を強めつつ、俺たちが無理に表舞台に経つ必要も無いか。」
「なら、牡丹組に名乗りあげてもらおうぜ。『チャトランガの同盟の元に!』とかさ。逃げるような下っ端なら裏社会に戻ってもチャトランガの名前に怯えて派手には動かないだろ。」
蛇さんと三叉槍さんも双方妥協案を受け入れているし、完全に松野君第2の頭脳みたいな扱いされてる。怖い。君も最初勘違いしてチャトランガはいったんじゃないの!?(※勘違い)
(……うん、考えることをやめよう!)
勘違いの方向がどう拡がってるのかもわからないし、今現状そのものがわからないし、と芝崎は思考を放棄した。
遠い目で見ているその気の抜けた姿ですら、幹部達には「ああ!シヴァ様が松野翔の成長に暖かい目を向けている!」と感動しているので、正直もう色々と手遅れである。
なんなら、名前のことも違和感を持ちつつも、シバがヒンドゥー教のシヴァ神と結びつかず、結局は首を傾げて終わっている辺り、勘違いの現状は変わりようがなかった。そういうところだぞ芝崎汪。
そんなこんなで会議は蛇さんが提示した議題、『紅葉組』をどうするか、で話が進んでいく。僕にはよく分からないので、配られた資料を手慰みにパラパラ捲ったりしていた。
主に分かれている意見は2つ。
1つ目は蛇さんや三日月さんが提唱する牡丹組を表の立役者として、紅葉組を潰す方針。
そして、2つ目は三叉槍さんが提唱する、『チャトランガ』を表舞台に出して、紅葉組を潰す方針だ。
(……というか、どっちにしても潰すのは確定なんだ……)
意見2つに分かれてるのに最終目標が物騒すぎて悲しい。そう言えばここ一応反社会的組織だった。
もっと皆穏便に生きよう?
チェスして穏やかな日々を過ごそうよ。
蛇さん達はチャトランガが表舞台に立つことによってそれぞれの素性が特定され、家族や周りの人間が巻き込ま得ることを懸念しての意見だ。
三叉槍さんは、紅葉組のような大きい暴力団が潰れれば裏社会への余波は計り知れない。
フリーになった売人や逃げ切った下っ端が統率を失って暴れる可能性がある以上、噂でしか存在しないチャトランガが存在を主張することで、裏社会に巻き込まれた子供たちの保護や、犯罪への抑止力となるべきだ、という意見だ。
松野君達はどちらの言い分もわかると、双方の意見に対してどちらかと言えば中立。川さんは意外にも三叉槍さんに賛成気味だ。裏社会の混沌は避けるべきだ、という意見故らしい。
太鼓さんは「今警察の目を集中させるべきではないと思いますよ。せっかく逸らした所なんですから、下手に存在をアピールする必要は無いかと。」と、蛇さんの意見に賛同した。
両者それぞれ引かないので、話し合いは結局平行線のまま、時間が過ぎていく。
もう正直僕いらなくない?
方針とかよくわからないし、最初の狙い通り松野君とチェスしようかな、と思って、
「……松野君はどう思う?」
と声をかけた。
定番の補足を入れるとするなら「どう思う?」の部分に「(もう蛇さん達の話がまとまるまで放っておいてもいい気がするんだけど)どう思う?」となる。なぜ伝わると思った。
もちろん、普通に議論としての意見を求められたと解釈した松野君は「えっ!?僕ですか!?」と突然の名指しに驚きながらも「えーとですね……」と言葉を続ける。
「表舞台に立ってもらうのは牡丹組でいいと思います。ただ、抑止力の面も確かに不安なので、噂を更に流す形にすれば、チャトランガが表に出なくても大丈夫かと……噂なら元々ありましたし、警察もそこまで食いつかないと思います。」
(……あっ、なんか普通に議論が続いてる……)
「でも、それで抑止力になるかぁ?」
と、三叉槍さんが怪訝そうに眉を寄せる。
それに対し、松野君はしっかりとした口調で「なると思います。」と言い切った。
「『牡丹組』が『チャトランガ』と繋がっているかもしれない、という新しい噂が広がれば、紅葉組が潰れたのも、チャトランガの義賊面を見れば理由は自ずと見えてきます。チャトランガの存在も以前よりは確たるものになりつつも、あくまで噂、都市伝説の状態を維持できます。」
どうでしょうか……?と恐る恐る周りを見る松野君。
ちょっと待って欲しい。
思っていたよりしっかりと幹部っぽいことしてた。僕の頭の理解が追いつかない。
「……確かに、それなら抑止力を強めつつ、俺たちが無理に表舞台に経つ必要も無いか。」
「なら、牡丹組に名乗りあげてもらおうぜ。『チャトランガの同盟の元に!』とかさ。逃げるような下っ端なら裏社会に戻ってもチャトランガの名前に怯えて派手には動かないだろ。」
蛇さんと三叉槍さんも双方妥協案を受け入れているし、完全に松野君第2の頭脳みたいな扱いされてる。怖い。君も最初勘違いしてチャトランガはいったんじゃないの!?(※勘違い)
(……うん、考えることをやめよう!)
勘違いの方向がどう拡がってるのかもわからないし、今現状そのものがわからないし、と芝崎は思考を放棄した。
遠い目で見ているその気の抜けた姿ですら、幹部達には「ああ!シヴァ様が松野翔の成長に暖かい目を向けている!」と感動しているので、正直もう色々と手遅れである。