オセロ、という名で日本で親しまれている『リバーシ』というボードゲーム。チェスと同じ二人零和有限確定完全情報ゲームだ。
黒と白の石を使った世界中で親しまれているこのボードゲームは、ルール自体は簡単だ。だが、覚えるのに1分、極めるのに一生というキャッチフレーズがあるように様々な戦法戦術のあるマインドスポーツでもある。
まあ、チェスと違ってルールが簡単な分、ボードゲーム初心者でも親しみやすいゲームだ。
そんなわけで僕は今日、チャトランガにオセロ盤を持ち込むことにした。
有言実行。僕偉い。
「あれ、今日は川さんも来ていたんですね。」
放課後、チャトランガに顔を出せば、最近来ていなかった川さんがソファで寛いでいた。
「シヴァ様!お久しぶりです!」
パァっと笑顔でこちらに駆けてきた川さんの頭をポンポンと撫でる。
川さんは中学生で、チャトランガに入ったのは三叉槍さんと同じくらいの時期だった。
理由はよく分からない。多分勘違いされてこうなった。
(でも、こう見るとただの中学生なんだよなぁ……)
チャトランガが組織としてやっていることを考えると、なんとも心苦しい。
とは言え、ボスである僕が最近何にもしてないのである意味チャトランガはチェスクラブと言っても過言ではないのでは?
(よーし、このままここをチェス含めたボードゲームクラブにしちゃおー!)
残念。本人が気づいていないだけで、しっかり組織は活動している。チェスクラブになんて一生なれない。
****
「アレ?シヴァ様、それってオセロですか?」
「たまには、と思ってね。」
川さんが首を傾げながら僕が持つボードを見やる。
蛇さんも珍しいのか目を丸くしてボードを見ている。
そんな二人を横目に、ボードの縁にある窪みにオセロの駒石をしまい込んで、準備は万端だ。
「良ければ1戦どうかな?」
と、ボードを覗き込んでいた川さんに声をかける。
「も、もちろんです!」
いそいそとテーブルの向こう側に座り直した川さん。この様子を見ると川さんはオセロが好きなのかもしれない。
いいよね、オセロ。
「シヴァ様はオセロも嗜まれているのですね。」
「割とボードゲームは何でも好きですよ。」
蛇さんが意外そうに言うので、確かにチャトランガではチェスしかしていなかったな、と思い返す。
「そうですか……」となんとも言えない顔で蛇さんはそう言葉を返した。
なんだか考え込んでいるようなので、内心首を傾げながら、とりあえず目の前のゲームに集中することにした。
先行を譲られたので、僕は黒。川さんが白の石を打っていく。
次第に盤上は石で埋まっていき、とうとう一角に黒石が置かれた。
「あっ!もうシヴァ様強すぎ~!こんなの勝てないよぉ~!」
と、角に置かれた石を見て項垂れる川さん。
ちょっと大人げなかったかな、と思いつつ、勝負に年齢は関係ないので、手は抜かない。
ただ、このまま気がそがれてオセロが嫌いになってしまったらそれは悲しい。
「角は確かに要だが、僕は角を4つ取られて勝ったことがあるよ。角を敢えて取らせて自分が別の角を取ることも出来るし、例え角を全部取られても勝敗は分からない。大切なことはここからどうするか、だよ。」
ここからでも挽回できるよ、と遠回しに伝えてみれば、川さんは「ここから、どうするか……」と顎に手を当てて、考え込みだした。
蛇さんも自分ならどうやって動かすのか思案しているようで、腕を組んだままジッと盤上を眺めて動かない。
まあ、僕の言った角を4つ取られても勝てた、というのは角と角の間の列を丸々僕の自陣の色に出来たから、なんだけれど。
あれを最初から狙って出来るかと言われれば絶対無理。相手が焦ってミス打ちしてくれたから出来たことだ。
多分蛇さんとかに角を4つ取られたら僕はボロボロに負けると思う。
「シヴァ様、もしかしてだけど、蛇のため、あたし達のためにわざわざオセロを?」
盤上に落ちていた視線をそろりとこちらへ向けた川さん。何となく質問のニュアンスが違うような気もするが、皆で楽しめるようにこのオセロを持ってきたことは間違いはないので、
「……まあ、皆で楽しめたら、と。たまにはチェス以外も楽しいだろう?」
そう素直に答えた。
そしたら、
「シヴァ様……!!俺は、俺は……!!」
(あぃえなんでぇぇえええ!!?)
蛇さんが号泣していた。
訳が分からない。
今のどこにそんな号泣する要素があったのか。
「一生シヴァ様について行きます……!!」
(アッ、これまたなんか勘違いされてるやつ。)
一体何をどうやって勘違いされたかは分からない。
けど、この状況、絶対勘違いされたとしか思えない。
「……僕は、皆が思っているような人物じゃないよ。」
と、なんとか勘違い脱却を試みる。
しかし、
「……シヴァ様、俺たちはシヴァ様の理想のために、全力を尽くします。ですからシヴァ様、ご自分を貶すような事を言わないでください。」
(違うんだよぉおおお!)
全然違う解釈をされていた。これ、僕にどうしろと。
結局、勘違いは解決しないまま、その日は解散になった。
解せぬ。
黒と白の石を使った世界中で親しまれているこのボードゲームは、ルール自体は簡単だ。だが、覚えるのに1分、極めるのに一生というキャッチフレーズがあるように様々な戦法戦術のあるマインドスポーツでもある。
まあ、チェスと違ってルールが簡単な分、ボードゲーム初心者でも親しみやすいゲームだ。
そんなわけで僕は今日、チャトランガにオセロ盤を持ち込むことにした。
有言実行。僕偉い。
「あれ、今日は川さんも来ていたんですね。」
放課後、チャトランガに顔を出せば、最近来ていなかった川さんがソファで寛いでいた。
「シヴァ様!お久しぶりです!」
パァっと笑顔でこちらに駆けてきた川さんの頭をポンポンと撫でる。
川さんは中学生で、チャトランガに入ったのは三叉槍さんと同じくらいの時期だった。
理由はよく分からない。多分勘違いされてこうなった。
(でも、こう見るとただの中学生なんだよなぁ……)
チャトランガが組織としてやっていることを考えると、なんとも心苦しい。
とは言え、ボスである僕が最近何にもしてないのである意味チャトランガはチェスクラブと言っても過言ではないのでは?
(よーし、このままここをチェス含めたボードゲームクラブにしちゃおー!)
残念。本人が気づいていないだけで、しっかり組織は活動している。チェスクラブになんて一生なれない。
****
「アレ?シヴァ様、それってオセロですか?」
「たまには、と思ってね。」
川さんが首を傾げながら僕が持つボードを見やる。
蛇さんも珍しいのか目を丸くしてボードを見ている。
そんな二人を横目に、ボードの縁にある窪みにオセロの駒石をしまい込んで、準備は万端だ。
「良ければ1戦どうかな?」
と、ボードを覗き込んでいた川さんに声をかける。
「も、もちろんです!」
いそいそとテーブルの向こう側に座り直した川さん。この様子を見ると川さんはオセロが好きなのかもしれない。
いいよね、オセロ。
「シヴァ様はオセロも嗜まれているのですね。」
「割とボードゲームは何でも好きですよ。」
蛇さんが意外そうに言うので、確かにチャトランガではチェスしかしていなかったな、と思い返す。
「そうですか……」となんとも言えない顔で蛇さんはそう言葉を返した。
なんだか考え込んでいるようなので、内心首を傾げながら、とりあえず目の前のゲームに集中することにした。
先行を譲られたので、僕は黒。川さんが白の石を打っていく。
次第に盤上は石で埋まっていき、とうとう一角に黒石が置かれた。
「あっ!もうシヴァ様強すぎ~!こんなの勝てないよぉ~!」
と、角に置かれた石を見て項垂れる川さん。
ちょっと大人げなかったかな、と思いつつ、勝負に年齢は関係ないので、手は抜かない。
ただ、このまま気がそがれてオセロが嫌いになってしまったらそれは悲しい。
「角は確かに要だが、僕は角を4つ取られて勝ったことがあるよ。角を敢えて取らせて自分が別の角を取ることも出来るし、例え角を全部取られても勝敗は分からない。大切なことはここからどうするか、だよ。」
ここからでも挽回できるよ、と遠回しに伝えてみれば、川さんは「ここから、どうするか……」と顎に手を当てて、考え込みだした。
蛇さんも自分ならどうやって動かすのか思案しているようで、腕を組んだままジッと盤上を眺めて動かない。
まあ、僕の言った角を4つ取られても勝てた、というのは角と角の間の列を丸々僕の自陣の色に出来たから、なんだけれど。
あれを最初から狙って出来るかと言われれば絶対無理。相手が焦ってミス打ちしてくれたから出来たことだ。
多分蛇さんとかに角を4つ取られたら僕はボロボロに負けると思う。
「シヴァ様、もしかしてだけど、蛇のため、あたし達のためにわざわざオセロを?」
盤上に落ちていた視線をそろりとこちらへ向けた川さん。何となく質問のニュアンスが違うような気もするが、皆で楽しめるようにこのオセロを持ってきたことは間違いはないので、
「……まあ、皆で楽しめたら、と。たまにはチェス以外も楽しいだろう?」
そう素直に答えた。
そしたら、
「シヴァ様……!!俺は、俺は……!!」
(あぃえなんでぇぇえええ!!?)
蛇さんが号泣していた。
訳が分からない。
今のどこにそんな号泣する要素があったのか。
「一生シヴァ様について行きます……!!」
(アッ、これまたなんか勘違いされてるやつ。)
一体何をどうやって勘違いされたかは分からない。
けど、この状況、絶対勘違いされたとしか思えない。
「……僕は、皆が思っているような人物じゃないよ。」
と、なんとか勘違い脱却を試みる。
しかし、
「……シヴァ様、俺たちはシヴァ様の理想のために、全力を尽くします。ですからシヴァ様、ご自分を貶すような事を言わないでください。」
(違うんだよぉおおお!)
全然違う解釈をされていた。これ、僕にどうしろと。
結局、勘違いは解決しないまま、その日は解散になった。
解せぬ。