『好きなんだ――』

 つかまれた手首に、指先の震えが伝わってくる。
 普段はあまり動じることのない彼の瞳に、めずらしく感情が見え隠れする。

 軽く伏せた睫毛が、薄くこぼれる吐息が、揺れる。
 全身がビリビリと痺れるような心地がして、心音がドクドクと速くなる。

 もう、気付いてしまった。この胸の震えが何なのか。