「え、幹部会議?」
「ああ、蛇がお前も出ろって。」
里田先輩の言葉に僕は目を瞬かせる。
幹部、というのは間違いなく僕が加入したチャトランガの幹部だろう。
何故それに僕が呼ばれるのかてんで見当がつかない。
「ああ、翔のことはさ、シヴァ様が幹部にするつもりでいるから今から参加しといた方がいいだろって。」
ケロリととんでもないことを言う里田先輩に「えぇっ!?」と思わず声を上げてしまった。
「ぼ、ぼ、僕が幹部!?な、なんでですか!?」
「そりゃシヴァ様が選んだからだろ。」
「む、む、無理ですよ!?ぼ、僕入ったばかりの新人ですよ!?」
「いーや!できる!自信持てって!」
慌てふためく僕の背中をバシバシ叩く先輩。「適当言わないで下さい!」と泣きの混じった声で抗議すれば、「適当じゃねーよ。」と、先輩は目を細めて笑った。
「あのシヴァ様が、お前を幹部に育てようとしてんだぞ?なれねぇわけがねぇ!」
「た、確かにシヴァ様は素晴らしいお方ですが……!」
問題は僕自身の技量の話だ。
三日月さんのようなハッカーとしての技術もなければ、三叉槍である里田先輩みたいに喧嘩に強い訳でもない。
僕は本当に弱い、平凡な人間なんだ。
「翔、お前は幹部になる。そんだけの才能をシヴァ様はお前に見出したんだ。」
自分は信じられなくても、シヴァ様は信じてみろよ、と再びバシバシ背中を叩く先輩。
でもやっぱり、僕にはシヴァ様にそんな目を掛けて頂けるような才能があるようには思えなくて、下を向いてしまった。
その日の夜。
親に見つからないようにこっそり抜け出して、チャトランガのアジトへと向かった。
「おっ。来たな!」
扉を開ければ、真っ先に里田先輩が大きく手を振って出迎えてくれた。
よく見れば、幹部の皆さんはもう集まっており、僕が1番最後だったようだ。
「お待たせしてしまいすみませんっ……!」
新参者の僕が幹部を待たせるなんて!と慌てて深く頭を下げれば、
「問題ないわよ。ちょっと早く集まって皆でチェスしてただけだから。」
と、三日月さんが手に持っていたナイトを持ち上げて見せる。
すでに勝敗は着いたようで、駒を片付けている最中のようだ。
「ちなみに俺が全敗したぞ!」
「誇るな。」
「今日は蛇の一人勝ちだったわね。三叉槍には勝てたんだけど。」
と、どこか和気あいあいとした雰囲気に肩の力が抜ける。
幹部会議と聞いてもっと堅苦しく、重い空気を予想していた僕としてはとても有難い。
「あ、今日はまだ松野君が会ったことない幹部も紹介したくて呼んだの。」
「え、幹部って今いる皆さんで全員じゃないんですか?」
てっきりこのメンバーで全員だと思っていた僕は、思わずそんな声を上げてしまう。
シヴァ様に連れられて初めてアジトに訪れた次の日。組織の説明のためにわざわざ訪ねて下さった蛇さんも、その時は他の2人の名前しか出さなかったので、すっかりそう思い込んでいた。だが、よく考えればこんな大規模な組織なのだ。
あと何人か幹部がいても不思議はない。
「ええ、後幹部は2人いるの。1人はちょっと立場が特殊でここには来ないんだけどもう1人は今後も顔合わせるだろうから紹介しておきたくて。」
と、三日月さんが説明してくれた時、扉が勢いよく開き「あたしが来たぞー!!」と元気な声が響いた。
突然のその声に思わず肩が跳ねる。
「噂をすれば、ね。」
そうクスリと笑った三日月さんは扉を勢いよく開けた犯人である少女に手招きをする。
「んん?何何??見たことない顔がいるわねぇ?」
恐らく、彼女がもう1人の幹部なのだろう。
品定めするようなじろりとした視線に体が固くなる。
「は、はじめまして!ま、松野翔です!」
「ふーん?あたしは宮川小鳥よ。ヨロシク。」
「よ、よろしくお願いします!」
ガバリと勢いよく頭を下げれば「あははー!何この子ちょーいい子じゃん!」と下げた頭を、犬を構うかのようにわしゃわしゃと撫で回された。
「彼女は川の地位にいる幹部よ。歳は最年少の15歳。でもチャトランガには欠かせない存在よ。」
「特技は尾行や現地調査、会話から情報引き出したり、情報を盗んだりってね!あたし凄いやつなんだから!」
ふふん、と胸を張る川さん。見た目はどこにでも居る天真爛漫な女子中学生のようだが、きっと彼女の技術は大人に引けを取らない程の巧妙なものなのだろう。
(そんな人達の横に僕は並べるのかな……)
里田先輩は僕が幹部になれる才能があると言った。シヴァ様が僕に才能を見出しているんだから、と。でも僕自身、その才能が一体何なのかわからない。
シヴァ様の視界に入れて頂けただけでも奇跡みたいなものなのに……
「てか、今日も太鼓はいないわけぇ?あたし、あいつと全然会わないんだけど。」
ふいに川さんが、周りを見渡しながら、ため息混じりにそう言葉を零す。
「彼は立場上仕方ないわよ。」
と、三日月さんが苦笑を漏らしつつ答えた。
きっと、太鼓さんという方がさっき言っていた最後の一人の幹部なのだろう。
「でもあいつ、グループチャット1番うるさいのよね。」
「……まあ、彼が1番シヴァ様に会えてないから……」
「シヴァ様の写真眺めては会いたいって血涙流してそうだよな。」
「あ~、想像できるわ。」
そんな皆さんのやり取りに、勝手に寡黙な秘密主義のイメージが出来つつあった太鼓さんに、ちょっと親近感が湧いた。
わかる。シヴァ様のお近くにいて全く会えないなんて新手の地獄。
「あれ?思えばミカチャン紹介するの2人って言ってたよね?」
「あ、そうそう。お待たせー。もう入ってきていいよー。」
川さんの言葉に、三日月さんが、隣部屋の扉に向かって声をかける。
ガチャリと、ゆっくり開いた扉の向こう側にいたのは、僕達と同じくらいの年代の男の子だった。
「……ちょっと、なんで野々本春がここにいんのよ。」
しかし、その少年を見た瞬間、川さんの冷めきった声が投げつけた。
どうやら川さんは彼を知っているらしく、その表情は警戒に満ちていた。逆に野々本春、と呼ばれた少年はどこか困ったように眉尻を下げた。
「シヴァ様が彼を松野君の直属の部下に選んだのよ。」
「はぁーっ!?」
「えっ!?」
川さんの驚きの声と僕の声が重なる。
今、僕の名前の後にとんでもない台詞が続いた気がする。
え、直属の部下って何??
「シヴァ様が!?こんなヒヨっ子に!?てか野々本春ってこっち探ってきてたあの青龍のリーダーじゃないっ!」
「……それは下が勝手にやったことだ。俺の指示じゃない。」
「あっそ。でも信用出来ないわ。」
野々本君の言葉をスッパリ切り捨てた川さん。それに蛇さんが「落ち着け。」と間に入る。
「シヴァ様が彼と会って直々にそうお決めになったんだ。こいつは信用出来なくてもシヴァ様を信じろ。」
「べ、別にシヴァ様を疑ってなんてないわよ!でも、こいつがシヴァ様に何かしでかしたらそれこそ私達は神を失うようなものなのよ!?」
蛇さんの言葉に、川さんが更に言い募る。けれどもそれは組織を、そしてシヴァ様を思ってのことだ。
しかし、そんな川さんの言葉に里田先輩は「え、逆にお前シヴァ様に手出せんの?」と野々本君に、声を投げた。
「シヴァ様に何かする位なら俺はここで喉を掻っ切って死んでやる。」
里田先輩の問いかけに真顔のまま、そう即答した野々本君に、
「あら、本当にお仲間ぽいわね。」
(えええぇ!!?)
川さんがあっさりそれを認めてしまった。
怒涛の展開に頭が着いてこない。
(え、なんか川さんの言い方的に敵だった人なんだよね……?こんなあっさり認められるものなの……?)
確かにシヴァ様はこんな僕ですら受け入れてしまうのだから、その懐の広さは今に始まったことでは無いのだろう。
けれども、敵だった人間ですらあっさり仲間に入れてしまうそれはいっそ傲慢とも思える。
(なんだか、本当に神様みたいな御人だなぁ……)
シヴァ様がより遠い人に思えた。
「つーわけで、野々本。こいつがシヴァ様の言ってた『最近チェスを覚え始めた子』な。松野翔。シヴァ様が次の幹部として育てているやつだ。」
まだまだ全然ヒヨっ子だけどな!と豪快に笑う里田先輩の紹介に苦笑いを浮かべる。
やっぱり、僕に幹部なんて無理だと思ってしまう。
「んで、翔、こいつは野々本春!お前と同い年で、林懐高校の不良グループ青龍のリーダーだ!」
「えっ!?」
まさかの不良グループのリーダー。
そんなすごい人が僕の部下だなんて、それこそ何かの間違いなんじゃ、と冷や汗がダラダラ流れる。
僕がパシリになるならまだわかるのに。
「野々本春、です。」
「えっ、と、松野翔です。その、宜しくお願いします。」
なんてお互いぎこちなく頭を下げれば、三日月さんの「大丈夫そうね。」なんて声が聞こえた。
何も大丈夫じゃないです。
「さて、必要な顔合わせも済んだし、重要なのはこれからよ。」
と、パンッと掌を鳴らした三日月さん。
「太鼓から情報が流れてきたわ。」
そう前置きした、三日月さん。そして、コレ見て、とパソコンの画面をこちらに向けた。
「今回の幹部会議の議題。蛇、貴方今殺人教唆の容疑者として追われてるわよ。」
そこには、刑事ドラマで見るような相関図に『サーンプ』という人物がしっかりとホワイトボードに書かれている写真だった。
「ああ、蛇がお前も出ろって。」
里田先輩の言葉に僕は目を瞬かせる。
幹部、というのは間違いなく僕が加入したチャトランガの幹部だろう。
何故それに僕が呼ばれるのかてんで見当がつかない。
「ああ、翔のことはさ、シヴァ様が幹部にするつもりでいるから今から参加しといた方がいいだろって。」
ケロリととんでもないことを言う里田先輩に「えぇっ!?」と思わず声を上げてしまった。
「ぼ、ぼ、僕が幹部!?な、なんでですか!?」
「そりゃシヴァ様が選んだからだろ。」
「む、む、無理ですよ!?ぼ、僕入ったばかりの新人ですよ!?」
「いーや!できる!自信持てって!」
慌てふためく僕の背中をバシバシ叩く先輩。「適当言わないで下さい!」と泣きの混じった声で抗議すれば、「適当じゃねーよ。」と、先輩は目を細めて笑った。
「あのシヴァ様が、お前を幹部に育てようとしてんだぞ?なれねぇわけがねぇ!」
「た、確かにシヴァ様は素晴らしいお方ですが……!」
問題は僕自身の技量の話だ。
三日月さんのようなハッカーとしての技術もなければ、三叉槍である里田先輩みたいに喧嘩に強い訳でもない。
僕は本当に弱い、平凡な人間なんだ。
「翔、お前は幹部になる。そんだけの才能をシヴァ様はお前に見出したんだ。」
自分は信じられなくても、シヴァ様は信じてみろよ、と再びバシバシ背中を叩く先輩。
でもやっぱり、僕にはシヴァ様にそんな目を掛けて頂けるような才能があるようには思えなくて、下を向いてしまった。
その日の夜。
親に見つからないようにこっそり抜け出して、チャトランガのアジトへと向かった。
「おっ。来たな!」
扉を開ければ、真っ先に里田先輩が大きく手を振って出迎えてくれた。
よく見れば、幹部の皆さんはもう集まっており、僕が1番最後だったようだ。
「お待たせしてしまいすみませんっ……!」
新参者の僕が幹部を待たせるなんて!と慌てて深く頭を下げれば、
「問題ないわよ。ちょっと早く集まって皆でチェスしてただけだから。」
と、三日月さんが手に持っていたナイトを持ち上げて見せる。
すでに勝敗は着いたようで、駒を片付けている最中のようだ。
「ちなみに俺が全敗したぞ!」
「誇るな。」
「今日は蛇の一人勝ちだったわね。三叉槍には勝てたんだけど。」
と、どこか和気あいあいとした雰囲気に肩の力が抜ける。
幹部会議と聞いてもっと堅苦しく、重い空気を予想していた僕としてはとても有難い。
「あ、今日はまだ松野君が会ったことない幹部も紹介したくて呼んだの。」
「え、幹部って今いる皆さんで全員じゃないんですか?」
てっきりこのメンバーで全員だと思っていた僕は、思わずそんな声を上げてしまう。
シヴァ様に連れられて初めてアジトに訪れた次の日。組織の説明のためにわざわざ訪ねて下さった蛇さんも、その時は他の2人の名前しか出さなかったので、すっかりそう思い込んでいた。だが、よく考えればこんな大規模な組織なのだ。
あと何人か幹部がいても不思議はない。
「ええ、後幹部は2人いるの。1人はちょっと立場が特殊でここには来ないんだけどもう1人は今後も顔合わせるだろうから紹介しておきたくて。」
と、三日月さんが説明してくれた時、扉が勢いよく開き「あたしが来たぞー!!」と元気な声が響いた。
突然のその声に思わず肩が跳ねる。
「噂をすれば、ね。」
そうクスリと笑った三日月さんは扉を勢いよく開けた犯人である少女に手招きをする。
「んん?何何??見たことない顔がいるわねぇ?」
恐らく、彼女がもう1人の幹部なのだろう。
品定めするようなじろりとした視線に体が固くなる。
「は、はじめまして!ま、松野翔です!」
「ふーん?あたしは宮川小鳥よ。ヨロシク。」
「よ、よろしくお願いします!」
ガバリと勢いよく頭を下げれば「あははー!何この子ちょーいい子じゃん!」と下げた頭を、犬を構うかのようにわしゃわしゃと撫で回された。
「彼女は川の地位にいる幹部よ。歳は最年少の15歳。でもチャトランガには欠かせない存在よ。」
「特技は尾行や現地調査、会話から情報引き出したり、情報を盗んだりってね!あたし凄いやつなんだから!」
ふふん、と胸を張る川さん。見た目はどこにでも居る天真爛漫な女子中学生のようだが、きっと彼女の技術は大人に引けを取らない程の巧妙なものなのだろう。
(そんな人達の横に僕は並べるのかな……)
里田先輩は僕が幹部になれる才能があると言った。シヴァ様が僕に才能を見出しているんだから、と。でも僕自身、その才能が一体何なのかわからない。
シヴァ様の視界に入れて頂けただけでも奇跡みたいなものなのに……
「てか、今日も太鼓はいないわけぇ?あたし、あいつと全然会わないんだけど。」
ふいに川さんが、周りを見渡しながら、ため息混じりにそう言葉を零す。
「彼は立場上仕方ないわよ。」
と、三日月さんが苦笑を漏らしつつ答えた。
きっと、太鼓さんという方がさっき言っていた最後の一人の幹部なのだろう。
「でもあいつ、グループチャット1番うるさいのよね。」
「……まあ、彼が1番シヴァ様に会えてないから……」
「シヴァ様の写真眺めては会いたいって血涙流してそうだよな。」
「あ~、想像できるわ。」
そんな皆さんのやり取りに、勝手に寡黙な秘密主義のイメージが出来つつあった太鼓さんに、ちょっと親近感が湧いた。
わかる。シヴァ様のお近くにいて全く会えないなんて新手の地獄。
「あれ?思えばミカチャン紹介するの2人って言ってたよね?」
「あ、そうそう。お待たせー。もう入ってきていいよー。」
川さんの言葉に、三日月さんが、隣部屋の扉に向かって声をかける。
ガチャリと、ゆっくり開いた扉の向こう側にいたのは、僕達と同じくらいの年代の男の子だった。
「……ちょっと、なんで野々本春がここにいんのよ。」
しかし、その少年を見た瞬間、川さんの冷めきった声が投げつけた。
どうやら川さんは彼を知っているらしく、その表情は警戒に満ちていた。逆に野々本春、と呼ばれた少年はどこか困ったように眉尻を下げた。
「シヴァ様が彼を松野君の直属の部下に選んだのよ。」
「はぁーっ!?」
「えっ!?」
川さんの驚きの声と僕の声が重なる。
今、僕の名前の後にとんでもない台詞が続いた気がする。
え、直属の部下って何??
「シヴァ様が!?こんなヒヨっ子に!?てか野々本春ってこっち探ってきてたあの青龍のリーダーじゃないっ!」
「……それは下が勝手にやったことだ。俺の指示じゃない。」
「あっそ。でも信用出来ないわ。」
野々本君の言葉をスッパリ切り捨てた川さん。それに蛇さんが「落ち着け。」と間に入る。
「シヴァ様が彼と会って直々にそうお決めになったんだ。こいつは信用出来なくてもシヴァ様を信じろ。」
「べ、別にシヴァ様を疑ってなんてないわよ!でも、こいつがシヴァ様に何かしでかしたらそれこそ私達は神を失うようなものなのよ!?」
蛇さんの言葉に、川さんが更に言い募る。けれどもそれは組織を、そしてシヴァ様を思ってのことだ。
しかし、そんな川さんの言葉に里田先輩は「え、逆にお前シヴァ様に手出せんの?」と野々本君に、声を投げた。
「シヴァ様に何かする位なら俺はここで喉を掻っ切って死んでやる。」
里田先輩の問いかけに真顔のまま、そう即答した野々本君に、
「あら、本当にお仲間ぽいわね。」
(えええぇ!!?)
川さんがあっさりそれを認めてしまった。
怒涛の展開に頭が着いてこない。
(え、なんか川さんの言い方的に敵だった人なんだよね……?こんなあっさり認められるものなの……?)
確かにシヴァ様はこんな僕ですら受け入れてしまうのだから、その懐の広さは今に始まったことでは無いのだろう。
けれども、敵だった人間ですらあっさり仲間に入れてしまうそれはいっそ傲慢とも思える。
(なんだか、本当に神様みたいな御人だなぁ……)
シヴァ様がより遠い人に思えた。
「つーわけで、野々本。こいつがシヴァ様の言ってた『最近チェスを覚え始めた子』な。松野翔。シヴァ様が次の幹部として育てているやつだ。」
まだまだ全然ヒヨっ子だけどな!と豪快に笑う里田先輩の紹介に苦笑いを浮かべる。
やっぱり、僕に幹部なんて無理だと思ってしまう。
「んで、翔、こいつは野々本春!お前と同い年で、林懐高校の不良グループ青龍のリーダーだ!」
「えっ!?」
まさかの不良グループのリーダー。
そんなすごい人が僕の部下だなんて、それこそ何かの間違いなんじゃ、と冷や汗がダラダラ流れる。
僕がパシリになるならまだわかるのに。
「野々本春、です。」
「えっ、と、松野翔です。その、宜しくお願いします。」
なんてお互いぎこちなく頭を下げれば、三日月さんの「大丈夫そうね。」なんて声が聞こえた。
何も大丈夫じゃないです。
「さて、必要な顔合わせも済んだし、重要なのはこれからよ。」
と、パンッと掌を鳴らした三日月さん。
「太鼓から情報が流れてきたわ。」
そう前置きした、三日月さん。そして、コレ見て、とパソコンの画面をこちらに向けた。
「今回の幹部会議の議題。蛇、貴方今殺人教唆の容疑者として追われてるわよ。」
そこには、刑事ドラマで見るような相関図に『サーンプ』という人物がしっかりとホワイトボードに書かれている写真だった。