シヴァ様は組織の名前に準えたチェスをこよなく愛している。
それは幹部だけではなく、組織のメンバー全員が知っていることだ。
だからこそ、一般的にオセロと呼ばれるボードゲームを持ってきた時、たまたま来ていた川と思わず顔を見合わせた。
その後、挨拶を交わした川はシヴァ様に撫でてもらい満足気だが、やはり気になるらしく、シヴァ様が準備するそのボードを覗き込んでいる。
最近、川は動いてもらいっぱなしでアジトにも顔を出せない日が続いていた。だからこそ、シヴァ様は久々に川とのチェスを楽しまれるかと思っていたが……
(ここであえてオセロというボードゲームを持ってきたのには何か意図が……?)
「良ければ1戦どうかな?」
と、シヴァ様がボードを覗き込んでいた川に声をかける。
「も、もちろんです!」
いそいそとテーブルの向こう側に座り直した川。恐らく久々のシヴァ様の対面と、試合に緊張しているのだろう。わかる。シヴァ様との久々に対面すると神々しさに緊張するよな。
「シヴァ様はオセロも嗜まれているのですね。」
少しでも川に落ち着く時間を、と思い、質問をシヴァ様に質問を投げかける。
「割とボードゲームは何でも好きですよ。」
と、シヴァ様はなんて事ないようにお答えになられた。
「そうですか……」と言葉を返すも、初めて知ったその情報に、より考え込まされる。
他にもボードゲームを嗜まれるのに、あえてオセロを選択した理由は?
シヴァ様は基本的に意味の無い行動はされない。
川がシヴァ様に先行を譲り、シヴァ様は黒石をその盤上に置いていく。
ついつい自分ならどこに置くか、なんて考えながら見入ってしまう。
増えたり減ったりの黒と白の攻防戦を眺めていれば、次第に盤上は石で埋まっていき、とうとう一角に黒石が置かれた。
「あっ!もうシヴァ様強すぎ~!こんなの勝てないよぉ~!」
と、角に置かれた石を見て項垂れる川。
川も中々に食らいついていたが、やはりシヴァ様の方が1枚上手だった。
「角は確かに要だが、僕は角を4つ取られて勝ったことがあるよ。角を敢えて取らせて自分が別の角を取ることも出来るし、例え角を全部取られても勝敗は分からない。大切なことはここからどうするか、だよ。」
と、嘆く川に気を使ってか、シヴァ様はそう言葉をかけられた。
「ここから、どうするか……」と顎に手を当てて、考え込みだした川。
俺も、思わず考え込んでしまう。
俺はつい最近、自分の軽はずみな行動でチャトランガを危機に追いやってしまった。
それに関して、シヴァ様からのお言葉を頂いているような気がした。
角を全て取られるような逆境に陥っても、どうするか考えることをやめるな、と。
シヴァ様はそれを俺たちに伝えるために?
「シヴァ様、もしかしてだけど、蛇のため、あたし達のためにわざわざオセロを?」
どうやら、川も気がついたらしく、シヴァ様にそう問いかけた。
「……まあ、皆で楽しめたら、と。たまにはチェス以外も楽しいだろう?」
と、微笑んだシヴァ様。
『皆』で。
蛇を含めた、その言葉に一気に涙腺が緩んでしまった。
「シヴァ様……!!俺は、俺は……!!」
本当は、怖かった。
誰も被害者を出さずにあの犯人をどうにかできたんじゃないかとか、シヴァ様を危険に晒してしまったことも。全部がとても怖かった。
自分を見捨てる策を講じた時も、ずっと。
「一生シヴァ様について行きます……!!」
だからこそ、シヴァ様のその言葉が嬉しくて仕方なかった。
「……僕は、皆が思っているような人物じゃないよ。」
ふいに、シヴァ様がそんな言葉を落とした。
その横顔は無表情ではあるがどこか寂しそうで、シヴァ様も理想のための犠牲に心を痛めているのだと、その瞬間理解してしまった。
シヴァ様も、1人の人間だ。
本当は俺みたいに、怖いと思ったりすることもあるのかもしれない。
(……そういえば、シヴァ様はまだ17歳なのか。)
シヴァ様は上に立つ人だからこそ、弱みを見せない。見せられない。
けれども、呟き落としたその言葉に固く閉ざされた御心が少し、開かれたような気がした。
「……シヴァ様、俺たちはシヴァ様の理想のために、全力を尽くします。ですからシヴァ様、ご自分を貶すような事を言わないでください。」
強くあろうとするこの御方を、俺たちが支えるんだ。
一生の忠誠を、貴方に。
それは幹部だけではなく、組織のメンバー全員が知っていることだ。
だからこそ、一般的にオセロと呼ばれるボードゲームを持ってきた時、たまたま来ていた川と思わず顔を見合わせた。
その後、挨拶を交わした川はシヴァ様に撫でてもらい満足気だが、やはり気になるらしく、シヴァ様が準備するそのボードを覗き込んでいる。
最近、川は動いてもらいっぱなしでアジトにも顔を出せない日が続いていた。だからこそ、シヴァ様は久々に川とのチェスを楽しまれるかと思っていたが……
(ここであえてオセロというボードゲームを持ってきたのには何か意図が……?)
「良ければ1戦どうかな?」
と、シヴァ様がボードを覗き込んでいた川に声をかける。
「も、もちろんです!」
いそいそとテーブルの向こう側に座り直した川。恐らく久々のシヴァ様の対面と、試合に緊張しているのだろう。わかる。シヴァ様との久々に対面すると神々しさに緊張するよな。
「シヴァ様はオセロも嗜まれているのですね。」
少しでも川に落ち着く時間を、と思い、質問をシヴァ様に質問を投げかける。
「割とボードゲームは何でも好きですよ。」
と、シヴァ様はなんて事ないようにお答えになられた。
「そうですか……」と言葉を返すも、初めて知ったその情報に、より考え込まされる。
他にもボードゲームを嗜まれるのに、あえてオセロを選択した理由は?
シヴァ様は基本的に意味の無い行動はされない。
川がシヴァ様に先行を譲り、シヴァ様は黒石をその盤上に置いていく。
ついつい自分ならどこに置くか、なんて考えながら見入ってしまう。
増えたり減ったりの黒と白の攻防戦を眺めていれば、次第に盤上は石で埋まっていき、とうとう一角に黒石が置かれた。
「あっ!もうシヴァ様強すぎ~!こんなの勝てないよぉ~!」
と、角に置かれた石を見て項垂れる川。
川も中々に食らいついていたが、やはりシヴァ様の方が1枚上手だった。
「角は確かに要だが、僕は角を4つ取られて勝ったことがあるよ。角を敢えて取らせて自分が別の角を取ることも出来るし、例え角を全部取られても勝敗は分からない。大切なことはここからどうするか、だよ。」
と、嘆く川に気を使ってか、シヴァ様はそう言葉をかけられた。
「ここから、どうするか……」と顎に手を当てて、考え込みだした川。
俺も、思わず考え込んでしまう。
俺はつい最近、自分の軽はずみな行動でチャトランガを危機に追いやってしまった。
それに関して、シヴァ様からのお言葉を頂いているような気がした。
角を全て取られるような逆境に陥っても、どうするか考えることをやめるな、と。
シヴァ様はそれを俺たちに伝えるために?
「シヴァ様、もしかしてだけど、蛇のため、あたし達のためにわざわざオセロを?」
どうやら、川も気がついたらしく、シヴァ様にそう問いかけた。
「……まあ、皆で楽しめたら、と。たまにはチェス以外も楽しいだろう?」
と、微笑んだシヴァ様。
『皆』で。
蛇を含めた、その言葉に一気に涙腺が緩んでしまった。
「シヴァ様……!!俺は、俺は……!!」
本当は、怖かった。
誰も被害者を出さずにあの犯人をどうにかできたんじゃないかとか、シヴァ様を危険に晒してしまったことも。全部がとても怖かった。
自分を見捨てる策を講じた時も、ずっと。
「一生シヴァ様について行きます……!!」
だからこそ、シヴァ様のその言葉が嬉しくて仕方なかった。
「……僕は、皆が思っているような人物じゃないよ。」
ふいに、シヴァ様がそんな言葉を落とした。
その横顔は無表情ではあるがどこか寂しそうで、シヴァ様も理想のための犠牲に心を痛めているのだと、その瞬間理解してしまった。
シヴァ様も、1人の人間だ。
本当は俺みたいに、怖いと思ったりすることもあるのかもしれない。
(……そういえば、シヴァ様はまだ17歳なのか。)
シヴァ様は上に立つ人だからこそ、弱みを見せない。見せられない。
けれども、呟き落としたその言葉に固く閉ざされた御心が少し、開かれたような気がした。
「……シヴァ様、俺たちはシヴァ様の理想のために、全力を尽くします。ですからシヴァ様、ご自分を貶すような事を言わないでください。」
強くあろうとするこの御方を、俺たちが支えるんだ。
一生の忠誠を、貴方に。