「あの、アヤトさん……という売り子の方は? 僕と同じくらいの歳の」
店頭には中年の女性が。知らない人だ。

「ん? あー、アヤトさんね」
と店に飾ってあった写真を下ろしてきて見せてくれた。やけに色褪せたもので、そこには若いアヤトさんが映っていた。

「彼はここで働いていたのよ。けど、何十年か前に亡くなったの」
「えええええ?」

アヤトさんが? なんで、なんでアヤトさん?!

「ここらではすごく綺麗で美しい男の子だったのに、こないだのコンテストの前身であるコンテストで舞台から落ちて死んでしまったの」
「……」

あ、だからコンテストがステージでは行われないのか!!!

「彼の幽霊はここらで化けて出るらしいのよ。あまりにも美しいから、彼の幽霊を見た人は虜になって、死んでしまうこともあるんだって」
その言葉を聞いて鳥肌が立った。

死?! なんで死んでしまうの。

「彼も志半ばで死んでしまったから、生き生きとして生きていくのが羨ましいんじゃないかしら」

その話を聞いた瞬間、心臓がドクンと跳ねた。目の前が真っ暗になり、混乱が押し寄せる。

「でも、アヤトさんは普通にここで働いていたよ。最近も僕にアドバイスをくれたし……」

「それが幽霊だからこそ、姿を見せているのよ。彼の未練がここに残っているのかもしれないね」

思考が追いつかない。アヤトさんが亡くなっているのに、なぜ僕の前に現れたのか。彼の存在を知っているのはただの偶然なのか、それとも何かの運命だったのか。

「あなたは特別だったのかもしれないわ。もしかしたら、彼を惹きつける何かがあったのかもね」

そんな、僕が? 何をどう彼を変えたのだろう。

「アヤトさんは、僕を助けてくれたんだ……それなのに、彼はもういないなんて」

「彼の思いは、きっとあなたに託されているのよ。彼が生きた証を、あなたがこれからも繋いでいくのじゃないかしら」

その言葉が耳に残った。アヤトさんの思いを継ぐためには、僕はこれからどうすればいいのか。

「アヤトさん、あなたの分まで、精一杯生きていくよ」

その日以来、アヤトさんのことを思い続けながら、僕は彼の存在を心に刻んで生活していく。写真部の仲間たちとともに活動し、日々を充実させることに全力を注ぐ。

時々、アヤトさんの声が耳元で囁くように感じる。彼がどこかで見守ってくれている気がして、勇気が湧いてくる。

「頑張れ、トオル。君ならできるよ」

それはまるで彼の微笑みが、僕の背中を押してくれるかのようだった。

そして、アヤトさんのことを思い出すたびに、僕の心に暖かい光が灯る。これからも、彼の思いを胸に生きていく。

再び彼に会える日を心待ちにしながら、僕は彼の虜になっていることを感じていた。



終わり